桃山商事・清田隆之+池田園子の恋バナサロン Vol.3 「結婚したい女、結婚したくない男――どうすれば彼は決断する?」

恋バナ収集ユニット・桃山商事の清田隆之氏とライター・池田園子が、毎回ひとつのお題を掘り下げる連載企画です。過去に400人以上の恋愛相談を受けてきた清田氏が、女子の悩みにやさしく(?)寄り添ってくれます。第3回目は「結婚したい女と結婚したくない男」をテーマにお届けします。

あまりおすすめはできないけれど、ほかのオトコの存在をチラつかせるのも、最終手段としてはアリだと思う。(清田)

「30代後半でも普通に子ども産めるでしょ」と間違った捉え方をしている男性も少なくないと思うんです…。(池田)


最新刊『二軍男子が恋バナはじめました。』を持って微笑む清田隆之氏(恋バナ収集ユニット・桃山商事)

落ち着くのはダサい? 男女で大きく異なる結婚の価値観

池田:今回は鉄板ネタですが「結婚」をテーマに語りたいと思います。とにかくよく耳にするのが「私は結婚したいのに、彼には結婚する気がさらさらない」というお悩みで。

清田:確かに桃山商事でも、そういう相談を受けることはすごく多いんですよ。20代中盤~後半くらいの女子で、「4~5年付き合っている彼が一向に(結婚に向けて)アクションを起こさない」とか……。

池田:もはや“あるある”ですね。イラッとするのが「俺の仕事が落ち着いたら」とか「今は仕事が忙しくて」みたいな言い訳。働き続ける限り、仕事が一段落することなんてないでしょう(笑)。

清田:「なんでアンタの仕事に合わせなきゃいけないの!?」って話だよね。女子だって同じように働いてるのにね。

池田:ホントに。

清田:そもそも結婚に対する意識って、男女間でかなり温度差があると思うんですよ。女性は願望の有無に限らず、アラサー世代になると妊娠への「リミット意識」を抱くようになると聞く。一方のオトコにはそういう意識が全然ないし、女性が味わっているプレッシャーや焦燥感に対し、ほとんど理解していないというのがすれ違いの大きな原因になっているような気がします。これは男子として、激しく自戒を込めてなんだけど……。

池田:今、有名人の高齢出産が増えているじゃないですか? 30代半ば前後で妊娠・出産する人も多いですが、ああいう報道を見て「30代後半でも普通に子ども産めるでしょ」と間違った捉え方をしている男性も少なくないと思うんです……。有名人は最新設備が整った病院に通院しているでしょうし、そもそも妊娠・出産準備にかけられるお金の規模も違います。メディアが報道する高齢出産の事例を真に受けないでほしいです

清田:どうもオトコには、「情報を自分に都合のいいように解釈できる便利な脳」というのが備わっているようで……。これはホント、絶対に直した方がいいところだと思うのだけど。

池田:困りますね。結婚したがらない男の人って、結婚そのものに価値を感じていないんでしょうか。

清田:何というか、オトコの世界には「結婚して落ち着くのはカッコ悪い」というような妙な価値観が根深く存在しているような気がするんですよ。それが積極的に結婚したがらない原因のひとつになっているような気がする。

池田:なるほど……。彼女がいるとリア充扱いされるのに、奥さんがいるとリア充扱いされないんですね。その違いが理解しづらいです。

清田:たとえば飲み会なんかで、既婚男性が「嫁が怒るから早く帰らなきゃ」「子どもの世話があるから……」とか言って早く抜けてしまうことがありますよね? 別に何ら悪いことじゃないんだけど、オトコ同士の間だと、「そういうことを言うのはダサい」という感じに何となくなってしまう。結婚したがらない男性の心理には、そういう圧力への恐怖も少なからず影響を与えているんじゃないかなと。

池田:女子からすると、奥さんの尻に敷かれているかどうかは別として、「愛妻家だな」とか「イクメンだな」とか、プラスの要素に感じますけどね……。男女で捉え方が違うんですね。

「私と結婚する未来」「私と別れる未来」の二択で選ばせる

清田:桃山商事でもリサーチのため、結婚したがらない男子たちに取材をしたことがあるんだけど、彼らに共通して見られたのが、結婚を「自由やお金を奪うもの」と捉えている点で。自由を欲したり、自分の好きなことを追い求めたりというのは、別に何も変なことじゃないと思うけど、彼らは「結婚によってそれが奪われちゃう」と発想する。それが嫌だから結婚に対して積極的になれないと言うわけ。

池田:結婚をメリット/デメリットで考える人がいますけど、それとも関係していますか。

清田:とくに金銭的なデメリットを考えるようなタイプは、結婚するか否かの選択権が自分側にあると思ってて、しかもそこそこお金を持っている人なんだろうね。

池田:確かに。お金がない男性にとっては、そこそこ稼ぐ女性と結婚すると、世帯収入が増えて安心感を得られるというメリットのほうが大きいはず。

清田:ほかにも、「仕事が楽しくなってきたから、30代後半までは独身のままでいたい」とか、「もっといい女性と出会えるかもしれないと思うと、結婚の決断はしづらい」とか、そういう男性の声もあった。「チャンスを失う」みたいなデメリットに捉えているのかもしれない。

池田:それって、自分中心な思考から生まれるデメリットですよね。

清田:ホントだよね……。残念ながらそういうオトコは、「結婚することによって、夫婦ふたりで協力して~できるようになる」というような、結婚のいい側面についてなかなか想像できないんだと思う。

池田:そもそも「メリットがあるからコイツと結婚したい」「デメリットがあるからコイツとの結婚はない」とか思ってほしくないですけど(笑)。

清田:しかし、そんな余裕をかましてる彼らにも、焦り始めるときは来ると思う。

池田:それはいつですか?

