わたしらしい起業のかたち Vol.4 ソロライフ二スト杤金真奈美さん

編集者/ライターの池田園子が、週末起業家や個人事業主、経営者など、さまざまなスタイルで起業している女性にインタビューする連載です。

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短大卒業後、いくつかの企業で働いてきた杤金真奈美さん。30代後半をむかえたとき「このまま定年まで20年近く、同じ仕事を続けていていいの?」と戸惑いをおぼえ、彼女の人生は大きく変わりはじめます。独立を決意し、会社をやめたのは41歳のとき。「年齢を言い訳にせず、勇気と自信を持てば行動できる」と力強く語ります。
そんな杤金さんの起業ストーリーをのぞいてみましょう。

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60歳近くまでここで同じ仕事を続けるの……? とモヤモヤした

Q. 起業に至ったきっかけはなんでしたか?

A. 30代後半にバセドウ病を発症したことが、起業を考えはじめた最初のきっかけだったと思います。20代のときに突発性難聴になったこともあります。原因はおそらくストレスだろう、と診断されました。極力ストレスを感じないよう過ごしているつもりでしたが、数年に一度体調を崩すことがあり、働き方を考えるようにはなっていましたね。
そんななか、会社で異動が言いわたされ、前にいた部署に戻ることになったんです。やり甲斐はありましたが、60歳近くまでここで同じ仕事を続けるのかな……と思うと、モヤモヤが消えなくなって。また、これまで複数の上司と反りが合わなかったことも、起業を決意したきっかけのひとつになりました。
誰かが上にいる状態が合わないのかもしれない、と仮説を立てたんです。誰も自分の上にいない状態=自分が社長になるしかない、と思いました。それから起業準備へ向けた行動を起こし、2014年6月頃から起業セミナーに通いはじめ、翌年1月に会社を辞めました。

時間は限られているから……やりたいことは、すぐはじめる

Q. 会社員ではなくなるとき、不安はありませんでしたか?

A. 確かに固定収入がなくなる不安はありましたが、退職金や貯金もある程度あったので、しばらくはそれで過ごしていけばいいかなと、心に余裕はあったと思います。
また、そのタイミングで、ひとり暮らしから実家暮らしに戻ったんです。ひとまず実家で暮らせば、衣食住に困ることはないですし、やりたいことをじっくり探せばいいかなと、考えていました。
それに、自分が心からやりたいとは思えない仕事を続けるとなると、残り20年ってとてつもなく長いと思うんです。一方で、自分が興味のあることをはじめるなら、20年ってけっこう短い。だから、すぐはじめるに越したことはない、という思いもありました。起業するぞ、と退路を断つと、それに向かって一直線に進んでいくしかないですしね。

モチベーションが高い人が集まる場に行くと、自分の気持ちもあがる

Q. 退職後の約1年は起業準備に充てられていますね。どういったことをされていましたか?

A. 独立した当時は、資格も趣味もなかったので、いろいろなところに顔を出し、人とのつながりを築きながら、やりたいことを探していました。そんなとき「長谷川朋美アカデミー ビューティーライフエキスパート講座」と運命の出会いを果たします。起業家の長谷川朋美さんが自ら指導してくださる講座で、同期の半数が起業家でした。
そこで3か月学んでいるうちに、自分の身を置く場所って、本当に大事だなと気づくんです。モチベーションが高い人が集まる場に行くと、自分の気持ちもあがりますし、逆にネガティブな人が多い場にいくとさがります。自分の人生を輝かせたい、と考えている人が多い場に積極的に出向くのはおすすめです。
起業したいなら、起業して成功して、幸せになりたい人、つまり同じ志を持つ人と一緒にいる時間を増やすのが大事です。そんなアカデミーで素晴らしい刺激を受けて、のんびりしている場合じゃない、とランチ会から事業をはじめることにしたんです。

主に3つの事業を展開

Q. ランチ会やそのほか提供中の事業について、詳しく教えてください

A. 「アクティブウーマンランチ会」は、恵比寿や銀座で開催するランチ会です。友人を増やしたい方、自分とは異なる価値観の人とつながりたい方など、人と人とをつなぐ交流会として主宰しています。2つめは「女子力UPラボ」。今年は講師を招いて2回ほどのセミナーを開催しました。
3つめは今年5月頃から開始した「コーチングセッション」で、私が得意とするコミュニケーションを活かした事業です。やりたいことがあっても、その一歩を踏み出せずにいる方向けに、勇気と自信を持ってもらい、背中を押すお手伝いをしています。

