桃山商事・清田隆之+池田園子の恋バナサロン Vol.2 「彼女に興味を持たない男、彼と会話したい女――どうすればふたりの溝は埋まる?」

恋バナ収集ユニット・桃山商事の清田隆之氏とライター・池田園子が、毎回ひとつのお題を掘り下げる連載企画です。過去に400人以上の恋愛相談を受けてきた清田氏が、女子の悩みにやさしく(?)寄り添ってくれます。第2回目は「カップル間のコミュニケーション」をテーマにお届けします。

「彼女がそこにいることは“あたりまえ”ではなく、いてくれることのほうが奇跡的だ」と自覚したほうが、楽しく過ごせるのに。(清田)

恋人からある種の「家族的な扱い」を受けるようになると、恋人として大事に思われている感がないですよね。(池田)


彼とのコミュニケーションに欲求不満をおぼえる女子

池田:前回は「恋愛の仕方を忘れた女子」についてお話しましたけど、恋愛中の女子もそれなりに悩みを持っていますよね。たとえば「彼が話を聞いてくれない」みたいなコミュニケーション系は、よく耳にする愚痴ですけど。

清田:そういう話ってホントに多いよね……。「釣った魚にエサはやらない」じゃないけど、口説くまではすごく頑張ってたはずのオトコが、付き合い始めるとコミュニケーション全般に関して怠慢になるって話は、もう古典かってくらいよく聞きます。

池田:まさに「相手の話を聞かない」とかですよね。

メモしながら話を整理する清田隆之氏(恋バナ収集ユニット・桃山商事)

清田:恋人とのコミュニケーションに関して、不満を感じている女子は多いと感じる。自分が何か言葉を発して、相手からコメントが返ってきて、それを受けてまた言葉を返して……ってのが普通の会話だと思うんだけど、そのあたりまえのような会話が彼氏との間で成り立たないと悩む女子は少なくない。互いの言葉を受け止め合う行為って、本来なら気持ちよくて幸せな時間なのだと思うけど……。

池田:こちらが真剣に話してるのに男の人から「ふーん。それでさー」「なるほどね。で、あの話なんだけど」って、話をスルーされたことはあります(苦笑)。男友達なら「コイツ適当なヤツだなー」「もういいわ」で済みますが、恋人という密な関係性の相手にそんな対応をされ続けると、そのまま付き合い続けるのはイヤですね。

清田:思うに、「会話を楽しむ」という習慣が身についていないオトコも少なくないような気がする。そもそも「会話」というものの捉え方が割と男女で異なっているのではないかと感じます。

池田:なるほど。男性の話って、キャッチボールじゃなく、一方的にボールを投げるというか、「ねぇねぇ、俺の話聞いてよ」的な傾向は感じます。

清田:相手から好かれるためには、自分が面白い話をしなきゃって考える男の人は多いと思うんだけど、それよりも「まず相手の話を聞けよ!」って感じだよねえ。「今日ランチに何食べた?」とか「仕事どうだった?」とか、相手に関心を持っていれば、いろんな質問が出てくるはずなんだけど……。

池田:質問されると、自分に興味を持ってくれているなぁ、と素直に喜べますよね。

彼女に興味を持てないオトコたち

清田:でも、彼女に対して興味を持とうとしないというか、興味の持ち方がわからないオトコもいるみたいなんだよね。

池田:それは大変(笑)。好きで付き合ってるんでしょ、と聞きたくなります……。

清田:たとえば、彼女を自分の男友達には会わせるのに、彼女の友達にはまったく会おうとしないオトコ。「俺の友達いいヤツでしょ。オマエもメアドとか交換しときなよ」みたいなことを言うくせに、彼女の友達には興味も示さない。なんだそれ、って感じだけど(笑)。

池田:ひえ~(笑)。一方的……。友達ぐるみで付き合いたいのかな、と思いきやそうでもなさそう。

清田:彼女の友達に会おうとしないのは、値踏みされたり、そこで面白いことを言わなきゃというプレッシャーに苛まれたり、元カレと比べられるのが怖かったり、自分の知らない彼女の顔を見るのが不安だったり……と、ほかにもいろんな理由があるんだと思う。

池田:えっ。でも、彼女だって同じことをされてるわけですよね。男友達に値踏みされたり、元カノと比べられたりしてるわけですよ。不公平感が漂ってます。

清田:だよねぇ。まぁ、僕もオトコなので、自分のことを棚に上げてる感が否めないのですが……(笑)。

池田:恋人とのコミュニケーションに悩みを抱えている場合って、どうすれば解決できるんでしょうか。って、清田さん心理学者じゃないか(笑)。

清田:一介の恋バナ収集業者なので、専門的なことはわからないのですが……やはり、「自分がどうしたいのか」ということをまず把握しないことには始まりませんよね。別れたくないなら上手くやっていく方法を見つけるしかないし、別れたいなら決断するしかない。桃山商事では、そうやって話を進めていくことが多いですね。

池田:清田さんの感覚的には、彼との関係を継続していきたい人と別れたい人、どちらが多いですか?

