【趣味と私と人生と】vol.11「着物って楽しい」を知ってほしい(ゆっけ)

心から「楽しい」「最高」と感じられる趣味があると、人生はよりおもしろく、彩り豊かなものになります。趣味という名の美しい沼に浸かっている人たちを紹介していく連載【趣味と私と人生と】。第11回目は「着物」を愛する、ゆっけさんに登場いただきます。


1枚で多様なスタイリングが叶う。だから着物は面白い

32歳の冬、着物に目覚めました。趣味の相撲観戦に行くとき、ふっと「着物を着よう」と思いたち、着るようになったのです。着物好きな同世代はいないかな、とツイッターで検索していたところ、出会ったのがゆっけさんでした。
ブログを見にいくと、正統派な着こなしだけでなく、着物の下にタートルネックやシャツを着るなど、自分が初めて見る着こなしが並びます。「着物といえばこう着こなすもの、みたいな思い込みが覆されました」と伝えると、ゆっけさんはこんな話をしてくれます。

「着物は洋服と比べて自由度が低く見えるかもしれませんが、着方や使う道具など“枠”がある程度決まっているからこそ、面白さがあるんです。たとえば、帯を固定する紐『帯締め』はベルト、帯の結び目を整える布『帯揚げ』はスカーフや端切れなどでも代用できます。
組み合わせるもの次第で、スタイリングの幅が広がりますし、同じ着物で帯を変えるだけでも印象は変わります。柄と柄を組み合わせても違和感はありません。洋服ではできないコーディネートを楽しめるのが着物の魅力だと思いますね」

着物は日本人を美しく見せる衣服

幼い頃からきれいなもの、華やかなものが好きだったゆっけさん。着物にも憧れがあり、大学進学後は「着物を日常的に着る機会」を作ろうと、着物を制服にしている料亭で、仲居のアルバイトを始めたのです。先輩に3回教えてもらい、家でも自主練をするうちに、自分で着付けができるようになりました。休日はリサイクル着物を扱う店を巡り、コツコツと買い集めるのが楽しみだったそう。

「学生時代に買って今でも着ている着物もあります。母から娘に振袖を受け継ぐように、着物は何十年も長持ちするもの。綿や麻などの太物と呼ばれる着物や紬(つむぎ)などの普段着も長く着られますよ。洋服のように流行の型が変わる、ということもないので、長く着られて楽しめます」

卒業後はベンチャー企業に就職するも、会社の都合で1年で退職。運命的な出会いがあり、社会人2年目で学生時代から憧れていた呉服屋で働くことになります。3年勤めた後、「20代などより若い世代に着物の魅力を伝えたい」との思いが高まって独立。京都に、きものシェアクローゼット&サロン「水端(みずはな)」をオープンしたのでした。

水端を訪れる若い世代、着物ビギナーに着物の楽しさをどう伝えていますかと尋ねると、「大前提として、着物は日本人を一番美しく、素敵に見せてくれる衣服です」とゆっけさん。確かに着物を着たときは、自分でもいつもより2〜3割良く見えるかも、と思うことがあります。

着物好きさんたちが、着物を着る機会を作りたい

「着物に対し、古典的で堅苦しいイメージを持つ方も少なくありません。でも、一人ひとりの感覚を活かして、自由な発想で、今の空気感やライフスタイルに合った着こなしは楽しめます。水端ではシャツやタートルネック、ブーツ、スニーカーなどとの洋装ミックスを提案し、着物を気軽に着てもらう体験も提供しています」

これから着物を始めたい人、着物にちょっと興味を持ち始めた人には、いきなり呉服屋に行くのではなく、リサイクル着物・アンティーク着物専門店や着物のフリーマーケットへ行き、失敗しても後悔しない金額の着物を探してみて、とゆっけさん。探してみると、1,000円台から買える(!)中古着物もけっこうあります。

「最低限、着物と半幅帯、腰紐さえあれば着付けはできます。もちろん着付けするときにあると便利な道具がすべて揃った『スターターセット』もあり、ネットでも買えます。でも、いきなり全部揃えると予算オーバーしちゃう……という方には、洋装ミックスもおすすめです。手持ちのアイテムと組み合わせるだけなので、挑戦しやすいですよ」

今後は着物を手に入れた人が、着物を着る機会をたくさん提供したいと話すゆっけさん。着物=普段着のひとつとして選ぶ人が増えれば、着物人口が広がり、着物ライフがさらに楽しくなるはず。
「着物好きな人の裾野を広げること」が今の目標です。そう語ってくれたゆっけさんの活動を、着物ビギナーのひとりとして応援しています。

▽ ゆっけさん

京都在住。きものシェアクローゼット&サロン「水端(みずはな)」オーナー。着物を楽しみたいすべての人に向けた場作りを行う。
着物をシェア(手持ちの着物を預けたり、他の人が預けているものを借りたり)でき、着物を着る際に必要となる、保管・メンテナンス・着付け・コーディネートなどをサポートする「きものシェアクローゼット」の利用は月額3,000円~。

▽ Twitter:@uk_kimonogirl
▽ きものシェアクローゼット&サロン:水端(みずはな)
▽ 前回の記事はコチラ

2019.04.03

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記事を書いたのはこの人

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Written by 池田 園子(いけだ そのこ)

岡山県出身。中央大学法学部卒業後、楽天、リアルワールドを経てフリー編集者/ライターに。関心のあるテーマは女性の生き方や働き方、性、日本の家族制度など。結婚・離婚を一度経験。11月14日に『はたらく人の結婚しない生き方』を発売。 写真撮影ご協力:青山エリュシオンハウス 撮影者:福谷 真理子