sex研究部Vol.6 小説家/エッセイスト・大泉りかさん

周りの人にはなんとなく聞きづらい、女性の性やセックスに関するテーマ。大事な話ですがネットで調べて済ませていませんか? 専門家の話からセックスをひもとく企画第6弾は、小説家/エッセイストの大泉りかさん。長年に渡って男女の性・セックスに関する取材・執筆を行い、官能小説や恋愛指南本を多数上梓してきた大泉りかさんに、悩める女性たちへアドバイスをいただきました。


作家活動の原点は「SMショー」だった

学生時代にライターとしてデビューした大泉さん。最初の仕事は男性誌での、人妻好きな読者に向けた記事執筆でした。

「ライターを始めたきっかけは、当時興味があって見に行ったSMショーでした。ショー終了後に縄師に話しかけてしまうほど、SMが自分のなかでピンときちゃって。それもあって後々『女流官能作家が教える 愛が深まる ライトSM』を書くことにもなるのですが。その店のオーナーを務めるママが女王様で、お客さんも性にまつわる職業に就いている人が多く、店の雰囲気が気に入って通うようになりました。その後、私自身もM女としてショーに参加したこともあります(笑)。もともと文章を書くことに興味があったのですが、そこでたまたま出会った編集者の方に仕事をもらうようになったんです」

大学卒業後は編集プロダクションに勤務。一般的に編プロといえば取材・執筆・編集を行いますが、大泉さんが勤めた会社では風俗サイトの運営をメインに行っていました。「やりたいことと違うから」との理由で退職し、知人経由で出版社に席を置いてもらい、編集の仕事に携わるようになります。

「出版社で男性誌の編集の仕事をしながら、自分で取ってきたライターの仕事もしていました。20代のほとんどを出版社で過ごしていましたが、途中で小説を刊行したり、自分の仕事が忙しくなったりしたこともあって、30歳を迎える頃に独立しました」

“しっとりエロ”な官能小説の世界

その後、精力的に官能小説や少々過激なライトノベルを刊行し続ける大泉さん。昨今、女性が書く「女性向け官能小説」も増え、人気拡大を見せる官能小説ですが、執筆する上で心がけていることはあるのでしょうか。

「官能小説ってものすごくシンプルに要約すると『男女が出会ってセックスをした』ことを描いているわけです。けれど、こう書いても、全然興奮しないですよね。だから、どうやってリアリティーや夢を持たせるか、さらにはセックスの様子をどう描写するかにかかっています」

ストーリー描写以外にキャラクター設定にも特徴があります。

「登場する女性のタイプはさまざまですが、やっぱり恥じらいのある、大和撫子的な要素があるヒロインが王道ですね。あまり現代的な女性にしすぎると、読んでいて多少興奮はしても、男性たちには響きづらいのでは、と思います。私は、あえてそういう女性をヒロインにすることもあるのですが」

およそ2か月程度で1冊の官能小説を書き上げるそう。作品に「自分らしさ」をうまく取り入れることにも力を入れています。

「私だから書ける、というような情報も入れるようにしています。たとえばヌーブラやネイルなど、最近の定番アイテムを取り入れたりして。『男の背中に~のネイルを立てた』とか、イマドキ感もありますよね」

官能小説以外に近年は男性向け恋愛・セックス指南本を書くことが増えた大泉さん。昨年12月に刊行された『もっとモテたいあなたに 女はこんな男に惚れる』が好評だったため、第2弾として11月から『もっとセックスしたいあなたに』が発売されています。

「どうすれば女性がデートやセックス中に喜ぶのか、あまりわかっていない男性たちに向けて書いた本です。適度にモテて彼女もいるようなリア充はターゲットではありません(笑)。“マニュアル”をあまり知らない20~40代の男性に多く読んでいただいていますね」
男性向けの本ですが、女性読者からも「参考になる部分があった」との声が寄せられているそうです。

セックスレス解決策はない。“予防”しよう!

