やさしい子に育って欲しいから…・幼児期から共感力を高めるためのヒント
自分の子どもには人の心が分かるやさしい子どもに育って欲しい、親なら誰でもきっとそう思うはず。それには幼児期から、まず自分の感情について表現し、そして他者の気持ちも想像し、思いやる気持ちを育てることが大切です。そしてそのためには、親が子どもの心の動きについてもっと敏感になり、そこから他者への思いを広げる手助けをしてあげることが必要といえます。
ダメ! のあとに考えさせよう
たとえばお友だちを叩いてしまったとき、すぐに「そんなことしちゃダメでしょ。ごめんなさいって言いなさい!」と頭ごなしに叱ってしまうのはよくありません。まずなぜそんな行動をとったのか(自分の気持ち)、叩かれた子はどんな思い(相手の気持ち)をしたか、叩いたことでどんな気持ちになったか、考えさせ、言葉で表現できるように促すのがまず第一歩です。
根気のいることと思えるかもしれませんが、自分の気持ちを的確に表現し、相手に対して共感力を高めるためにもこうしたプロセスが有効なのです。そしてこれは成長していくにしたがって、かけがえのない対人関係スキルにもつながっていくはず。それは長い人生でとても貴重なスキルといえるでしょう。
では共感力を高めるために、幼児期からどんなことに気をつけるべきかヒントをまとめてみます。
子どもにすべき「問いかけ」
意地悪をする、誰かを叩く、誰かに迷惑をかけてしまった、といった場合にまず、「ごめんなさい」という習慣をつけさせましょう。とはいえそれが口先ばかりでは意味がありません。どうして心から謝らなければならないのか、子どもに自覚させるためには、こんな問いかけをしてください。
――そんな行動をして、どんな気持ちになった?
――自分の行動によって、相手はどんな思いをしたかな?
――自分の行動によって誰かが悲しんだり、怒ったりすると知っていたら、どう思う?
――相手や、他のお友だち、あるいはお母さんやお父さんは、どう思うか想像できる?
子どもの個性にもよりますが、一般的に言葉での表現が巧みな女の子に比べ、男の子は気持ちを言葉で説明するのがあまり得意ではないかもしれません。でもだからこそ、親が積極的に、「○○くんは、どう思うかな? 怒っているのかな、悲しいのかな。それとも分からない??」と、問いかけ、働きかけてあげる習慣をぜひ続けてみてください。10代や大人になっても自分の気持ちをきちんと他者に伝えられないため、人間関係につまづいてしまうパターンが多くあります。それを予防するためにも、幼いころから最も身近な親が、気持ちを聞き、言葉が足りない部分は補ったり、一緒に考えたり、モヤモヤした感情を受け止めてあげることがとても大切なのです。
まだ4歳、5歳くらいでは的確な言葉が見つけられず、子ども自身がイライラしたり、かんしゃくを起こすこともあるでしょう。だからこそ親が、それはどんな言葉で表現したらいいか、一緒に考え、教えてあげることが大きな力にもなります。そして自分の気持ちを的確に表現する習慣をつけた子は、自分以外の他者の気持ちも同じように言葉で考え、表現しようという気持ちが高まるはずです。そしてそれが他者への“共感力”へとつながっていくのです。
“やさしい子に……”と口先で言ってみるばかりでも子どもにはうまく通じません。具体的な体験を積み重ねながら、自分の気持ち、そして他人の気持ちを向き合っていくことを、一緒に模索してあげてみてください。