面白い人だな、と気にかけてもらうことが新規顧客の引き込みにつながる

Q. Facebookやブログを活用されて、ファンづくりをされていますが、それらのツールを使う上でどんなことを心がけていますか?

A. Facebookに関しては「チラシを配る場所」といった意識もあり、お会いしたことのない方ともつながっていて、日々情報をアップしています。あまり長文すぎると読んでいただけないので、さらっと読める程度の文章を書き込んでいます。
サングラスをかけた写真も多くアップしています。こちらは「面白い」と言ってくださる方もいれば、「サングラスをかけている方にコーチングされたくないなぁ(笑)」と苦笑される方もいます。でも、Facebookって、キレイな写真を載せる人のほうが多いじゃないですか。そのなかで、ちょっと面白い写真を載せたほうが、いい意味で目立つと思うんです。面白そうな人だな、と気にかけてもらい、興味を持ってブログを訪れてくれる方が増えたら、それは結果的にいいことだと思うんです。
ブログに関しては、1日2記事ほど、ネタがあれば3~4記事ほどアップしています。ときどきネタ探しに困ることもありますが、独立してからは毎日ブログを書くことが習慣になっているので、書かずにいるとモヤモヤしてしまうんです(笑)。

ノウハウはやりながら蓄積すればいいし、すべての経験は糧になる

Q. 起業してよかったこと、大変だったことはありますか?

A. 場所や時間にとらわれず、自由でいられることでしょうか。スケジュールも自分が好きなように決められますし、平日に休んで休日に働いてもいいわけです。
また、勤めていた頃は、家族の時間をあまり大事にしていませんでした。30代の10年はひとり暮らしをしていましたが、40歳で実家に戻り、起業して時間の融通が効くいま、家族とゆっくり過ごす時間の大切さを実感しています。
もちろんはじめての起業ですから、大変だと感じることもあります。ビジネスのノウハウがないので、イベントやセミナーを主宰するたびに、集客の難しさを感じています。とはいえ、ノウハウはやりながら蓄積していけばいいですし、すべての経験は糧になると思っています。
どこでなにをしていても不安はゼロにならないと思うんです。会社員であってもそれは同じ。それなら未経験でもやりたいことをやるほうがいい、と私は思います。準備は大変でもお客さまが喜んでくだされば、苦労なんて吹きとんでしまいます。

一歩踏み出せば、人生は切り拓いていける

Q. 最後に、起業を考えている女性へ向けて、メッセージをお願いします

A. 私は41歳で会社を辞めて、いろいろな方から「勇気があるね」と言われてきました。でも、40歳を過ぎてもやりたいことは叶えられると思います。挑戦することを怖がらずに、勇気と自信を持って行動してください。自分の人生ですから、自分で一歩踏み出さないと人生は切り拓けません。
行動することで、見えてくるもの、気づくことはあります。うまくいかなくても経験になりますし、必ずなにかが変わります。行動と経験を積み重ねていくことで、人脈やアイデアも広がっていきます。同じ場所にとどまっているよりは、行動して別の場所を見てみるほうがいい。コーチングを通じて、そうすすめていきたいです。

▽ 杤金真奈美(トチガネ マナミ)さん

ソロライフ二スト/アクティブライフコーチ。Office Cocoa 代表。一般社団法人フェミニンリーダーズメンバー。東京生まれの東京育ち。短大卒業後、外資系金融会社やマスコミ業界など複数の職を経験し、2015年1月に会社員を卒業。同年12月に起業。犬が好きだけど飼えない人が犬に会えて、犬を飼っている人も犬を連れてこられるペットサロンを開業するのが夢。

ブログ:http://ameblo.jp/tochiganemanami
Facebook:https://www.facebook.com/manami.tochigane
Instagram:https://www.instagram.com/manami.tochigane/

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2016.08.12

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Written by 池田 園子(いけだ そのこ)

岡山県出身。中央大学法学部卒業後、楽天、リアルワールドを経てフリー編集者/ライターに。関心のあるテーマは女性の生き方や働き方、性、日本の家族制度など。結婚・離婚を一度経験。11月14日に『はたらく人の結婚しない生き方』を発売。 写真撮影ご協力:青山エリュシオンハウス 撮影者:福谷 真理子