わたしらしい起業のかたち Vol.20 占い師 山下真輝さん ~できないことは誰かと助け合い補っていけばいい~
編集者/ライターの池田園子が、週末起業家や個人事業主、経営者など、さまざまなスタイルで起業している女性にインタビューする連載です。
******
誰しも一度は「占い師」さんに運勢や相性をみてもらったことがあるのでは。鑑定結果が当たっていると、すごい! と感動しますよね。何を聞いてもスラスラと回答してくれる姿にも、人をみるプロだなぁと恐れ入る気持ちになります。
今回はフリーランスで活動する占い師さんに登場いただきます。21歳で独立、占い師になった山下真輝さんは、今年でキャリア7年。とはいえ、6歳から占いの勉強を始めているため、占いにどっぷりはまって23年!
人生の5/6を占いに捧げてきた山下さんは、「占い師になるべくしてなった人」ともいえます。実は山下さんのお母さまも、会計会社経営の傍ら、占い好きが高じて副業として占い師をしていたのだそう。
「ひとりっ子の私は学校から家ではなく、母の事務所へ帰っていたんです。母が本業を終えた後、占いをしているのを見て興味を持ちました。母に占ってもらったことが当たると、占いって面白い! とワクワクしましたし、逆に当たらなかったことは、どうしてだろうと考えるのも面白味がありました」(山下さん)
姓名判断にホロスコープ、手相、人相、家相、風水、トランプ、タロット、ルーン、紫微斗数(台湾の占い)など、さまざまな占いを習得している、リピーターの絶えない占い師、山下さんの起業ストーリーをお届けします。
雑学好き、好奇心旺盛な人は占い師に向いている
Q. 占い師に向いている人って、どんな人だと思いますか?
A. 資格がなくてもできる職業なので制限はないものの、楽しみながら勉強したり、覚えたりするのが好きな人、雑学好きな人、好奇心旺盛な人は、占い師に向いているんじゃないでしょうか。占いって「将棋」に似たところがあります。将棋で強くなるには、駒の強さや効果的な使い方を学んで覚える必要がありますよね。
占いも覚えることが膨大にあります。9割が暗記で、1割が経験だと私は思っています。とにかく情報が多いんです。神話や民俗学などとも親和性があるので、歴史を調べなければいけないときもあります。
――学問的な要素が強いんでしょうか。歴史好きな人も向いているかもしれませんね。
だと思います。私も子どもの頃から歴史が好きでした。好きなことだから、楽しく勉強しながら覚えていけるんですよ。それに、この世に存在する占いは、発生場所や歴史が少しずつ違うだけで、ルーツは同じなんです。ひとつ習得してしまえば、あとはコツコツと地道に学んでいくだけ。
私は本やネット上の資料を集めて、独学で習得してきました。ただ、座学で勉強した占いをお客さまにさせていただく前に、自分や子どもを実験台にしています。占いの種類にもよりますが、だいたい2か月先くらいを占ってみて、2か月後にどれが当たったか、どれがはずれたかA/Bテストをするように、“検証”するのは大事な時間だと思っています。
占いを通じて、願望を叶えるお手伝いをしている
Q. お客さまはどうやって獲得していますか?
A. 口コミ経由が約8割、残りはWebサイト経由です。リピーターさまも多いですね。女性のお客さまからは「当たってる」と言っていただくことが多く、男性のお客さまには知識量に満足していただくことが多いです。人生の5/6を占いに費やしてきて、占いのことしか考えていないので(笑)、お伝えできる情報や引出しは多い方だと思います。
お客さまに対し、私が占いでできることは、「願望実現のお手伝い」。鑑定結果を聞いて満足するだけのお客さまは少なく、実際にアクションを起こしたり、考え方を変えたりして、生き方を変えていきたいと思っている、向上心のある方が多いです。
だから、ひとりひとりの運気に合わせた、最善の結果を手に入れるお手伝いをしているつもりです。一番多い相談の「恋愛」でいうと、イケメンが登場する漫画を読む、ピンクの小物や雑貨を身の回りに置くといった、日常の中でできることをお伝えしています。
すぐに取り組めることなので、お客さまも早速その日から実行してくださるわけです。その結果、人生が変わっていくから、当たると感じてくださり、また別の悩みや気になることが出てきたときに戻ってきてくれるんだと思いますね。
起業すると責任はすべて自分にかかる。でも、圧倒的な自由を獲得できる
Q. お客さまに支持され、リピーターがつく理由がわかる気がします。ただ、フリーランスとして7年続けるなかで、大変なこともあったのではないでしょうか?
A. 今でも大変なときはありますよ(笑)。たとえば、タスクや決断の期限を決めたり、ときには自分を追い込んだり。経営という面で見ると、シビアな面はもちろんあります。
でも、大変であることを楽しめなかった時期はない、と断言できますね。極論、大変な思いをしたくなければ、ラクをしたければ、フリーランスにならないほうがいいと思います。
フリーランスになると、安定は遠ざかります。ときに冒険する勇気も必要ですし、自分で決断し責任をとらないといけません。ただし、自分が望んだ通りに生きていけます。責任はすべて自分にかかってくる代わりに、自由を獲得できるんです。
私が独立して良かったと思うことのひとつは、やっぱり自由を手に入れられたこと。自分らしさや個性を発揮して自由に働きたいなら、ワクワクすることがたくさんありますし、大変なことがあっても、楽しみながら乗り越えていけると思いますよ。
好きなことを仕事にしたいなら、「できること」軸で考えてみる
Q. 近年、「好きなことを仕事にする」ことを目指す人が多いです。そういった本もたくさん出ています。その願望を叶えるのに必要なことはなんだと思いますか?
A. 「しなければいけない」という思い込みを再考すること。たとえば、私は朝起きるのが苦手です。でも朝起きなければいけない、ってどうなのかな、と考えてみる。そもそも、できるようにならないと、好きなこと(占い)を仕事にできないのか、と。
別に、朝起きられなくても、占いは仕事にできますよね。それに、できないこと、苦手なことをできるようにするには、あまりにも時間がかかります。いざできるようになってから、行動に移そうとしても、時既に遅し、かもしれません。
「できること」軸で考えた方が早いんです。できることをさらに伸ばして、できないことは誰かと助け合って、補っていけばいいんじゃないかな、って。
占いはできても、不得意なことがたくさんある私には、仕事上のパートナーがいて、彼にかなり助けられています。彼は私にはない力を持っているので、私の足りない部分を補ってくれるんです。ひとりではなく、ふたりでがんばってきたから、7年続けてこられたのかな、と思います。
まとめ
ご自身のなかに、「占いを通じて、幸せな女性を増やしたい」という、一貫した思いを持つ山下さん。女性が悩む時間を減らして、幸せになってほしい、と真摯に願っていることが伝わってきました。
たしかに、女性が笑顔でいることは、周りのみんなを幸せにします。結婚している・していない、子どもがいる・いない、働いている・働いていない、そういった状況にかかわらず、女性が笑っていたら、男性も子どもも仕事仲間も皆、満たされる。
占いの力で悩める人の背中をやさしく押して、それぞれが理想とする幸せな状態へ近づいてほしい――山下さんの描く世界が実現することを願います。
▽ 山下真輝さん
占い師。占い師としても活動していた母の後を継ぎ、2代目占い師に。2011年より個人セッションを開始。対面鑑定のほか、ワークショップ、執筆など、多岐に渡って活動中。病気・離婚・シングルマザーを経て現在は再婚。2児の母。
▽ 前回の記事はコチラ
▽ ブログ:星の光が消えないうちに