ワンクール恋愛女の結婚道Vol.10 尽くす嫁とつなぐ嫁――嫁の在り方を考える

恋愛がワンクール(3か月)しか続いたことがない、恋愛コンプレックスの塊だった筆者。26歳のときに出会った男性と1年半の交際を経て結婚しました。結婚・恋愛に悩む方のサプリメントになるコラムをお届けします。


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結婚して一年半。「妻」としての役割は果たせているけれど、「嫁」としてはいかがなものか――先週末、一年半ぶりに夫の両親と会うまで、私はときどきモヤモヤしていました。

「嫁の役割」を果たしていた母

日本では「結婚はふたりだけのものではなく、家同士のもの」と言われます。そんな文化のもと、お盆や正月、春休み、夏休みなどに車で子どもたちを連れて、父の実家に帰る母を長年見てきました。

祖母と一緒に食事の準備や後片付けをしていた母。祖父が近所の城跡で花見をしようと言い出すと、お弁当を作り、水筒にお茶を詰め……と、とにかくバタバタと働いていました。日本の嫁の姿そのものです。

嫁ぐということはつまり、夫の実家に孫の顔を見せに行き、手伝いをし、直接的に尽くすものであると私はイメージしていました。しかし、実際に結婚しても子どもがおらず、さらには互いの親が遠隔に住んでいるとなると、家同士の結びつきというより個と個の結びつきのほうが強いように感じます。何よりも物理的な距離は大きい。

彼女時代に三度対面した義両親

私が初めて夫の両親に会ったのは、付き合って半年ほど経ったときのこと。たまたま彼の実家のある県で、ふたりそろって同じ現場の仕事があったのです。それをいい機会だと思ったのか、彼は「うちの実家に泊まっていく?」と事前に提案してくれました。

大好きな人の実家を見てみたい、どんな両親なのか会ってみたい――脳内は興味津々な感情で埋め尽くされていたので、「もちろん。行きたい!」と即答したのを覚えています。彼女ですと紹介してくれるのも喜ばしい、とそわそわしました。

その日、夜遅くにおじゃましたものの、嫌な顔ひとつせず迎えてくれたお義母さん。たくさん喋り、たくさん動き回って、夜食の準備をしてくれて、初対面の私を丁重にもてなしてくれたのです。

翌日、別れるタイミングで「●●●●をよろしくお願いしますね」と深々と頭を下げられて恐縮しました。大切な一人息子の彼女として、認めていただけたのかと。その後、二度目に会ったのは半年後の正月、三度目は入籍前の両家顔合わせのときでした。

親に顔を見せるのは3~4年に一度!

そらから気づけば一年半が経っていて、先日は久しぶりの再会でした。そもそも食事をすることになったきっかけは、少し前にお義母さんからいただいた一本の電話でした。お義父さんの仕事の関係で、3月後半に東京に行くつもりなの、と話すお義母さん。

「(息子が)園子さんに迷惑をかけていない? 結婚してからはずっと会っていないし、どんなふうに暮らしているか知りたいし、食事でもどうですか?」と誘ってくれたのでした。

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それにしてもなぜ一年半も会わないのか? そんなに会わなくて大丈夫なのか? そう疑問に思う方がいるかもしれません。当初私もそれを気にかけて、入籍から一年ほど経ったタイミングで、たまには実家に顔を出さなくてもいいのかと夫に尋ねました。

夫は私が気疲れしてしまうだろう、と気を遣っているのではないか。だから「休暇中に帰省しよう」と言い出すのをためらっているのではないか。そう予想したのです。

でも、返ってきた答えは違いました。「別に帰らなくていいよ。3~4年帰省しないのは普通だったし」。夫の実家は東京から新幹線で一時間半ほどのところにあります。それでも彼にとって、独身時代は3~4年に一度しか親元に顔を見せないのがあたりまえで、結婚後もその頻度を変えるつもりはないようでした。

「緩衝材」的な役割を果たせた喜び

夫の主義はわかりました。とはいえ、私は彼と晴れて家族になり、彼の両親は義父と義母にあたるわけです。なのに、こんなに交流がなくて大丈夫? と考えてしまうのです。私たちと義両親との交流は、

(1)母の日と父の日、クリスマスの年3回、私たちから義両親へスイーツを贈る
(2)お義母さんが私たちに、旅行のお土産や食料品をときどき贈ってくれる
(3)このやりとりがあった後に電話でお礼を伝える

といった程度です。

嫁らしいことはできていないけれど、果たしてこのままでいいものかと、ときどき考える日々。しかし、先日食事をしたときに、大きな気づきがありました。私という「外」から加わった人間が一人いると、4人で食事をする機会が自然と生まれるということに。高校生の頃に親元を離れて以来、ほとんど顔を合わせる機会がなかった彼と両親をつなげているということに。

独身の息子に「心配。ちゃんと暮らしているの? 東京に行くから食事でもしましょう」と提案したところで、子どもじゃないんだからとうっとうしがられてしまうでしょう。そうなると、親としては連絡をとるのをためらうのではないでしょうか。

一方で、妻という新メンバーを迎え、暮らしに大きな変化があった息子には、連絡しやすくなります。第三者が加わったことで、「●●さんに家事を任せきりにしてるんじゃないの? 迷惑をかけていない?」など、心配してこちらに来る口実ができるから。

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最初は(実の家族なのに……!)なんとなくぎこちない会話をしていた夫と義両親でしたが、私が彼の幼少時代や、義両親の趣味である旅について無邪気モードで質問するうちに場がなごみ、夫の表情にも笑顔が浮かぶようになったのです。

やはり親は何歳になっても子どものことが気になるもの。ときどきは会いたい、顔を見たいと思うはず。母のようないかにも嫁らしいプレーはできないけれど、夫と義両親とのスキマを埋める「緩衝材」のようなプレーならできます。多様化が叫ばれる時代、旧来のそれとは違う「嫁」の在り方があってもいい。そう思うことにします。

2015.04.06

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記事を書いたのはこの人

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Written by 池田 園子(いけだ そのこ)

岡山県出身。中央大学法学部卒業後、楽天、リアルワールドを経てフリー編集者/ライターに。関心のあるテーマは女性の生き方や働き方、性、日本の家族制度など。結婚・離婚を一度経験。11月14日に『はたらく人の結婚しない生き方』を発売。 写真撮影ご協力:青山エリュシオンハウス 撮影者:福谷 真理子