sex研究部Vol.10 恋人・夫婦仲相談所 所長 二松まゆみさん

周りの人にはなんとなく聞きづらい、女性の性やセックスに関するテーマ。
大事な話ですがネットで調べてすませていませんか? 専門家の話からセックスをひもとく連載の第10回に登場していただくのは、恋人・夫婦仲相談所所長として、長年女性やカップルから結婚や夫婦仲、セックスに関する相談を受けてきた二松まゆみさん。セックスレスやEDなどのテーマを中心に、性・セックスに関する執筆を数多く行うほか、恋愛・夫婦仲コメンテーターとしてさまざまなメディアでも活躍されています。二松さんから悩める女性たちへアドバイスをいただきました。


交際中からセックスレス……そのまま結婚して大丈夫?

彼と一緒に泊まることはあるのに、キス止まりでセックスはないんです――。こんな相談を未婚女性からいただくことは多いです。彼女たちから「さすがに結婚したら(彼は)セックスしてくれますよね?」と聞かれます。でも、冷静に考えてみてください。交際時からすでにセックスレスの状態で、結婚後に突然セックスフルになるわけがないですよね。
私は「それは甘いわよ」とバッサリ伝えますが、彼女たちは「彼のことは好きだし、やさしいし、いい会社に就職して安定しているし、年収もそこそこ高いし……」と言うわけです。いわゆる「結婚相手に求める条件」に「性に関すること」は上がってきません。性的な相性や考え方が合うかどうか、話し合った上で結婚すべきだと思うのですが。

実際に同じようなケースで、私が「結婚はもうすこし考えたほうがいいのでは」とアドバイスしていた女性がいました。2年ほど交際しているのにセックスはなく、それでも結婚式場を押さえたというんです。彼女は「今は忙しいからセックスがないんだと思います。結婚したら大丈夫ですよね?」と結婚に踏み切りました。
その半年後に彼女は「結婚してもセックスがないんです」と相談に来られました。こういった事例は少なくありません。一般的には新婚後3~4年ほどはセックスがあり、その後徐々になくなっていくケースが多いです。でも、結婚前から性生活がないのは、彼の性欲が低いか、セックス以外にSNSやゲーム、そのほかの趣味など大事にしたいことがあるといったところが理由でしょう。とくに後者はイマドキっぽいなと思います。

失敗を恐れる20~30代男性には自信を持たせて

性に対して無関心な男性を除き、セックスを遠ざけようとする男性は何らかの理由や背景を抱えています。彼らに「セックスはパートナー間において大事なもの」だと理解してもらうには、その理由を聞き出して話し合う必要があるでしょう。以前失敗したのがトラウマになっている、下手だから馬鹿にされるのが怖いなど人それぞれ事情があるはず。そのあたりを腹を割って話せるのは、理想的な状態だといえます。
とくに20~30代の若い世代の男性には「自信を持たせること」も大事です。某男性誌のインタビューでもお話しましたが、今の20代男性の母親は40~50代のバブル世代が中心です。彼女たちの夫は忙しく働き、高収入を得る「三高男性」。忙しいので家庭をあまり顧みることなく、家にいる時間も少ないのが特徴です。

夫に放置気味にされた母親たちの気持ちがどこへ向かうかというと、彼女たちの息子です。息子に愛情をかけすぎるあまり、「危険な目に遭わせたくない」「失敗・挫折させたくない」という一心で子育てに励みます。結果的に溺愛されすぎた息子たちは、失敗を極端に恐れるようになってしまったんです。
彼らを総じてマザコンと言い切ることはできませんが、その傾向はあります。そのため彼らは自分が「女性からケアされる側」にいると思いがちです。
また彼らは挫折を恐れる世代であるため、「イカせることができないとカッコ悪い」「もし途中で萎えたらどうしよう」「元カレと比べられたら嫌だし」など、行為自体に関する不安も抱えています。
とはいえ、世の中の一般的な基準は「男性が女性をリードする」というもの。彼らもそれは知っているので「セックスでは癒されたいけれど、男の自分がリードしないとマズいよね」と、おっくうに感じてしまうのでしょう。

マンネリ打破には「非日常」を徹底すること

もともとセックスをしていたカップルがセックスレスに陥る主な原因のひとつは、やはり「マンネリ化」。セックスレス防止のためには、いかにマンネリをなくすかが課題といえます。一番おすすめなのは、旅に出たりホテルに行ったりと、非日常的な場でセックスを楽しむこと。
「そんな金銭的余裕などない」という人には、家の中でも普段と違う場所でしてみることを勧めています。セックスをする場所=寝室、というルールはありません。階段や玄関などすこし場所を変えてみるだけで盛り上がるはずです。思いきって冒険してみてください。

今はなき日活ロマンポルノ(1971年~1988年にかけて日活で制作された成人映画)には、鑑賞しているとセクシースイッチがオンになり、マンネリ化防止の参考になる作品が数多くありました。いかにも所帯臭い昭和の台所で、中年男性が中年女性を背後から攻める……といった作品もあるくらいです。趣向を変えると、日常にいながらその延長で、非日常的なセックスを楽しめると思います。

間接照明やアロマのあるオシャレな寝室にこだわる必要はありません。ときどきお風呂にキャミソール姿で登場し、男性の背中を流してあげたり、コスプレしてみたり……なんていうのもおすすめです。いまさらコスプレなんてと気後れしないでください。
スーツや喪服を着ているパートナーを見てスイッチが入った、という話は男性からよく聞きます。何においても「いつもと違うこと」を意識してみること。そこまで徹底しないと、マンネリ化を原因とするセックスレスは改善されません。

「レスだけど仲よし」カップルの行く末は?

