新連載【自由な結婚】vol.1「他人の結婚にうるさい人たち」
「結婚すれば一人前になれるよ」
知人が年上男性からこんなことを言われて、一瞬フリーズしてしまったと話していました。うん、固まっちゃうの、すごくわかる。その男性に「ちょっと何言ってるかわかんない」と言いたくなりませんか。
結婚した人間=一人前の人間、が成り立つのであれば、バカなことをする大人は存在しないことになりますよね。たとえば、偽ることが許されないシーンで嘘をついたり、言うべきことを言わなかったり、隠し事をしたり、セクハラ発言をしたり……。平気で他者を傷つける、子どもでも「悪いこと」だとわかっているような愚かな行為をする政治家だって、存在しないことになるじゃないですか。でも、実際はたくさんいますよね。
「結婚してもしなくても、一人前になる人もいれば、ならない人もいる。個人の生き方、心の持ち方による」――正確にはこう言うべきなんだと思います。
結婚したければする、したくなければしない
前置きが長くなりましたが、「結婚したから~・結婚してないから~」「結婚できたから~・結婚できてないから~」といった文脈で何かを語るのは、もうそろそろやめればいいのに、と思いながら生きています。
結婚するのも結婚しないのも、結婚できたのも結婚できないと思うのも、当事者の自由。
ただ、いかなる状況にあっても、結婚というものによって、一気にステータスが上がったり、逆に下がったりすることはありません。している人よりしていない人のほうが成熟していない、ということもあり得ません。
結婚したいから、する。結婚したいけど、適当な相手がいないから今はしない。結婚したくないから、しない。ただ、それだけのことなんです。
一回結婚してみました
私は27歳のときに結婚して、29歳で離婚しました。生きているうちに一度は、結婚という「制度」を体験してみたいと思っていて、そのとき幸運にも好きな人、結婚するのに適当な人と付き合っていたから、「そろそろ結婚しよう?」と誘って結婚してみました。
でも、2年くらいたったとき、結婚生活がうまくいかなくなったんです。そのまま無理して続けても、そのがんばりは報われない努力だと悟ったし、お互いを不幸にするだけだとわかったから、さっと終わらせることにしました。結婚をやめたほうが、双方が幸せになることが明らかだったんです。
結婚という経験が自分にもたらしたものは、結婚・離婚という「引き出し」をひとつ増やしたこと、1回はやってみるという目標を達成できた満足感を得たこと、誰かと家族になるのはうれしいことも大変なことも両方あるのだと知ったこと、互いに収入がある、子どもなし夫婦の場合は揉めることなく、スムーズに離婚できると身をもって理解したこと……それくらいでしょうか。
阿川佐和子さんが63歳で結婚した理由
約1年前となる2017年5月9日、作家・タレントの阿川佐和子さんが結婚したことを発表しました。63歳(当時)にして初婚ということで、大きな話題を集めたのを今でも覚えています。
なぜ、入籍したのか――。そんな問いを投げかけるのは『オンナの奥義』(大石静・阿川佐和子、文藝春秋)で阿川さんと対談をしている、脚本家の大石静さんです。
「ある意味、世の独身女性の希望の星だったのに、突然の結婚発表なんて、裏切られたわ! って女性もたくさんいたと思うのですよ。私も長い間結婚しているけど、結婚ってやってみるとつまんないし……」(13ページより引用)
それに対し、阿川さんは週刊誌に現パートナーとのツーショットを撮られ、関係性を報道されたことのほか、こんな理由を挙げています。
「(中略)『あの方はどういうご関係?』と聞かれ、とにかくその都度、説明が必要になってきて……」(13ページより引用)
「(中略)それ以前は、オジサンと歩いていて誰かに会うと、なんともいえない微妙な緊張感が走るのを感じてたので」(14ページより引用)
いろいろな結婚のスタイルがあっていい
結婚前は、周囲から「どのタイミングで結婚するのか」と聞かれたり、パートナー(上記のように「オジサン」と呼んでいるそう)との関係をいちいち釈明したりするのが大変だった、といいます。
大人が「法律婚」にカテゴライズされる結婚をせずに付き合っていると、どこか後ろめたさがある。世間がいちいち何か言ってくる。周りがお節介な発言をしてくる。それらはすべて、「大人になったら結婚するのが自然なこと」という思い込みが、未だに根強く残っているから。
でも、するのもしないのも、本当は個人の自由。そこへ他人や世間が介入するのはどこかおかしいし、迷惑だと感じている人もいます。
結婚は自由だし、結婚をしない生き方もある。法律婚にとらわれない、いろいろな結婚のスタイルがあっていい――。
本連載【自由な結婚】ではそんなメッセージを伝えるべく、コラムやインタビュー、書籍の紹介など、毎回形を変えたコンテンツをお届けしていきます。