桃山商事・清田隆之+池田園子の恋バナサロン Vol.4 「セックスレス打開策を知りたい――したいオンナとしたくないオトコ編」
恋バナ収集ユニット・桃山商事の清田隆之氏とライター・池田園子が、毎回ひとつのお題を掘り下げる連載企画です。過去に400人以上の恋愛相談を受けてきた清田氏が、女子の悩みにやさしく(?)寄り添ってくれます。第4回目は「セックスレス」をテーマにお届けします。
自分の要求だけを強く突き付ける感じではなく、「セックス=親密さのバロメーターだと思っているから、ちゃんと話し合いたい」みたいに伝えるといいかもしれない。(清田)
石田衣良さんの小説『sex』に「好きな人とたくさん」ってフレーズが出てくるんですが、ああいう考えの男性が増えればいいのになと思います。(池田)
「私がダメなんだ」と自分に責任を感じる女性
池田:突然ですが、今日のテーマは「セックスレス」です。必ず何回目かで話したいなと思っていました。
清田:かなり大問題ですね。プレッシャーがハンパない……。
池田:セックスレスにはいくつかパターンがあるとは思いますが、私がよく聞くのは「したい女性、したくない男性」の組み合わせです。(恋人との)セックスに興味をなくす男性がいるみたいで。
清田:ほかには「したいオトコ、したくない女性」「お互いにしたくないけれど、常識的にはどうなんだろうと悩むカップル」というケースもあると思う。必ずしもセックスがなければいけないとは思わないけど、そのことで片方または両方が苦しんでいると、それは健康的ではないと思う。
池田:そうですね……。いろんな苦しみの形がありますよね。もし自分がそうなってしまったら「(パートナーは)私とセックスすることに飽きたんだろうな。何か工夫したり自分を変えたりしないとダメだ……」と反省したり、落ち込んだりしそうです。
メモを取りながら話を整理する清田隆之氏(恋バナ収集ユニット・桃山商事)
清田:セックスレスになると、自分に原因があると考える女性は思いのほか多い。女性誌なんかを見ると「抱き心地のいいオンナになろう」みたいな特集が多かったり、「ちつトレ」のようなオトコに快感を与えるためのトレーニング本が流行ったり、やたら女性側に努力を求める風潮があるよね。
池田:確かに…。「彼に愛される女性になれる」ことをテーマに作られた各種グッズも売れていますし。ああいうのって妙に高いんですよね。女性ってホント大変ですよ。彼をその気にさせる香水とかクリームとか、いろいろ買っちゃいますからね。
清田:ていうか、「オトコも頑張れよ!」って感じだよね……。
池田:もっと言ってください(笑)。ここからはまず、セックスレスになったときに、女性が抱える苦しみについて考えていきたいです。清田さんは恋バナを聞く中で、この手の相談もよく受けられますよね。
清田:うん、多いですね。
池田:女性側の苦悩ってどんなものがあるんでしょうか。
彼の性欲の行き場はどこへ…?
清田:一番多いのは、「なぜ彼はセックスしたくなったのか?」という疑問です。さっきの池田さんの意見のように「自分に女性としての魅力がないから(セックスレスになるの)?」という不安がその根底にあるような気がする。
池田:なるほど。確かに普段は仲良しでデートもするのに、セックスだけが欠けていると、単純に「私の身体に何か問題が?」「私としてもあまり気持ちよくない?」「ひとりでしたほうが気持ちいいの?」って思っちゃいます。
清田:まだまだ世の中的に、女性が自分の性欲を認めづらく、オープンにしづらいという風潮があるのも大きいよね……。
池田:最近は女性向け動画サイトなども認知されてきましたが、やっぱり堂々と「一徹さん(編集注:甘いマスクと言動で女性から高い支持を得る男優。シルクラボ作品に頻繁に登場)出演作品が大好きです!」とは言いにくいですもん。
清田:シルクラボさんの作品はオトコも女性と一緒に見るべきだと思う。めっちゃ優しいのよ、これが。あれを見れば、自分のセックス観を見直すきっかけになると思う。
池田:間違いないです。あれくらい優しくしないと。他にはどんな苦しみを抱えている女性が多いですか。
清田:セックスの頻度を愛情のバロメーターとして捉えているために、レスになると「愛されていないのでは……?」と不安に感じてしまう女性も少なくないです。
池田:それだけがすべてではないとわかってはいるものの、セックスがあるかないかは大きいですよね。
清田:「あの性欲は一体どこへ消えた……?」って。付き合った当初は会う度にしていたとすると、本当に解せないと思う。
池田:どんなときでも一定量の性欲があると考えると、レスになる=男性側の浮気を疑う女性もいそうです。
清田:当然疑うよねえ。あの性欲が別の人へ向かっているのでは……と悪い方向に考えてしまうことは大いにあり得るわけで。
池田:中には話し合って解決しようとするカップルもいますよね。ただし、以前セックスレス対処法についての取材をしたときに、産婦人科の先生からは大抵女性がひとりで相談に来ると聞きました。本来セックスレスはふたりで解決しなくてはどうしようもない問題なのに、男性側が一緒に来なかったり、そもそも来院を嫌がったりするんだとか。なんともツラい話だなと。
