しなやかな私をつくる本vol.1~『恋愛氷河期』を読んで「じぶん軸」を持とう~
女性が生き方や考え方をアップデートし、つよくしなやかな自分を目指すのに役立つ本を月に1冊紹介します。
恋愛・セックス・結婚は人生における大きなテーマ。片想いの恋を叶えたい、セックスの技術を上げたい、結婚したい――願っていてもうまくいかなくて、悶々とした気持ちを抱えてどうしようもないとき、ついすがりついてしまうのは、“その道の成功者”が語る体験ではないでしょうか。
今の状況を打開するヒントを求めて書店に足を運ぶと、結婚が決まってから読む本や、妊娠・出産マニュアル本、スピリチュアル関連本などの近くに、恋愛・婚活指南本(多くは桃色っぽい背表紙!)が所せましとおかれています。
恋愛指南本を真似してうまくいく?
実際に背表紙を眺めているとわかりますが、「彼に愛される女性になる方法」「大好きな人が振り向いてくれる女性の特徴」「一生手放したくない女性の共通項」「男性を本気にさせる女性のルール」など、マニュアルやハウツー系のタイトルばかり。
これらを見てふと冷静になって思うのは「そもそも恋愛・セックス・結婚にマニュアルやハウツーなんて存在するの?」ということ。個々の事情があるわけですから、正解も不正解もないはずなのに。
今度はタイトルの内容について首をひねります。「男性から選ばれない女性は負けているの?」「相手を主体的に愛すのではなく、女性は『愛される側』に立つものなの?」「いまだに『受け身』体質のままでいるべきなの?」などなど。
ページをめくると、いろいろな方法が書かれています。今すぐ実践できそうなものから、思わず「ムリ! ムリ!」とこっ恥ずかしくなるくらい、難易度の高いものまでさまざま。
なかにはそのまま真似すると「イタい人」になりかねない手法もあります。それでも迷える子羊は、それらのテクニックに素直に挑戦し、玉砕してしまう……なんてこともあるわけです。
幸せの定義は自分で決めるもの
恋愛・婚活指南本に書かれた方法を実践しても、なかなか結果につながらない理由を「あくまで識者個人やそのまわりにとっての正解であって、あなたとは環境も相手も違うわけですから、ほとんどの場合うまくいくわけがありません」と解説するのは、『恋愛氷河期』(扶桑社)の著者・勝部元気さん。
勝部さんは本書で「そもそもなにが幸せだと思うかは人それぞれ違うはずなのに、『幸せというのはこういうものだ』『結婚は幸せ』と勝手に決めつけて話を進めており、決して読者と向き合っているとはいえない」とも主張しています。
この手の本に限らず、私たちは世間から「幸せとはなにか」を押しつけられることに慣れています。たとえば「女子カースト内で最上位にいるのは、結婚してママになってもキレイで仕事も充実している、なんでも手に入れている女性」「既婚女性でも子どもがいなければ肩身が狭い」「恋愛しない女性は寂しい人」だとか、世のなかやメディアは私たちの不安をあおり、画一化された価値観を押しつけているのです。
まずは自己分析が必要
勝部さんは「世間の常識や他人の幸福感に振り回されてしまったために、本当の自分になにが合っているのかが分かっていない場合がかなり多いと思います」「『どのような男女関係をどのように運用するのが自分に適しているのか』についての自己分析が、私たちには圧倒的に足りていない」と指摘します。
自己分析は、自分の内側にあるのぞきたくない部分や触れたくない部分と向き合って、受け止めなくてはならない、ときに苦痛を伴う作業です。それでも乗り越えなくてはならないことです。自分のことを分かっていない人が、相手のことを理解できるはずがないのですから。
これからは「自分俯瞰力」が必須スキルに
本書に「自分だけの取扱説明書」という言葉が出てきますが、これを少しずつでもよいので、完成に近づけていくことが大事です。地道な作業になっても大丈夫。ある種のデトックスなので、時間をかけてていねいに行うくらいでちょうどよいのです。
このほかにも、さまざまな属性の人と関わって自分の男女関係における行動を「他己分析」してもらうことも推奨されています。自分を客観視するスキルと習慣を身につけると、自分のなかにしっかりした固い軸ができます。
じっくり自分の生き方やパートナーシップについて考えたいときにおすすめな1冊
恋愛・セックス・結婚――どれも小手先のテクニックでなんとかできるものではありません。一瞬だけうまくいったとしても、それ自体が安定して継続しなければ、なんの意味もないですよね。
パートナーと中長期的な関係を築きたいなら、相手と対等に向き合える心の持ちようやコミュニケーションスキルはもちろん、自分を知り、自分を大事にすることが必要です。
もしかすると書店では、恋愛・婚活指南本コーナーに置かれているかもしれませんが、本書はマニュアル本でもハウツー本でもありません。女性が自分の生き方、パートナーシップの結び方を主体的に考えるときの行動指針にできる本です。
まさに、恋愛・セックスに悩んでもがいて心を痛めていた、小娘時代の自分に読ませたかった一冊。