「“ご自愛タイム”は欠かせない」ひとり時間の過ごし方

なんとなく「デート」とはこういうもの、と思い込みがある人も少なくないと思います。例えば、仕事終わりに飲みに行く、休日にランチする、映画を見に行く、などなど。
それとはひと味違うデートを提案する「すべてのデートに祝福を」という連載を目にしました。書き手は編集者の藤田華子さん。特に「いいなあ」と惹きつけられたのは、デートでごちそうしてもらったお礼として、ワンコイン程度で買える文庫本を贈るアイデア。相手との会話を思い出し「あの人にはどんな本が合うだろう?」と考えながら選ぶ本は、心のこもった贈り物になるなと思いました。
その後も連載を追いかけていると、著者の藤田さんはいつも傍らに本をお持ちで、豊かな心で生きる人だなと感じたのです。いったいこの方はどんなひとり時間を過ごしているんだろうか。気になって取材を申し込み、ひとり時間の過ごし方を伺うことになりました。


サウナの独特な空間が好き

「ひとり時間の過ごし方……」。数秒間、静かに考え込んだ藤田さん。最初に出てきたのは銭湯の話でした。なんと温泉ソムリエの資格を持つくらいのお風呂好き。

「銭湯はよく行きます。湯気が立ちこめる清潔なお風呂で、いろんな年齢の方が気持ちよさそうに過ごされている様子にテンションが上がるんです(笑)。サウナー(サウナ好きな人)にもタイプがあって、瞑想目的でひとり静かに過ごす方もいれば、常連さん同士で何気ないお喋りを楽しむ方もいます。私は後者のほうが好きかな」

とりとめのない話やサウナや銭湯に関する情報交換をすることが多いけれど、時に思いがけないヘビーな打ち明け話をされることもあるそう。初対面で、今日この日、たった一度会話するだけかもしれない。そんな一期一会の関係だからこそ、特別なコミュニケーションが生まれるのかもしれません。

ひとり時間でご自愛する

藤田さんはひとり時間を「ご自愛」タイムに充てることがあるといいます。確かに、自分を甘やかしたいと思うときはあります。

「自愛する目的で、食べてみたかったおいしいものをひとりで食べに行くこともあります。ひとりグルメといえば、“ひとりコース料理”もやったことがあります」

きっかけは2年ほど前のクリスマス。デート中、カウンター席でコース料理を堪能する大人の女性を目にしたこと。その女性はひとりだったといいます。

「料理を丁寧に味わっていて、ひとりでいる様子も堂々としていて、ああ素敵だなと思いました。彼女の姿が頭にあってチャレンジしてみたら、意外とハードルは高くなかったです」

「コース料理=2名から」のイメージがあるかもしれませんが、藤田さんの経験上、カウンター席がある店だと1名からでもコース料理を提供してくれる傾向があるそうです。

自宅では読書とベリーダンスのレッスン

幼い頃に親が夜遅くまで働いていて、夜はおばあちゃんと子どもだけで過ごすことが多かったと振り返る藤田さん。お母さんは子どもたちに本を与え、クリスマスや誕生日などのプレゼントも決まって本でした。

「それもあって本は大好きで、自宅でひとり時間を過ごすときは自分が気持ちいいと感じる肌触りのリネンにくるまり、化石みたいになって本や漫画を読んでいます」

神保町と経堂の古書店が主な仕入れ先。ひとりでお気に入りの店を複数巡って、決めた予算内で思う存分に本を買うのだとか。

「おうちひとり時間」は、文学少女的な過ごし方だけではありません。4年にわたってベリーダンスを習っている藤田さんは、自宅で踊りの自主練をすることも。

「意思に従って鍛えられるのはボディだ!」と気づいて始めたベリーダンス。周りの女性と自分とを比べて落ち込むこともあったそうですが、ダンスを始めてから徐々に自分の体を認められるようになったと話します。

「『○月○日にここで踊る』とダンスを披露する日時が決まったら、それに向けて練習あるのみ。目標があるとがんばれます」

ひとり旅をコンテンツ化するアイデア

ひとり旅も大好きだという藤田さん。でも「あえて、誰にも言わずに旅に出る」のが特徴的。理由は「みんなに心配されるから。ありがたいけど、心配をかけたくない(笑)」。基本的には海のあるところで、自由気ままに過ごしています。

「江ノ島や館山の少し物寂しい味わいの旅館が好きです。例えば、ふすまに鍵がついてないとか、年季の入った古い畳とか、せんべい布団とか(笑)。自分に似合っていると思うんですよね。不釣り合いなところに行くと逆に落ち着きません」

ひとり旅に慣れていないけれど挑戦してみたい人に向けては、「ひとりになったときにソワソワしないで済むようなものを持っていっては?」と提案が。本や漫画、動画配信サービスで映画を見るためのタブレットなどが、慣れないひとり時間を埋めてくれるはずです。

「ひとり旅をコンテンツにする旅も、手持ち無沙汰にならないのでは? 旅の写真を撮ったり文章を書いたりすればいいのかなと。明確な“やること”がある状態にしてみるのがおすすめです」

ふたり暮らしでもひとり時間は「聖域」

今年再婚した藤田さん。ふたりで暮らしていても、ひとりの時間は「聖域」として大事にしているそう。旦那さんは「僕は結婚を“ふたりのもの”ではなく、“ひとりの結婚生活がふたつあるもの”だと思っている」と話すような人。ふたりの時間も楽しみながら、それぞれ自分のペースで楽しむ時間も大事にしているといいます。
また数年後、ライフイベントを重ねた頃に「今はどんなひとり時間を楽しんでいますか?」とお話を聞いてみたい気持ちになりました。

「女性のひとり時間」にフォーカスして、素敵な女性がひとり時間をどう過ごしているか取材したり、ひとりを楽しめるコンテンツやスポットを紹介したり、ひとり旅について取り上げたりする本連載【女ひとり上手】。次回の第10回目では、ひとり時間を過ごすのにおすすめな都内の喫茶店・カフェをご紹介します。どうぞお楽しみに。

△ 藤田華子(ふじた・はなこ)
編集者。本と将棋、サウナと生き物が好き。ベリーダンサー歴は4年。『DRESS』で連載「すべてのデートに祝福を」を持つ。 RIDE MEDIA&DESIGN所属。Twitter(@haconiwa_ohana)でも情報発信中。

▽ 前回の記事はコチラ

2020.01.15

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記事を書いたのはこの人

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Written by 池田 園子(いけだ そのこ)

岡山県出身。中央大学法学部卒業後、楽天、リアルワールドを経てフリー編集者/ライターに。関心のあるテーマは女性の生き方や働き方、性、日本の家族制度など。結婚・離婚を一度経験。11月14日に『はたらく人の結婚しない生き方』を発売。 写真撮影ご協力:青山エリュシオンハウス 撮影者:福谷 真理子