うまくいってると思ったのに…妻に離婚を言い渡された話【抹茶味のソフトクリーム】

「家族の時間も大事だからな！」と、ひとりご満悦な様子の夫・圭介。妻の麻里と娘の莉奈は、圭介の突飛な思いつきによるドライブに気が重い様子。特に莉奈は友達との約束があったため、不機嫌になる圭介に困惑を隠せません。この家族旅行の裏側には、夫婦の間に深く横たわる問題が垣間見えるのです。

あらすじ

ある日、圭介は突然ドライブを提案します。しかし、莉奈には友達との約束があり、それを伝えると圭介は激怒。「家族の時間を優先しろよ！できないなら莉奈は家族じゃない！」とまで言い放ちます。泣きそうな莉奈は友達にキャンセルの連絡をする羽目に。
そんな娘の気持ちをよそに、圭介は上機嫌で出発します。車中、沈黙する麻里と莉奈。麻里は圭介の自己満足に付き合わせていることを莉奈に申し訳なく思います。サービスエリアに立ち寄ると、圭介は抹茶ソフトクリームを莉奈に一方的に買い与えます。しかし、麻里は知っていました。莉奈が小さい頃から抹茶味が嫌いであることを……。

見どころ

家族という名の圧力

友達との約束があると断った莉奈に、「家族の時間を優先しろよ」「できないなら家族じゃない」と詰め寄る圭介。まるで脅しのような言葉は、家族という関係性を盾にした一方的な圧力そのものです。娘の気持ちに寄り添おうとしない、彼の身勝手な態度が浮き彫りになっています。

ずれまくる愛情表現

「ほら！ソフトクリームだぞ！嬉しいか～？良かったな～」と、満面の笑みで莉奈に抹茶ソフトクリームを差し出す圭介。しかし、娘が抹茶嫌いだということを知りません。良かれと思ってしたことが全く相手に届かない。彼の愛情表現は、いつもこのように的外れなのです。

娘を想う母親の眼差し

暗い表情で抹茶ソフトクリームを受け取る莉奈を見て、「大丈夫よ莉奈、お母さんが食べるから。代わりに何か欲しいものがあったら買いましょ」と優しく声をかける麻里。そして心の中で「本当に愚かな父親ね、圭介」「莉奈はね…小さいころからずっと抹茶味が嫌いなの」と呟きます。娘の気持ちを理解し、そっと寄り添う母親の愛情が痛いほど伝わってきます。

▽ 圭介が良かれと思って買った抹茶ソフトクリーム。しかし、それは莉奈がずっと苦手としてきた味でした。自分の好みしか考えず、家族のことをまるで見ていない圭介の行動は、麻里の心に深く突き刺さります。「うまくいってる」と信じているのは夫だけ。妻と娘の気持ちとの大きなズレが、この家族の危機を物語っているのではないでしょうか。