作家活動のほか、女性の性・セックス観に関する取材・執筆・連載も数多く持つ大泉さん。独身アラサー女性が抱えている恋と性の悩みについても聞いてみました。

「恋愛すると“辛抱”ができなくなる女性は少なくありません。たとえば彼のTwitterを逐一チェックするなど、行動を監視してしまうのです。彼女たちは恋にどっぷり浸かりがちで、生活のなかで恋が占めるウエイトが一番大きい。結果的に彼に『重い』と思われ、距離を置かれてしまうことも……」

 一方、既婚のアラサー女性となると話は変わってきます。
「セックスレスに関する悩みがぐっと増えますね。結婚した時点ですでにレスになっている人もいます。5年ほど付き合ったり、同棲したりして結婚となると、マンネリ化して新婚っぽさもないので。小さな子どもがいれば話は別ですが、夫婦ふたり暮らしだと婚外恋愛へと走るケースが見られます」

とはいえ、セックスレスは既婚女性だけではなく、長く交際する彼がいる独身女性にとっても切実な問題。どうすれば解決できるのでしょうか。

「解決策というより、『セックスレスにならないように準備する』予防法しかありません。自分を例に挙げると、夫と出会う前まで付き合っていた彼と別れた理由はセックスレスでした。当時彼は40歳くらいでしたが、ちょうど体力が落ち始める時期ですし、仕事の忙しさで鬱っぽくもなっていたのです。後で鬱からのセックスレスだと気づきましたが、当時は『私に魅力がないの?』とツラい気持ちになって、泣く泣く見切りをつけた恋愛でした。セックスレスになってしまった場合は、相手のメンタルの状態を疑ったほうがいいと思います」

同じことを繰り返してしまわないよう、今の旦那さまとは付き合い始めた頃から、セックスライフについて話し合ったといいます。

「ふたりの間で『セックスは週1でしよう』と決めました。出会って5年、結婚して2年になりますが、今でもそのルールは守っています。とはいえ『何曜日にする』と厳密に決めているわけではなく、『2週間のうちに2回くらい』とゆるく取り決めるのがポイント。私もやる気が起きないときはありますが、『これくらいのゆるい決まりなら守ろう』と思えるんです」
いざセックスレスになってから話し合っても、両者ともに歩み寄るのは難しくなってしまうもの。そのため付き合いたて、新生活を始めたての頃、話し合うのがベストだといえます。

コミュニケーションがセックスの合う・合わないを決定づける

セックスレス以外に多く寄せられる悩みとしては、「彼と性的に合わない」といったこともあるそう。その原因として相手に「~してほしい」と伝えられない女性の多さが挙げられます。

「さまざまな映像や文章などの情報に触れていると、相手に対して期待値が高くなってしまうのもわかります。でも『してほしいこと』は言葉にしないと伝わりません。男性は傷つきやすいので『~しないで』『~はやめて』と言うとへこみますが、やさしく『~してほしい』と言えば変わってくれるはず。最初は『合わない』と感じていても、工夫次第で『合うようになる』ものです。まずはコミュニケーションを図ること」

最後にGoogirl読者の皆さんにメッセージをいただきました。

「アラサー女子の皆さんは結婚を考える時期で、婚活をしている方も多いと思います。ただ、すべてを満たしてくれる王子様はいない、とは知っていてほしい。相手を探している人は、自分のなかで優先順位を決めることをおすすめします。『自分にとって一番大事なこと』は何か見つけることが先決です。私の場合は、自分が自由奔放な活動をすることもあるため、それを『面白い』と受け入れてくれる相手でないとダメだと思っていました。過去には私の仕事を『恥ずかしい』と言う男性もいたので……。お互いが苦しくならない、心地よく過ごせる相手と出会えるといいですよね」

大泉りかさんの推し本

『ゆっくり 破って』(深志美由紀)
官能小説家の友人が書いた本。主人公の女性が恋愛の傷を抱えながらも、それを強く乗り越えていくストーリー。リアリティのある設定で、官能小説を読んだことがない方でも読みやすいと思います。「自分の官能って何だろう?」と考えるきっかけにもなりますよ。

大泉りかさん

小説家/エッセイスト。ライター/編集者として働く傍ら、SMショーのM女やキャットファイターなど、アンダーグラウンドな世界に浸った20代を過ごす。2004年に『ファック・ミー・テンダー』(講談社)よりデビュー。以後、官能小説や女性向けポルノノベルで活躍。新聞や雑誌、ウェブで連載多数。11月刊行の『もっとセックスしたいあなたに』(文庫ぎんが堂)が好評発売中。

2014.12.06

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記事を書いたのはこの人

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Written by 池田 園子(いけだ そのこ)

岡山県出身。中央大学法学部卒業後、楽天、リアルワールドを経てフリー編集者/ライターに。関心のあるテーマは女性の生き方や働き方、性、日本の家族制度など。結婚・離婚を一度経験。11月14日に『はたらく人の結婚しない生き方』を発売。 写真撮影ご協力:青山エリュシオンハウス 撮影者:福谷 真理子