『おひとりさま専用Walker』編集者が思う“ひとり時間”について

2017年に発売され、ネット上で瞬く間に話題となったムック本『おひとりさま専用Walker』(KADOKAWA)。
デートや家族とのおでかけ情報が満載のおでかけ情報誌『東京ウォーカー』がおひとりさま向けムックを発売したことは、世間で驚きと関心を集めました。

『おひとりさま専用Walker』を企画したのは、『東京ウォーカー』編集部の中村茉依さん。3年前、同編集部へ異動となり、より多忙になったのを機に、ひとりで過ごす時間が増えたといいます。

「友人や恋人と過ごす時間も好きですが、雑誌編集者という職業柄、学生時代からの友人と休みが合いづらくなったんです。先の予定も立てづらくなってしまって。
そのぶん、ひとりで楽しめる何かを見つけたいと思い、ひとり時間の過ごし方を模索するようになりました」

そんな生活が後々、『おひとりさま専用Walker』発案に結びつき、おひとりさま専用情報誌としてヒットを飛ばすことに。誰かと過ごす時間も大事にしていますが「ひとり上手」でもある中村さんに、ひとり時間の過ごし方を聞きました。

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ひとり時間を大事にしたら、人との時間もさらに素敵なものに

以前は誰かと過ごすことが多かった中村さん。その間もひとりで映画やカラオケ、ラーメン屋に行くことはあったといいます。ひとりで過ごす時間ができてからは、以前であれば「ひとりでは行かなかった場所」へも単独で行くようになります。

「最初に試みたのは“ひとり焼肉”です。『今夜は焼肉がいいな』と思っても、さすがに当日だと友達は誘えない。恋人がいたら誘いやすいけど、いない時期だと、ひとりで行くしかないなと思ったんです。
でも、はじめの頃は『あの人、ひとりで焼肉屋に来てるよ』と周りは思ってるよね……みたいな居心地の悪さや気まずさを感じていました」

△ 焼肉ライクは引き出しの中におしぼりや箸があって、店員さんを呼ぶ必要がなく、お肉ととことん向き合えます。

そんなむず痒さのような感覚は、『おひとりさま専用Walker』刊行が決まり取材を重ねるうちに消えていきました。飲食店側は「おひとりさまが来てくれると、カウンター席が埋まってうれしい」など、ひとり客をポジティブに捉えている実態があると知ったから。
それからは、女子会で使うようなおしゃれなイタリアンや洋食店などにも、「あそこでごはんを食べたい」と思い立ったときはひとりで行くように。そのときどきの自分の気持ちにブレーキをかけることなく、行動できるようになったと話します。

△ カレーのお店で、カウンター席のおひとりさま限定で注文できるメニューです。

「この作品を見たいからひとりで映画館に行く、ということはありますよね。そういう素直な気持ちが大事だなと感じました。
でも、たまには人と一緒に映画に行って、感想を言い合うのも楽しいですよね。ひとりの時間を大事にするようになってから、誰かと過ごすときの幸せをより感じられるようになりました」

ひとり外食に挑戦したい人は「専門店」で慣れるのがおすすめ

ひとりグルメ活動や取材でさまざまな飲食店を開拓している中村さんに、「飲食店でひとり時間を居心地良く過ごすコツは?」と尋ねたところ、こんな回答が返ってきました。

・角にある席を選ぶ
・入口が引き戸のお店を選ぶ(押すタイプの扉だとなかなか引き返せない)
・周りを落ち着きなく見回さない
・自分の時間を楽しむ(店員さんとは積極的に話さず、話しかけられた際は対応する)
・メニューに迷ったら「おすすめ」を出してもらう

ひとりで外食してみたいけれど、なかなか勇気が出ない人には「まずは、ひとり○○専門店に行ってみるのはどうでしょう? たとえば、ひとり焼肉ならひとり1台の無煙ロースターが用意された『焼肉ライク』みたいなお店もあります。(先ほどのお写真です)みんなひとりで来ているから人目も気にならないはず」と教えてくれました。

△『おひとりさま専用Walker』の取材で初めてひとりディズニーを経験してから、一気にハードルが下がりました! 待ち時間が短縮できて、好きに休憩もできるので(笑)。一度は体験してほしい!

「ひとり○○専門店に慣れたら、ひとりラーメンやひとり居酒屋など、少しずつステップを踏んでいくといいと思います」とも話します。
ひとりグルメが自然とできるようになったら、「ひとりディズニー」などのアクティブ系にチャレンジするのも◎。中村さんも仕事帰りやふと時間ができた週末などに楽しんでいるそう。

『おひとりさま専用Walker』に込めた思い

12月2日には2020年版『おひとりさま専用Walker2020』が発売に。2018年版となる第一弾の刊行なくしては実現しなかったことです。しかし、企画を通すのは簡単なことではありませんでした。

「社内では『読者の気持ちを傷つけてしまうのでは?』といった保守的な反応がある一方、熱烈に推してくれる上層部もいました。私自身は本気で『自分がおひとりさまだからこそ、わかる! 欲しい!』と思って作った本でしたが『ヒットは間違いない!』という自信はなかったです。
ただ、おひとりさまというとネガティブなイメージもあったので、それが少しでもポジティブになればいいなという思いは込めましたね」

△ ラジオ出演中の中村さん

ふたを開けてみると、SNSには「自分のための本が出た!」とひとり時間を過ごすのが好きな人たちから歓喜の声が多くあがり、Yahoo!でトレンド入りし、朝の情報番組やWebメディアから取材の問い合わせが殺到。
おひとりさま専用情報誌を生み出した女性編集者として、全国に顔と名前が知られることになったのでした。

△ 『おひとりさま専用Walker2020』

「求婚の問い合わせはまだ来てないですけどね(笑)」と冗談で場を和ませる中村さん。現在パートナーはいないそうですが、仕事に誇りを持っていて、ひとり時間もふたり時間も大事にするタイプのパートナーがいたら楽しいだろうな、と話します。

「ひとり時間を充実させるようになってから、相手の時間を尊重できるようになった感覚があります。昔は恋人から『自分の時間が欲しい』と言われても、『私と過ごしたくないの?』と否定的に捉えてしまっていました。
でも、今は相手の時間の大事さもわかるようになりました。ひとり時間を通して自分と向き合うことで、心に余裕ができて優しい気持ちになれるようにも思います」

中村さんのお話を聞いて、ひとり時間の過ごし方が人生をより豊かに、彩りあふれるものにしてくれるのだなと感じました。
「女性のひとり時間」にフォーカスして、素敵な女性がひとり時間をどう過ごしているか取材したり、ひとりを楽しめるコンテンツやスポットを紹介したり、ひとり旅について取り上げたりする本連載【女ひとり上手】。次回の第9回目でも、ひとり時間を素敵に過ごしている方をご紹介します。どうぞお楽しみに。

中村茉依(なかむら・まい)
株式会社KADOKAWAに所属する編集者。『東京ウォーカー』編集部員。おひとりさま専用情報誌『おひとりさま専用Walker』を企画・編集し担当をしている。Twitter( @krkrmai2 )でも情報発信中。

▽ 前回の記事はコチラ

2019.12.03

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記事を書いたのはこの人

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Written by 池田 園子(いけだ そのこ)

岡山県出身。中央大学法学部卒業後、楽天、リアルワールドを経てフリー編集者/ライターに。関心のあるテーマは女性の生き方や働き方、性、日本の家族制度など。結婚・離婚を一度経験。11月14日に『はたらく人の結婚しない生き方』を発売。 写真撮影ご協力:青山エリュシオンハウス 撮影者:福谷 真理子