【自由な結婚】vol.6「山梨と東京の2拠点週末婚。会う瞬間はいつも最高にうれしい」

結婚は自由だし、結婚をしない生き方もある。法律婚にとらわれない、いろいろな結婚のスタイルがあっていい――。
本連載【自由な結婚】では、そんなメッセージを伝えるコンテンツをお届けしていきます。vol.6では山梨県都留市と東京都品川区での「2拠点週末婚」をしている奈良美緒さん、パートナーの大輔さんにお話を伺いました。


再会からの急展開は、共通項があったから

ふたりの出会いは8年ほど前。美緒さんが大学生、大輔さんが社会人2年目のときでした。同じコーチングスクールに通っていたふたりは、しばらくして生徒から運営側に回ることに。運営スタッフが集まる飲み会やFacebook上など、ゆるやかな交流をしていました。
久々に再会したのは2016年8月。ゲストハウス開業に向けて準備する美緒さんが、大輔さんが宿泊や体験プランなどのレンタルサービスを提供するAirbnbでホストをしていると知って、話を聞かせてもらうために連絡したのだとか。大輔さんに会いにいく前、Facebookで彼の近況を見ていると、「理想のパートナー検定」なる投稿をしているのを発見。
「旅人志向のあるお嬢様」「ユーモアがあっていたずら好き」「共有できる趣味がいくつかある」など、大輔さんが理想のパートナーに希望する10の項目が書かれ、それに「イエス」か「△」か「ノー」か回答して点数化する、というユニークなオリジナル検定。美緒さんは高得点を獲得したといいます。

「合う部分が多いから、結婚を前提に付き合いたかった」

「いざ会うと、私が彼にいろいろ聞く予定だったのに、近況をたくさん質問されました。今、都留市に住んでいると話すと、遊びに行っていいかと聞かれ、社交辞令かなと思いますよね。でも、彼はその場で手帳を開いて『今週末に行ってもいい?』って。本当に来るんだ! とびっくりしました(笑)」(美緒さん)

その週末、畑でキャンプを楽しみ、都留を案内するなかで、急展開がありました。お気に入りのカフェでまったり過ごしているときに、大輔さんから「付き合いたい」と告白されたと言います。

「ふたりとも自立している、というのを前提に、パートナーとは理想や趣味、嗜好などが、なるべく一致しているほうがいいと思っています。体験や感情をできるだけ共有したいので。
その観点でいうと、美緒ちゃんとは昔から知り合いだったこともあり、共通するキーワードや知人も多く、コミュニケーションもとりやすかった。これだけ合う相手なら結婚を前提に付き合いたいと思ったんです」(大輔さん)

お互いに絶対的な味方でいること――私たちの結婚の定義

当時、片思いをしている相手がいた美緒さんは、そのことを大輔さんへ正直に伝えます。大輔さんが「自分自身と真剣に向き合っている人」だと感じていたからこそ、過去の恋愛や失敗談、本音も開示。大輔さんはまっすぐな姿勢の美緒さんに、より惹かれるようになり、その2週間後に結婚を前提とした交際がスタートしたのです。
9月に正式なプロポーズ、2017年1月に入籍と、とんとん拍子で結婚へと進んでいったふたり。交際時と変わらず、美緒さんは都留市、大輔さんは品川区で暮らし、週末を中心に原則1週間に一度会う2拠点週末婚がスタートしました。
「結婚後、どちらかの拠点で暮らそう」とはならなかったのですか? と尋ねると、ふたりにとっての結婚の定義は「同居する」ことではないんです、と美緒さん。

「たとえ世界中の人を敵に回したとしても、パートナーだけは自分の味方でいてくれる。そういう存在の人がいること、そして自分もパートナーにとって、そんな存在であること。それが私たちなりの結婚の定義なんです」(美緒さん)

たとえ、普段は物理的距離があっても、心の底から信頼できる人がいる――。結婚後に変わったことはほぼないという美緒さんですが、そういった安心感や周囲からの「結婚しないの?」という圧はなくなったと話します。

会っている時間は短いけど、濃い

でも、週末婚って寂しいなと思うときはありませんか? 実際どうですか? そう聞くと、「ひとりの時間も大切にしたい人にとっては、とても心地よい環境です」と大輔さん。

「仕事から疲れて帰ってきたとき、美緒さんが家にいると癒やされると思います。でも、完全にひとりきりにならないと、回復しない部分もあるんですよね。一緒に暮らしていると、やっぱり相手に気を使いますし、すぐにひとりの時間を取るわけにはいきません。別居していると、好きなときにひとりになれる利点があります」(大輔さん)

さらに、「(パートナーには)一生恋していたい」と考える大輔さんだからこそ、美緒さんと週末にだけ会う関係は、現時点ではベストだと話します。

「今でも美緒さんと1週間ぶりに会う瞬間は、『久しぶりに会えた!』という思いがあって、すごくうれしいんです。離れている時間のほうが長いので、一緒に過ごす時間は楽しみたい。何か不機嫌になることがあっても、負の感情はぶつけないようにしています」(大輔さん)

ふたりで人生をつくっていく

美緒さんも同様に感じているようですが、互いに生きてきた環境が違う分、どうしてもイラッとすることもあります。これはカップルでも、同居する夫婦でも同じでしょう。
たとえば美緒さんから大輔さんへは「紙くずなどのゴミを床に置いていることがある」「起き抜けに『疲れた』と言うことがある」など。
大輔さんから美緒さんへは「時間にちょっぴりルーズ」「トイレの電気を消し忘れることがある」など。そんな「プチ・イラッ」はあるものの、毎日抱く感情ではないからこそ、少し怒ってみせるものの、笑いやネタに昇華できるのだそう。
以前、美緒さんがこんなツイートを残していました。

「結婚って、「人生」と名のつく作品を相手と一緒につくり育て上げていくことそのものなんだろうな(中略)」

2拠点週末婚という新たな関係性の形を、実体験を通して模索している美緒さんと大輔さん。ふたりは自らの事例を元に、こういう選択肢もあるよと世の中に伝えています。なかなか表に出てこない貴重な声。
こんな発信者が増えていくと、一般的に「結婚」と呼ばれる関係性もバリエーションが豊富になり、結婚のあり方も変わってくるのかもしれないと思わされた取材でした。

▽ 奈良美緒さん

山梨県都留市地域おこし協力隊。新卒で人材教育コンサルティング会社に勤めた後Uターン。地元都留市で「古民家ゲストハウスあわ」を運営する傍ら、市内の民泊開業支援を展開中。2017年元旦に入籍。新しい夫婦の形・パートナーシップを模索するワークショップやカフェイベントを不定期に開催中。

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▽ Twitter: @naramio0512

2018.10.03

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記事を書いたのはこの人

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Written by 池田 園子(いけだ そのこ)

岡山県出身。中央大学法学部卒業後、楽天、リアルワールドを経てフリー編集者/ライターに。関心のあるテーマは女性の生き方や働き方、性、日本の家族制度など。結婚・離婚を一度経験。11月14日に『はたらく人の結婚しない生き方』を発売。 写真撮影ご協力:青山エリュシオンハウス 撮影者:福谷 真理子