わたしらしい起業のかたち Vol.6 正井京都さん~大好きなことを一生ものの仕事に~

編集者/ライターの池田園子が、週末起業家や個人事業主、経営者など、さまざまなスタイルで起業している女性にインタビューする連載です。

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花屋に最後に立ち寄ったのがいつだったか、皆さんは覚えていますか? まわりを見渡すと到るところに植えられていたり、活けられていたりする花。でも、いざ自分で飾るとなると「ハードルが高い」と感じてしまう方は少なくないのでは。
「帰り道に花を買うとやはり“荷物”になりますから、本当に花が好きな人でないと、なかなか機会はないかもしれませんね」。そう語るのは、インターネット上の花屋「& Flower Romantica(アンドフラワーロマンティカ)」を運営する正井京都(まさいみやこ)さん。
もっと日常的に花に親しむ人が増えたら――そんな願いを込めて、& Flower Romanticaでは花の定期便「FLOWER LOVERS BOX」を提供しています。フローリストが厳選した季節の花々やグリーンが手紙と一緒に毎月届くしくみ。IT企業勤務を経て、2014年に独立した正井さんの起業ストーリーを覗いてみましょう。

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いつも花が日常にあった

Q. 花屋を起ちあげようと思った、最初のきっかけはなんでしたか?

A. 昔から花が大好きだったんです。会社の帰り道に買うことも多く、家で活けていました。毎日過ごす空間に花があるだけで癒やされるなぁと感じていましたし、私にとって花は暮らしの一部であり、なくてはならないものになっていたと思います。「一度きちんと習ってみたい」と思い立ち、2011年から月1回、個人の先生のもとに通うようになりました。

Q. その後、本格的にスクールに通われるようになったんですよね

A. 先生のところへ月1回通ううちに、「さらに深く学びたい」という気持ちが生まれたんです。そこで2012年からスクール「FOUR SEASONS FLOWER」に通いはじめ、シャンペトルブーケなどのフレンチスタイルについて本格的に学びました。

その後は講師資格も取得したくなって、マミフラワーデザインスクール「フラワーデザインコース」へ通いました。そこでは、ビギニング(初級)36単位、アドヴァンス(中級)36単位、プログレス(上級)36単位に加え、専攻科の授業を受けるんです。1単位が約1時間半ですね。

会社員をしながら通っていたので、土日に3単位ずつ、計6単位くらいのペースで学んでいました。プログレス終了後の専攻科は、3日間の集中講義形式で、植物学やテーブルコーディネート、ディスプレイなど、座学が中心。半年に一度しか開講されておらず、それを逃すと講師資格を取得できるのも半年後になるため、なんとか間に合わせました。

会社員をしながら講師資格を取得

Q. 仕事と花の勉強という二足のわらじを履いていた時期がありました。時間をどうやりくりしていましたか?

A. じつは、会社を辞める前の半年間は、週2日しか出社していませんでした。上司に退職したい旨と、新規事業の起ちあげをやりきってから辞めたい旨を伝えたところ、たくさん残っている有休を消化しながら、週2日勤めたらいいんじゃないか、と提案してくれたんです。

本当にありがたいことだと思い、そうさせてもらいました。おかげで、会社員としての最後の仕事にも向き合い、花のスクールにも本格的に通えて、講師資格を無事に取得できたんです。前職と上司、メンバーにはすごく感謝していますね。

雑誌を購読するように花を購読してもらいたい

Q. その後、2014年に起業。最初にスタートした事業、花の定期便「FLOWER LOVERS BOX」は素敵なサービスですよね。自宅にいながらにして花が届くと、買いに行く手間も省けますし、なにより月1の楽しみになりそうです

A. ありがとうございます。起業したのも、これまで培ってきたITの知見を活かして、花の定期便をやりたいと思ったのが主な理由なんです。大手の花屋さんでも定期便を提供しているんですが、まだ世の中に浸透している印象はなく。

だから後発の私たちでも、新しいスタイルの定期便を提供できるチャンスがあるな、と思いました。「雑誌を購読するように花を購読してほしい」「花のある日常があたりまえになってほしい」という意図があります。工夫次第で定期便がスケールするチャンスはおおいにあると思いますね。

今は定期便をやりながら、個人や法人の仕事も受けています。ウエディングでのブーケやヘアドレスの製作や、オフィス移転時のお祝い花やオフィスでの装花など、紹介の紹介という形で、少しずつ拡大しています。