セックスレスに悩むカップルは数多くいますが、気になるのは「セックスレスだけど仲よしな夫婦」です。この手の方はかなりたくさんいます。夫が「僕たちはレスだけど仲よしだからいいよね」と言うと、妻は同意するしか選択肢はありません。
大ブームになったドラマ『昼顔』を見て、そういったイマドキの仲よし夫婦を象徴しているなと思いましたが、性の話題をタブー視している彼らは「でも、私は(僕は)本当はセックスしたい」と話し合ってはいません。性欲がないカップルであればまったく問題はありませんが、どちらかが少しでも不満を感じていたら、セックスレスの問題を抱えているといえます。

彼らのうち「セックスはなくてもいい」と考える側は、自分たちはセックスをしなくてもそこそこ仲がいいと思い込んでいます。しかしそのまま歳を重ねると、不満を持っていたパートナーから熟年離婚を突きつけられる可能性も。
それに結婚すると大なり小なり揉め事が起きるのが普通。何らかのトラブルが発生したときに、夫婦間にセックスがあるかないかで結果は決定的に変わってくるものです。セクシャルコンタクトがないカップルとあるカップルは、結びつきのレベルが違うように思います。
以前「夫婦ゲンカをした後、セックスで仲直りできるか」について調査したところ、半数以上がイエスと答えています。抱き合ってオーガズムに達するとケンカの内容なんてどうでもよくなる、と答える人が目立ちました。セックスの定義はよく勘違いされがちですが、セックス=挿入があること、ではありません。愛情をもって肌に触れられるだけで、女性はうれしい、幸せだと感じるもの。

とはいえ女性が「挿入はしなくてもいい。ハグやキス、触れ合うだけで私は幸せだから」と伝えても、男性は挿入にこだわるケースが多いのですが……。EDの男性の中にはパートナーにキスすらしない、と徹底している人もいます。彼らの言い分としては「妻(彼女)がその気になっても(挿入ができなくて)困るから」というもの。女性が辛抱強く「挿入はなくても幸せだよ」だと口頭で伝えて、男性にインプットしてもらうしかないでしょうね。

初期にふたりのセックス・ルール設定を!

セックスは快楽を得られる行為であるのと同時に、男性と女性が互いに異性として認め合う行為でもあります。でも「セックスをしたい」と思う人が30代でセックスレスになってしまうと、残りの人生50年あまりにも寂しすぎませんか? そうならないよう、今後結婚を控えた若い方にはこうアドバイスしています。
「月●回はしよう」「セックスがあるほうが夫婦ケンカ後に仲直りできる確率が上がるよ」「ケンカ後はセックスをして仲直りするルールを作ろう」など、ふたりのルールを作っておきなさい、と。ライフステージが変わる前から設定しておいた決め事は破りにくいものです。交際中からパートナーと性・セックスについて話し合える理想的な関係構築を目指していただきたいと思います。

▽ 二松まゆみさん

恋人・夫婦仲相談所 所長/執筆家。バブル期直後、hanakoママと呼ばれる。「夢見る妻」たちを組織化する。主婦会員登録4万人のイベント企画・主婦マーケティング会社を立ち上げる。引退後、恋人・夫婦仲相談所開設。夫婦仲に悩む主婦会員1万3千名を集め、「ニッポンの夫婦仲・結婚・再婚」を真剣に考えるコミュニティを展開。 未婚女性からの恋愛、結婚、性の相談も増加中。「理想の結婚」「アンチエイジング」「堂々再婚」「ED」「セックスレス」のテーマを幅広く考察。講演、マスコミ取材も多く、恋愛・夫婦仲コメンテーターとして着実に歩んでいる。日本性科学会会員。ED診療ガイドライン制作委員。日本メンタルヘルス協会心理学基礎コース終了。『40歳からの女性ホルモンを操る53の習慣』(扶桑社)、『キョウイクSEX』(主婦の友社)『新・抱かない男の見分け方』(スターツ出版)など著書多数。

2015.04.02

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記事を書いたのはこの人

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Written by 池田 園子(いけだ そのこ)

岡山県出身。中央大学法学部卒業後、楽天、リアルワールドを経てフリー編集者/ライターに。関心のあるテーマは女性の生き方や働き方、性、日本の家族制度など。結婚・離婚を一度経験。11月14日に『はたらく人の結婚しない生き方』を発売。 写真撮影ご協力:青山エリュシオンハウス 撮影者:福谷 真理子