清田:そうなんだ……。実際に女性側が解決しようと試みても、オトコのほうが向き合うのが面倒だという理由で話を流したり、不機嫌な顔を見せたりと、話し合いに至らないケースも多いみたい。それって相当なストレスだよね。何ひとつ改善されないわけだから。
池田:セックスとか肌をあわせることで得られる気持ちよさは、自分ひとりでは満たせないですからね……。
ある意味、セックスは奇跡的なもの
清田:逆に、セックスレスの原因をオトコ視点から考えてみたいんだけど、最悪なパターンだと「飽きたから」っていう人は結構いる。まさに自分主体な考えで、それて単に相手の身体を使ってマスターベーションをしているようなものだと思うけど。セックスという行為の捉え方がとても貧しいよね……。
池田:ひとりの人と回数を重ねて、どんどん気持ちよくなっていくとか、新しいツボを発見するとか、そういった楽しみ方ができない人もいるんです。石田衣良さんの小説『sex』に「好きな人とたくさん」ってフレーズが出てくるんですが、ああいう考えの男性が増えればいいのになと思います。
清田:個人的には、セックスってある意味とんでもないことをしてるんだぞ、と言いたいです(笑)。だって、偶然出会ったふたりの男女がお互いに好印象を抱いて、いろんなハードルを越えてパートナーになって、それでセックスにいたるわけで。他の誰にも見せない部分をさらけ出して、見て、触れて……といろんなことをしているわけじゃないですか。よく考えると、これってすごいことだと思う。
池田:改めて行為そのものの内容を考えてみると、普通ではあり得ないことをしているのは確かですね。
清田:回数を重ねれば重ねるほど相手のことをわかってきたり、感覚がチューニングされていったり、相手の反応を深く感じられて嬉しかったりと、セックスを通してより豊かなコミュニケーションを楽しめるようになるものだと思うんだけど……。
池田:あうんの呼吸も出てきそうです。
清田:それなのに「入れる→動かす→射精」の3ステップでしかセックスを捉えていないオトコの多いことといったらもう……。これには他者(彼女)への興味の薄さも関係していると思う。自分が気持ちよければいいとか、とにかく自己都合メインになっちゃうんだよねえ。
池田:それはよくないパターン……。自分がセックスしたいときにできないと、「なんでダメなんだよ」って不機嫌になる人っていますよね。女性だってしたくないときや生理でセックスできないときはあるのに。
清田:そこで女性から「今日はダメ」って拒まれたのを機に、レスになってしまうオトコもいる。オトコにはプライドが高いヤツが多いので、一度断られるとそれ以降女性を誘うのが怖くなったりするんだよね。
池田:よく言われることですが、男の人って意外と繊細ですよね。ではそもそもどうすればセックスレスを防ぐことができるんでしょうか。女医さんにするような質問ですけど(笑)。
どうしてレスを解消したいのか、言えないとダメ
清田:僕なんかが答えるのも変な話だけど……(笑)。ただひとつ言えるのは、自然な形でセックスを続けていると、飽きが来てしまうのは仕方ないことだと思う。だからこそ、工夫というか、お互いの気持ちいいやり方を探っていくとか、違和感があれば勇気を出して話し合ってみるとか、そういう意識は持った方がいいのではないだろうか。
池田:もしその相手と結婚したいと思っているなら、今後長くつきまとう大問題ですもんね。
清田:知り合いに(セックスの)頻度についてふたりで話し合って、見事解決させた人もいる。
池田:思いを真摯に伝えれば相手もわかってくれると。
清田:その場合は、自分の要求だけを強く突き付ける感じではなく、「セックス=親密さのバロメーターだと思っているから、ちゃんと話し合いたい」みたいに伝えるといいかもしれない。
池田:それだと相手も「セックスしなきゃ許さない!」と責められているような気持ちにはならないですね。
清田:「なぜ(セックスを)したいのか」ということについても、話し合うときにちゃんと伝えるべきだと思う。ついでにいうと、もしもセックスのない結婚生活はあり得ないと思っているなら、「セックスのある生活にしていくか、別れるか」の二択をオトコに突きつけるしかない。
池田:いつもの究極の二択ですね(笑)。最終的には自分はどう考えるか、ですよね。
今月のまとめ
1.セックスレスの原因を自分に求めすぎない
2.互いのセックス観について話し合う
3.セックスレスを解決したい理由を伝える
清田氏が推薦! 今月読みたい本
『恋に効くSEXセラピー』は、シルクラボ専属の“エロメン”一徹さんによるセックスの哲学書。セックスは究極のコミュニケーションであることを教えてくれる一冊です! 産婦人科医・武谷雄二先生の『月経のはなし』は、生理のメカニズムや歴史をコンパクトに教えてくれる一冊。セックスレスの一因は女性の身体に関する男の無知にあると思うので、特に男は必読です!
▽ 清田隆之
1980年生まれ。恋バナ収集ユニット・桃山商事代表。『日経ウーマン』などで恋愛コラムを連載中。2月20日に桃山商事の初著書『二軍男子が恋バナはじめました。』が原書房より発売。Twitter(@momoyama_radio )