清田:話し終わったあと、「彼とひとまず話し合ってみます」という人が多いです。でも、ほとんどの女子は彼氏と話し合いをしたとしても、彼氏に変わろうとする気がないと気づいて絶望している。たとえば、デートの待ち合わせに遅刻してくるのも、注意すると1回は直ったとしても、また元に戻っちゃったりとか……。

池田:いるいる、そういう人。

清田:ほかにも、将来結婚する意思があるなら、お金のことを考えたり、互いの親族とコミュニケーションを図ったりと、いろいろ具体的にしていくことは多いじゃないですか。そういうことを現実的に考えている女性に対して、「まだいいじゃん」みたいに面倒くさがるオトコは多い。「今は仕事が忙しいから一段落したら考える」とか「今年いっぱいは仕事を頑張る」とか、現状維持するための理由を並べ立て、彼女から提示される変化をのらりくらりと交わして、先延ばしにしようとするわけですよね……。

池田:いろんなことをリスケされ続けてると、彼女も嫌気が差しちゃいそうですけどね。

清田:彼女自身は現状に不満を感じている。一方で、彼の希望は「現状維持」なわけで、実は思惑が対立してしまっている。だから、オトコのほうは彼女が不満を語り始めると、「怒りをなだめよう」「その場を丸く収めよう」という発想で対応する。そこにすれ違いの原因があるような気がします。

池田:「まぁまぁまぁ……落ち着いて考えようぜ!」みたいな人、確かに多いですね(笑)。

関係性にメンテナンスを求める女性、メンテナンスの必要性に気づかない男性

清田:恋人同士の話し合いって、1~2時間くらいいろいろ話したあと、「これからがんばっていこう」みたいに、ふわっとした結論で終わることが結構あるじゃないですか。彼女はこれを「これから少しずつ変えていこう」って意味で捉えるけど、オトコは「解決した!」「嵐が去った!」みたいな感じで捉える。依然として問題は背景に横たわり続けてて、何ら解決してないわけだけど……。だから女子としては、「こんなに話し合ったのに解決していない」と絶望してしまうんだと思う。事実、相談者にはそういう女性が多いです。

池田:何度か話し合いの場を設けてみたものの、それでも彼が変わらないと、相談に来る女子が多いんですね。

清田:これは個人的な考えだけど、オトコって「付き合うという関係性」が一度取り結ばれたら、それが永続していくと捉えているような気がする。彼女のことをお母さんみたいに「ずっとそこにいてくれる人」だと思ってるのよ、おそらく。一方の女性は、「ふたりの関係性はメンテナンスを続いていくことで継続するもの」と捉えている。ここで言うメンテナンスとは、問題が起きる起きないにかかわらず、情報共有したり愛情表現をしたり、デートのような非日常を取り入れたりするというもの。女性が付き合っている最中に「私のこと好き?」って聞く傾向があるのも、ふたりの関係性をリアルタイムで確かめるためなんだと思う。でも、オトコって「付き合ってるってことは、オマエのこと好きってことに決まってるでしょ?」みたいなことをよく言うでしょ? 男女間には、そういうギャップもあるような気がする。

池田:そもそも「関係性をメンテナンスする」という発想を持たない男性が多いんでしょうね。メンテナンスはマメさの現れだと思います。だからメンテナンスできる人はモテますよね。メールしたり、電話したり、サプライズしたり。でもそういう人は浮気しがち、とも言われます。

清田:マメな人はもちろん素晴らしいと思うけど、目的次第ってところはあるよねえ。だって、セックス目的でマメに連絡する人は多いけど、それってどうなのって話じゃない(笑)。目の前にいる彼女と上手くやっていくために、そのスキルを使えよって話なんだけどね……。

池田:メンテナンスの心を持ってなくて浮気しない人と、メンテナンスの心を持ってて浮気する人どっちがいいんでしょうね。これはちょっと極端か(笑)。でも、全然メンテナンスされなくなったら、別れたいと思いますね。

清田:そうでしょう。でも、メンテナンスはしないけど、彼女が自分の元から去っていくかもという発想もないので、別れを突きつけられると、オトコは突然焦りだす。いきなり「オマエがいないとダメだ」とか言い出して、全身全霊で引き止めにかかるんだよね(笑)。