ママに向けた出張・フラワーアレンジメントレッスンも

Q. フラワーアレンジメントの教室も開講しているんですよね

A. 月2~3回教えています。最初は友人に教えることからはじまり、友人が友人を誘ってくれるようになりました。私と同世代の30代前半の友人の間では出産ラッシュで、小さい子どもたちがいるとやはり、レッスンに出かけにくいようです。もし、連れて行くとなると「途中で泣いちゃったら、まわりに迷惑をかけそうだし……」と気が気じゃない。

そんなママたちに向けて出張レッスンをする機会も増えました。友人の自宅にママ友たちが集まり、リラックスした雰囲気のなか、花とのふれあいを楽しんでもらっています。

それとは別に、前職の会社でも定期的にレッスンを行う機会をいただいているんです。退職した月から3か月に1回の頻度で開催しているので、もう10回くらいになるでしょうか。社員向けに福利厚生の一環として行っているため、社員は1,000円/回で参加できるんです。残りの費用は会社が負担してくれて。いい会社だなぁ、と辞めてからあらためて思いましたね(笑)。

毎日大好きな花や植物にふれられる幸せな日々

Q. 事業を起ちあげてから、苦労したことはありましたか?

A. そんなにないですね。大好きな花や植物に毎日ふれられて元気をもらえたり、そのおかげで心地よく暮らせたり、香りに癒やされたり、お客さまからの声や反応がダイレクトに届いたり……と、幸せなことばかりなんです。

ただひとつだけあげるならば、初期のころ配送事故が起きてしまい、対策を考えるのに苦心したことでしょうか。依頼している運送会社では、複数の集荷センターを経由して、最終的にお客さまのもとへ届きます。

その過程であまりていねいに扱われないと、花が潰れてぺしゃんとなった状態で届いてしまうことも。そうなると当然クレームがきますから、謝罪に出向いたこともあります。その後は梱包を工夫したり、運送会社と話し合ったりして、少しずつ事故を減らしていきました。

これからも定期便を続ける限り、運送会社を使わないといけないため、安全に配送するしくみを整えるのは大事なことですからね。

ライフワークを楽しむ同僚を心の底からカッコいいと思えた

Q. 最後に、起業したいけれど、不安を持っている方へメッセージをお願いします

A. 会社員だったころ、私も「いつか(花屋を)やりたい」と思っていました。そんなとき、長く所属していた部署が、別の部署へまるごと異動することになったんです。そこで出会ったのは、会社での仕事をライフワークとして楽しみながら向き合う人たちでした。

彼らが携わっていたのは、サーファー向けのWebサービスでした。それをサーフィンを愛してやまない人たちが運営しているんです。「サーフィン業界を変えたい」という熱い思いで集まった人たちばかりだと知って、ハッとしましたね。

大好きなことを突き詰めているから、ある意味でライスワークともいえる仕事が、ごく自然にライフワークと化していたわけです。彼らと一緒に働いていて、本当にカッコいいなと思いましたし、私も大好きなことを一生ものの仕事としてやっていこう、と背中を押してもらえたと感じています。

これを長くやっていきたい、ずっとこれと向き合いたい、という強い思いがあるならば、一歩踏み出すのもひとつの方法だと思います。

▽ 正井京都(まさい みやこ)さん

& Flower Romantica代表。フラワーデザイナー。IT企業に勤めるかたわら、都内フラワーアレンジメント教室各所に通いはじめ、2012年よりFOUR SEASONS FLOWERにてシャンペトルブーケなどフレンチスタイルについて本格的に学ぶ。マミフラワーデザインスクールにて講師資格を取得。自身のIT知識や経験を活かし、まだインターネットテクノロジーの恩恵を受けきれていない花業界に貢献すべく、2014年に独立。
▽ Instagram(@miyako.and_flower_romantica

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2016.10.19

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Written by 池田 園子(いけだ そのこ)

岡山県出身。中央大学法学部卒業後、楽天、リアルワールドを経てフリー編集者/ライターに。関心のあるテーマは女性の生き方や働き方、性、日本の家族制度など。結婚・離婚を一度経験。11月14日に『はたらく人の結婚しない生き方』を発売。 写真撮影ご協力:青山エリュシオンハウス 撮影者:福谷 真理子