sex研究部Vol.3 『モンスターウーマン』著者・大場真代さん

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周りの人にはなんとなく聞きづらい、女性の性やセックスに関するテーマ。大事な話ですがネットで調べて済ませていませんか? 専門家の話からセックスをひもとく企画第3弾は、現在ベストセラーとなっている新書『モンスターウーマン』著者の大場真代さん。これまで女性の性に関するさまざまな取材を行ってきた大場さんに、現代女性が抱える性・セックスの闇、モンスターウーマンの実情について伺ってきました。

セックスに翻弄され、闇を抱えた「モンスター」な女性たち

5月に出版された『モンスターウーマン』。セックスに翻弄され、自らの性に関して闇を抱えるようになった女性たちを「モンスターウーマン」と名付け、彼女たちの性行動、性意識の実情を事例形式で紹介した衝撃的な本です。処女・ヤリマンという「対極」ともいえる性事情を抱えた女性たちが増加し、性志向の二極化が起こっていることが書かれた第1章に続き、セックスでキレイになろうとする女性たちの実態が書かれた第2章、セックスレス問題を扱った第3章など、ページをめくる手が止まらなくなってしまうはず。
ネット書店では一時的に在庫切れになるほど、話題沸騰の本書。「年末に『性に関するムック本を書きませんか』とのお話をいただいたのですが、当初の予定に変更があり、新書として刊行することになりました。そこで、今まで10年ほど続けてきた膨大な取材内容を、1冊の本にすべく整理したんです」と大場さん。
3日に1回ほどのペースで、一度に何人もの女性に話を聞き、これまで取材した女性の数は1000人を超えるそう。

選択肢の増加、情報の氾濫がモンスターウーマンを生み出す背景に

数多くのモンスターウーマンから話を聞いてきた大場さん。なぜ「普通の女性」がモンスターへと変貌してしまうのか。その背景をこのように分析しています。

「昔は恋愛・結婚・出産が、ひとつの『スタンダードな流れ』として存在していました。とくに職場結婚が奨励されていた時代は、会社が用意してくれた“レール”に乗ることはあたりまえ。しかし女性の性や生き方の選択肢が次第に広がっていき、『必ずしもレールに乗らなくてもいいのでは?』と考える女性も出てきました。かつてスタンダードだったはずの流れは、今やあたりまえのものではなくなってきています」

女性にとっての選択肢が増えたことは、女性として喜ばしく感じられる反面、問題点も生み出しています。
「もともとあまり結婚願望がないタイプだったものの、周囲が次々と結婚していくのを見ると不安になり、『出産までのリミットもあるし、結婚したほうがいいのかな?』と焦って不安になってしまう……。このように周囲の情報に影響されたり、プレッシャーを感じたりして、迷う女性は少なくありませんし、昔の私自身もそうでした。今ではそんな気持ちは突破してしまいましたが(笑)」

独身を貫く女性、事実婚を選ぶ女性、DINKSを選ぶ女性、これまでの標準的なスタイルともいえる結婚して子どもを育てる女性――昔よりも女性の生き方は多様化していて、ロールモデルもさまざまですが、圧倒的多数が後者の人生設計を選んでいるのを見ると、「私、今のままでいいのかな」「これで正しいのかな」と悩んでしまうことも。
選択肢が増えるのと同時に、女性の性に関する情報が増えていることも、一部の女性をモンスター化させる要因になっていると、大場さんは指摘します。
「本書の執筆にあたり、恋愛指南本やセックス指南本、ネットの恋愛・セックス記事など、さまざまな文献に目を通しましたが、それぞれで書かれている内容が異なっているんです。一方では『いい』と書かれていることが、他方では『よくない』と書かれていることも少なくありません」

本気で悩んでいる女性がさまざまな情報にふれると、何が正しくて何が間違っているのか、自身で判断がつかなくなってしまうはず。
「モンスターになる女性は基本的には頑張り屋で、根は真面目な人が多いのではと思います。だからこそ積極的に性・セックスに関する情報収集に励みますが、相手と直接向き合うことを避けていては、情報が蓄積するだけで、真の正解にはたどりつけず、苦しんでしまうのでしょう」
性・セックスに関する世間の情報に惑わされる必要はありません。あくまでも個人が書いている見解として受け止めて、自分の軸を持つこと、相手と直接向き合うことがストレスをためないコツ。