清田:たとえば、よくつるんでいる同期や男友達がみんな結婚したら、「俺もそろそろかな……」と慌てるかもって話を聞いたことがある。身近なオトコの価値観に影響って、案外大きいみたい。

池田:遊べる人が減るわけですもんね。他にも、男子たちに結婚を決意させる方法ってありますか?

清田:オトコというのは変化を怖がる生き物で、「現状維持」というものが大好物なのよ。だから、決定的な選択をしないままズルズルつき合おうとしたりする。それを防ぐには、とにかく選択肢を具体的に突きつけるしかない。たとえば、「このまま付き合い続ける気はありません。私と結婚する未来か、私と別れる未来、どちらか選んでください」というように。これは女子側にも覚悟が求められる方法だとは思うけど……オトコはそこで、自分にとって変化の小さい選択肢を選ぶ確率が高い。もしもそこで別れを選ぶようなオトコなら、そもそも結婚する気なんて1mmもなかったような気がします。

「結婚は楽しい」と感じさせる体験を提供しよう

池田:ネットの恋愛コラムなどでは、結婚を意識させるために『ゼクシィ』を彼の目の届くところに置こうとか、友達の結婚式に参加した話をしようだとか、やや回りくどい方法が紹介されていますが、それよりも直接ビシッと言うほうが効果があるんですね。

清田:何気なく置かれた『ゼクシィ』を手にとって、「俺もそろそろ覚悟決めっか!」とか考えてくれればいいんだけどね(笑)。現実には、「うわっ、これって追い込まれている!?」みたいに感じて身を固くするオトコの方が多いような気がする……。それよりかは、結婚する気があるのか否かをハッキリ聞いて、変化を突きつけたほうがいいと思われます。

池田:なるほど。ほかにも男の人が気にしていそうなのが、結婚後のお金の不安ですよね。これについても説明してあげたほうがよいのでしょうか。

清田:確かに、そこは大きな懸念材料だと思う。「マンションのローンとか払えんのかな?」「子どもの教育費とかどのくらいかかるの!?」とか、未来の支出に漠然とした不安を抱え、結婚に踏み出せないって人も多いと思う。そういう部分に関しても、「こういう場合はいくらぐらいかかる。二人の収入を合わせれば何とかなる」みたいに、具体的に計算していった方が不安も解消されるような気がする。

池田:子持ちの友人夫婦と会うのも効果がありそうですね。

清田:そうだね。「結婚には楽しいこともたくさんあるぞ」ってことを、具体的に実感させるのもありだと思う。子どもを抱っこしたり、遊んであげたりすると「子どもっていいかも!」「俺でも育てられるかも!」みたいな気持ちが芽生えてくるかもしれない。結婚は怖くないし、楽しいことだと理解させることができたら、結婚への意識も高まるんじゃないかな。

池田:体験させることが大事なんですね。子どもみたい(笑)。最後に「強硬手段」があれば教えてください。男の人の目が覚めるような、パンチの効いた方法がいいです。

清田:あまりオススメはできないけど……「ほかのオトコの存在をチラつかせる」ってのも、最終手段としてはアリだと思う。「xxで出会った男性から『結婚を前提に付き合おう』と言われたの。私は子どもが欲しいから、結婚までにタイムリミットがある。あなたに結婚の意思がないなら、別れてその人と結婚して子どもを産みたいと思う」みたいな感じで、バシッと言ってみるとか。たとえ、そんな男性がいなくても……。

池田:女優並みの演技力を要する荒業ですね(笑)。男の人としては強烈なボディブローをくらった感じでしょうね。

清田:もっとも、それで成功したとしても、嘘をついた事実を一生引きずることになるので、リスクは大きい。まあ、「飲み会で誘われた」みたいな話があれば、それを100倍くらい盛って話しちゃうのはアリだと思うけど(笑)。

池田:悩んでいる友人に伝えておきます!

今月のまとめ

1.結婚に対する「リミット意識」は男女で異なる
2.決断してほしいなら「変化の二択」を提示する
3.漠然とした未来の不安を具体的に解消してあげる

清田氏が推薦! 今月読みたい本

結婚を決断しない彼氏とダラダラ続く同棲生活を描いた綿矢りさの小説『しょうがの味は熱い』は、女子の共感が高そうな一冊。益田ミリの名著『結婚しなくていいですか。』を読めば、「結婚に対する焦り」を相対化できるかも!?

清田隆之
1980年生まれ。恋バナ収集ユニット・桃山商事代表。『日経ウーマン』などで恋愛コラムを連載中。2月20日に桃山商事の初著書『二軍男子が恋バナはじめました。』が原書房より発売。Twitter(@momoyama_radio

2014.03.14

  • Twitterでシェア
  • f Facebookでシェア
  • B!はてなブックマーク

記事を書いたのはこの人

Avatar photo

Written by 池田 園子(いけだ そのこ)

岡山県出身。中央大学法学部卒業後、楽天、リアルワールドを経てフリー編集者/ライターに。関心のあるテーマは女性の生き方や働き方、性、日本の家族制度など。結婚・離婚を一度経験。11月14日に『はたらく人の結婚しない生き方』を発売。 写真撮影ご協力:青山エリュシオンハウス 撮影者:福谷 真理子