「やっぱり彼は運命の相手」――婚約者から元カレを略奪しようとした話【偽りの偶然】
「もう一度、やり直せるかもしれない」――そう思い込んだ瞬間から、彼女の中で“偶然”は“仕組まれた必然”へと姿を変えました。かつての恋人が婚約していると知っても、諦めきれない想い。運命だと信じたい一心で、元カレの生活を追い続け、接点を演出しようとする女性・千夏。すれ違ったまま終わった恋をもう一度取り戻すために、彼女はひそかに“略奪”という名の計画を進めていきます。これは、「もう一度彼を振り向かせたい」と願う気持ちが、いつしか常軌を逸していく話――。過去の思い出を武器に、千夏は“婚約者持ちの元カレ”にどう仕掛けていくのでしょうか。
あらすじ
同僚の由里から、婚約者がいる元カレ・蒼真を諦めるよう言われた千夏ですが、彼女の蒼真への想いは止まりません。千夏は、由里の忠告を無視し、蒼真のSNSを常にチェック。蒼真が「お気に入りのカフェでひと息」と投稿したのを見つけると、すぐにそのカフェへと向かいます。完璧な準備を整え、カフェに到着した千夏は、入り口近くの席に座っていた蒼真に声をかけられます。驚きながらも喜ぶ蒼真の席に座り、おしゃべりを楽しむ千夏は、二人の初めてのキスやデートの思い出話を持ち出し、蒼真の心を揺さぶろうと試みるのでした。
見どころ
止められない恋心とSNSストーカー
婚約者がいる元カレ・蒼真への恋心を止められない千夏の姿は、強い印象を与えます。由里の忠告にも耳を傾けず、蒼真のSNSを必死にチェックする千夏の姿は、一見すると純粋な恋心に見えますが、その執着心はすでにネットストーカーの域に達していることが伺えます。彼女の暴走気味な行動が、話の緊張感を高めています。
計算された「偶然の再会」
蒼真がカフェにいることをSNSで確認した千夏は、急いで身支度を整え、彼のもとへ駆けつけます。そして、驚く蒼真に対し「びっくりしたぁ」「また偶然重なっちゃったね」と満面の笑みで話しかけるシーンは、千夏のしたたかさと計算高さが際立ちます。これは決して偶然ではなく、千夏が仕組んだ偽りの偶然であり、彼女の略奪計画が着々と進んでいることを示唆しています。
思い出を盾にした心理戦
カフェで蒼真の隣に座った千夏は、「私たちが初めてキスしたの、このカフェの近くだったよね」と、二人の過去の思い出を持ち出します。この千夏の行動は、蒼真の心を揺さぶり、彼との関係を「あの頃」に戻したいという強い願望の表れです。蒼真が驚きながらも切なそうな笑みを浮かべる様子は、千夏の言葉が彼に少なからず影響を与えていることを示しており、巧妙な心理戦が繰り広げられていることが分かります。
▽ 蒼真は重なる「偶然」を疑うことなく、千夏との再会を喜んでいるようですね。しかし、千夏の恋心はすでに暴走気味で、その行動は危険な領域へと踏み込んでいます。このまま千夏の計画通りに事が進んでしまうのでしょうか。