【趣味と私と人生と】vol.10 食事もお喋りもカラオケも人間観察も。スナックなら丸ごと楽しめる(五十嵐真由子)

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2019.02.14.Thu

心から「楽しい」「最高」と感じられる趣味があると、人生はよりおもしろく、彩り豊かなものになります。趣味という名の美しい沼に浸かっている人たちを紹介していく連載【趣味と私と人生と】。
第10回目は「スナック」を愛する、五十嵐真由子さんに登場いただきます。

「スナックに行けばいろんなアドバイスが聞けるよ」

きっかけは突然降ってくる。後に自分がハマるものとの出会いを振り返ると、そんな「偶然っぽさ」はありませんか。五十嵐さんとスナックとの邂逅もそうでした。
10年前、楽天で働いていた五十嵐さんは地方の宿を訪ね歩き、自分たちで立てた旅行企画への協力をお願いしていました。しかし、当時の都会IT企業から来た“よそ者”への反応はさんざん。
「あなたはこの地域の何を知ってるの?」「インターネットの会社に人情味あふれるこの土地の良さはわからない!」など、厳しい言葉をかけられることもしばしば。そんな状況への弱音をタクシー運転手に呟いたのが、結果的に大正解でした。

「スナックに行けばいいよ。地元の人ばかりだし、この街に精通した人々が集ってるからきっと助けてくれるし、いろんなアドバイスを聞けるよ」

運転手の提案をそのまま実行することに。翌日の往訪までに、できるだけのことはやろう。そんな気持ちがありました。

初のスナック体験で仕事もうまくいった

「『またよそ者扱いされるんじゃないか』『ぼったくられたらどうしよう』と不安いっぱいで重厚な扉を開けました。スナックというと、ドラマで見たタバコもくもくの光景だったり、女性客なんか受け入れてくれない場所、ましてや、女性ひとり客が気軽に入れる空間というイメージはなかったので」

スナックは、足を踏み入れてみないとわからない空間。そこで五十嵐さんはとても充実したひとときを過ごしました。

「ママが積極的に話しかけてくれて、旅館組合組長さんを呼んでくれたり、ガイドブックにない情報をくれたり、人の温かみにふれた機会でした。結局6時間くらいいましたね(笑)。『東京からはるばる来たのか』と皆から歓待していただいたおかげで、支払ったのはチャージ3,000円だけでした」

翌日、営業で訪れた宿でスナックに行ったことやその意図などを話すと、勇気を出してスナックへ行った挑戦を認めてくれた上に、スナックで出会った人々や会話が共通のキーワードになって、すぐに打ち解けることができたのだとか。
持ち込んだ企画にも協力してくれることになり、初めてのスナック体験は仕事の成果が出ただけでなく、スナックが「人の情報交差点」だと知る機会にもなりました。

何者でもない、飾らない自分でいられる場所

それから10年、じつに300店舗を超えるスナックの扉を開けてきた五十嵐さん。「スナックの魅力ってなんですか?」単刀直入すぎる私の問いに対し、「素顔になれて、日常の役割から開放される感覚を味わえるところでしょうか」という答えが返ってきました。

「スナックには上は70〜80代の常連さんもいます。一般社会では『大人』として扱われる女性も、娘のように可愛がってくれるんですよね。
外では責任を持った仕事をする者として、キリリとしていないといけないけど、スナックの中でなら甘えられる。名前や会社、上下関係、性別……いろいろなものもオフできます。会社の飲み会とは違って上司や後輩に気を遣うこともありません。
背伸びすることなく、ありのままの自分で過ごしながら、お酒を飲んで歌って楽しめる場なんです」

ネットでのコミュニケーションが盛んになっているとはいえ、直接会って自分の身に起きたことや近況を話したい……そんな欲求を満たしてくれるのが、ママの存在があるスナックなのだと五十嵐さんは話します。

今夜もまた、新しい扉を開けたい

スナックは全国に約6万店。どんなにがんばっても全店クリアするのは困難だけれど、できる限り新規開拓を楽しみたい。「行ってみたいスナックリストを作っていて、その日の移動状況に合わせて新たな扉を開けて、魅力的なママに会いに行きます」五十嵐さんが勧めるのは「ハシゴ作戦」。ハシゴのコツは、ママの手料理がたくさん出てくるスナックを1軒目に選ぶこと。居酒屋からのスナックという、二次会以降の利用ではなく、スナックで始めてスナックで締めるということです。

「3,000円でママの手料理食べ放題・飲み放題・カラオケも歌える。みたいな素晴らしいスナックもあります。居酒屋やカラオケ店に行くよりも安上がりですし、早い時間に行くとママとも話しやすいと思いますよ」

ここ数年、「スナックの1日ママ」になり、SNSなどで「ママやるので来てね!」と呼びかける女性が目立ちます。「そんな希望者やスナックという社交空間を必要とする組織とスナックをつなげるパイプ役でありたい」と五十嵐さん。「昭和風情漂う雰囲気の良いスナックが、ぽつぽつとなくなっていくのを目にするとすごく寂しいんですよね。PRコンサルタントという自分のスキルを生かして、スナックの現状課題を解決するお手伝いができたらと思っています」

▽ 五十嵐真由子さん

CM音楽制作会社、楽天を経て独立。Make.合同会社代表としてストーリーブランディングを手法としたPRコンサルティングを提案・提供している。
プライベートでは、全国のスナックを巡り歩く「スナ女」として、連載やメディア出演を通したスナック女子認知拡大普及活動に取り組む。社内コミュニケーションや企業PRに寄与する、オフィスにスナック空間を取り入れる「オフィススナック」の活動や、スナック初心者に向けた「スナック入門講座」「スナックツアー」も精力的に行う。

▽ ホームページ: スナ女友の会
▽ 前回の記事はコチラ

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記事を書いたのはこの人

Written by

池田 園子(いけだ そのこ)

岡山県出身。中央大学法学部卒業後、楽天、リアルワールドを経てフリー編集者/ライターに。関心のあるテーマは女性の生き方や働き方、性、日本の家族制度など。結婚・離婚を一度経験。11月14日に『はたらく人の結婚しない生き方』を発売。
写真撮影ご協力:青山エリュシオンハウス 撮影者:福谷 真理子