池田:その瞬間は「マズいことになってもーた」と必死。

清田:それから3週間くらいはきちんとするけれど、結局は元に戻っちゃって、ついには切られるという展開、よくあるもんねえ。「彼女がそこにいることは“あたりまえ”ではなく、いてくれることのほうが奇跡的だ」と自覚したほうが楽しく過ごせると思うのですが……。だって、恋愛ってそもそも理不尽なものじゃないですか。仕事なら契約不履行に対し、何らかの救済措置もあるけど、恋愛には一切ない。一度見切られたら終わり。恋愛は簡単に切れちゃう糸なんだと思う……。

池田:重みがある言葉……。恋人からある種の「家族的な扱い」を受けるようになると、恋人として大事に思われている感がないですよね。「オマエは家族みたいなものだからさ」って何、まだ結婚してないし、みたいな。

清田:それは男の屁理屈だよねえ。そもそも、自分がどう考えているかじゃなく、相手がどう感じているかが問題なのに。自分は大事にしているつもりでも、相手がそう感じていなかったら、結局は相手を大事にしてないってことだからね。相手がどういうメンテナンスを求めてるか、オトコは注意深く察知していった方がいいと思われます。

池田:でも男性は結構鈍感。女子はどうすればいいんでしょう?

清田:ちょっと甘やかしすぎのような気もするけど、とにかく何ごともハッキリ言葉で伝えるべきだと思う。オトコって、女子と比べてコミュニケーション能力が格段に低い生き物だと思うので……。「彼が察してくれない」とか「わかってくれない」という悩みは多いけど、そんな高度なコミュニケーション能力、男には備わっていないと思う。だから、とにかくハッキリ伝るべきだと思います。

池田:なるほど……。

清田:自分の意見や要望を伝えたうえで、「それが達成されないならあなたとは一緒にいられない」とハッキリ伝えたほうがいい。男は現状維持を望むと思うけど、「私と一緒に変化していく未来」と「私が存在しない未来」のどっちを選ぶのかと、変化の二者択一を迫ったほうがいいと思う。

池田:男の人にのんびりとした性質があるというのは、実際に言われていることでもあるし、もう仕方ないことなんでしょうか(笑)。コミュニケーション能力が女性と比べると低いから、ある程度は女の子も動かないといけないのかな、と。

清田:本来なら男が気づくべき問題だと思うのだけど……。いまの感じだと、だらしない男の子がお母さんから「あらあら、こぼれてるわよ」みたいに甘やかされて育つみたいな感じになっちゃうもんねえ。

池田:女子がどこまで手をかければ、ある程度察してくれる人間に成長するんでしょうか。また壮大な話になっちゃってますが。

清田:こればっかりは、自分も自戒を激しく込めて考え続けていきたいと思います。例えば、もしも日本の女子が我々男子に見切りをつけ、全員外国人と結婚するような事態にでもなったら、さすがに「このままじゃダメだ!」って焦り出すとは思うけど……どうなんだろう。

池田:とにかく、まずは思いを伝えることからですかね!

今月のまとめ

1.男には「恋愛関係をメンテナンスする」という発想が薄い
2.ケンカが収まると、男は「嵐が去った!」と捉える
3.相手に対する要望や不満は溜め込まず、言葉でハッキリ伝える

清田氏が推薦! 今月読みたい本

「協力すること」のメカニズムは心理的過程を解説した『ヒトはなぜ協力するのか』は、読むと優しい気持ちになれる一冊。気鋭の哲学者・國分功一郎が様々な悩みに答える『哲学の先生と人生の話をしよう』には、悩みごとを整理するために役立つ言葉が満載!

清田隆之
1980年生まれ。恋バナ収集ユニット・桃山商事代表。『日経ウーマン』などで恋愛コラムを連載中。2月20日に桃山商事の初著書『二軍男子が恋バナはじめました。』が原書房より発売。Twitter(@momoyama_radio

『二軍男子が恋バナはじめました。』(原書房/1200円+税)

2014.02.06

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記事を書いたのはこの人

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Written by 池田 園子(いけだ そのこ)

岡山県出身。中央大学法学部卒業後、楽天、リアルワールドを経てフリー編集者/ライターに。関心のあるテーマは女性の生き方や働き方、性、日本の家族制度など。結婚・離婚を一度経験。11月14日に『はたらく人の結婚しない生き方』を発売。 写真撮影ご協力:青山エリュシオンハウス 撮影者:福谷 真理子