セックス以外でパートナーと深く向き合い、つながりたい

本書では話題の夏ドラマ「昼顔」に登場するような、不倫にのめり込む女性の事例も多数紹介されています。夫との性生活に満足していない、夫婦間で埋められない性的不一致を抱えている、セックスレス状態が続いているなど、さまざまな事情を抱え、不倫の扉を開く女性たち。「家庭外にセックス」を求める彼女たちは、大場さんの目にどのように映っていたのでしょうか。

「一番理想的なのは、お互いが感じている不満について、ふたりでじっくり話し合って、解決へと導くこと。オープンに話し合える関係性の相手をパートナーにする、もしくは徐々に本音を話し合える関係性を構築していくことが大事だと思います。とくにまだ独身の方は、性格や思考に柔軟性があり、かつ何でも話し合えるような相手とお付き合いしてほしいです。でも中にはすでに結婚していて、パートナーに性に関する不満をどうしても言い出せなかったり、性的な相性以外でパートナーを選んだりした人もいるはず。決して不倫・浮気を奨励するつもりはありませんが、そんな状況にある人がセックスを外に求めてしまう気持ちもわかります」

女性側が性・セックスに工夫を凝らそうとすると、「気持ち悪いからやめろ」と一蹴する男性も残念ながらいます。結果的にセックスを拒否され続けたり、男性主導のセックスばかりされたりした結果、自分にとって満足のいくセックスを外に求め始めるのは、ときにやむを得ないことなのかもしれません。
「もし正式なパートナー以外とセックスをするときは、絶対に自分や相手のパートナーにバレることがあってはいけません。人目につかないところで会うのは大前提ですが、厳しいルールを作って、関係者を傷つけることがないようにする必要があります。また、何度もセックスを重ねるうちに情が移って、相手にハマってしまう危険性もあります。女性はオキシトシン(ホルモン)の影響で、身体の相性がいいと感じた相手に対し、好意を抱くようになるケースが多いです。完全に割り切った関係を続けるのも、実はとても難しいことなのです」

最後にGoogirl読者女性へのメッセージをいただきました。
「性・セックスに過度にとらわれてしまうと、モンスターウーマンになる可能性が高くなります。セックス以外の部分でパートナーとしっかり向き合い、普段からコミュニケーションを大事にしてください。愛されている実感、大事にされている実感があれば、性・セックスだけに固執することはなくなるはず。お互いにカッコつけるのではなく、弱い部分やダメな部分も見せられる関係性を構築してください。もし今の彼とそういった関係を築くのが難しい場合は『世の中にはまだまだたくさん男性がいる』と考えて、出会いを見つけにいきましょう。そこでも1回会って『ダメ』『つまらない』と決めつけずに、何度かサシや複数人で会ってみることをおすすめします。最初の間口はある程度広くあけておくことが大事です」

大場真代さんの推し本

『人はなぜ恋に落ちるのか?―恋と愛情と性欲の脳科学』
「好きな人ができると、一日中そのことばかり考えてしまうのはなぜ?」「どんなに愛するパートナーがいても、人は浮気をしてしまう生き物なのか?」など、恋愛におけるさまざまな謎を解明するために行われた実験結果がまとめられています。男女の心と身体のリアルが客観的に見えてくる1冊です。

▽ 大場真代さん
フリーライター。フェリス女学院大学卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2007年にフリーに転身。女性の性・健康にまつわるテーマで取材・執筆を続ける。初の著書に『モンスターウーマン』(宝島社)

2014.09.02

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記事を書いたのはこの人

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Written by 池田 園子(いけだ そのこ)

岡山県出身。中央大学法学部卒業後、楽天、リアルワールドを経てフリー編集者/ライターに。関心のあるテーマは女性の生き方や働き方、性、日本の家族制度など。結婚・離婚を一度経験。11月14日に『はたらく人の結婚しない生き方』を発売。 写真撮影ご協力:青山エリュシオンハウス 撮影者:福谷 真理子