「革の色気を楽しめる、おしゃれで履きやすい靴作りを」浅草シューズブランドrow【園子の部屋#7】

編集者/ライターの池田園子が、そのときどきで気になる人、話を聞きたい人に会いにいく連載企画「園子の部屋」。
第7回目は浅草のシューズブランド「row」で、シューズデザイナーを務める千藤寿美恵さん(以下、敬称略)。


旅先で出会ったシューズブランド

池田:自分が今3足持っているシューズブランドのデザイナーさんとお話しできるなんて、うれしすぎます! 今日はありがとうございます。

千藤:こちらこそリアルの店舗だけでなく、私たちが出店するECサイト「creema」でも購入いただき、ありがとうございます。

池田:私とrowの出会いについて、お話しさせてください。2017年夏、岩手県盛岡市を旅してたんです。主な目的はプロレス観戦で、あとは現地のグルメを食べることでした。

千藤:プロレス観戦……! 遠征ですね。

歩きやすく、吸い付くような履き心地に感動

池田:まさに。時間があって街を歩いていると、デルソルさんというブティックがあって、rowの靴が置いてあったんです。

千藤:リピートしていただいている「ポインテッドプレーン」ですね。

池田園子私物。品番はNo.1507 ¥17,000

池田:そうです。とても歩きやすいフラットシューズで、何より足に吸い付くようなフィット感に感動しました。ブティックのオーナーからは、「ボロネーゼ製法っていう足を包み込む履き心地の靴で、浅草で作ってるんですよ」と説明を受けて。シルバーという色とムダのないデザインも気に入って即購入しました。

履いていると、靴が足に合ってくる

千藤:偶然の出会いだったんですね。うれしいです。

池田:私も東京に住んでいるので、いつか展示会とか行ってみたいな、と思いつつ、creemaで購入したりして、今日に至りました。ところでボロネーゼ製法の靴って、どうしてこんなに履き心地が良いんでしょう?

千藤:前足部分は中底を使わずに、ミシンで丸い袋状に縫い合わせているんですよね。それが足をすっぽり包み込む形状になります。

池田:ホントだ。よく見ると中底が靴の途中(後足部分)までしかありませんね。

千藤:だから靴がしなりやすく、歩きやすく、履きやすいんです。靴が足に合ってくる、と言うとわかりやすいと思います。

足にフィットしやすい靴を作りたい

池田:その感覚、わかります。履いていると「自分の靴」になっている感じがあるので。高価なブランド品だけど、いつまでたっても数時間後には足のどこかが痛くなる、よそよそしい靴も中にはあるんですよ……。私の足に合ってないだけだと思いますけど。

千藤:それはつらいですよね。ボロネーゼ製法って設計上手間がかかり、製造費も高く、大量生産が難しいんです。

池田:それでもボロネーゼ製法の靴を作り続けているのは?

千藤:私自身、華奢な足をしていて、足に合うパンプスがないことが悩みでした。私のように履きたい靴が履けない人のために、オーダーシューズまでは作れなくても、足に合いやすい靴を作りたかったんです。

池田:ボロネーゼ製法なら足になじみやすいから、履ける人、足に合うと感じる人は多くいるだろう、ということですね。靴難民の人を救っている気がします。

rowの「顔」となる商品は作り続けたい

千藤:もうひとつ、ブランドの「顔」となる商品も必要だと考えています。新商品がどんどん登場する現代に逆行するかもしれませんが、普遍的な商品は作り続けていきたいですね。

池田:私が購入したポインテッドプレーンは、ブランドのアイコン的な存在だと感じていました。春夏、秋冬で新作が10くらい出ているようですが、ポインテッドプレーンは安定的に作られていて、今履いているものがいつか寿命が来たとき、同じものを買える(※)安心感があるんです。

※ポインテッドプレーンだけでなく、同じ木型を元に作られている商品も多い。自分に合う木型がわかれば、違うデザインの商品も安心して買えるメリットも。

千藤:アイコン、って聞いてうれしいです……! 今日は良いお酒が飲めそう(笑)。

履くだけで足をきれいに見せる靴

池田:ところでお聞きしたかったんですけど、私が最初に買った靴は何革が使われているんでしょうか?

千藤:ヤギ革ですね。表面にひび割れの加工を施しています。

池田:ヤギ革だったんですね! 履き心地がとても柔らかいし、色合いも柔らかくて、肌なじみの良さがあります。

千藤:肌に合う色合いは意識して作っていますね。女性用の靴ですし、履いていて足をきれいに見せたい、って思いは皆さんあるじゃないですか。

池田:ありますね。rowの靴を履いていると、足元に抜け感が生まれて、ヘルシーな色気が出る気がしています。

いつかはショールームを設けたい

千藤:うれしいです。革自体に化けていく楽しさがあるというか、履くうちに表情が出てくる性質があります。そんな革の一部を焦がして陰影を作って、履いたときに足元がほっそり見える効果を出したりもしています。お化粧みたいですよね。

池田:足元を華奢に見せたい人にはうれしい。最後に、今日は展示会期間中におじゃましたこともあって、工房がショールームのようになっていますが、いつか小スペースでも良いので、お客様が立ち寄って靴を試し履きできるショールームができたらうれしいです。

千藤:私たちもいずれはそういった場を設けたいな、と少しずつ計画中です。靴1足分の革を買うことはできません。どうしても残る部分があります。お客様に革をお見せして、お話ししながらそれぞれに合う靴を作っていくのは理想的だなあと。

池田:row愛好者としてはそんな状況になれば最高です。本日はありがとうございました。

▽ ゲスト/千藤寿美恵さん

浅草のシューズブランドrowのシューズデザイナー。少数精鋭のチームで、ナチュラルで色気のある革の味わいを活かした手仕事、手仕上げによる温もりのある味わいで愛される靴を作っている。
取扱店舗はHPを参照。ECではcreemaで取扱。

2018.11.26

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記事を書いたのはこの人

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Written by 池田 園子(いけだ そのこ)

岡山県出身。中央大学法学部卒業後、楽天、リアルワールドを経てフリー編集者/ライターに。関心のあるテーマは女性の生き方や働き方、性、日本の家族制度など。結婚・離婚を一度経験。11月14日に『はたらく人の結婚しない生き方』を発売。 写真撮影ご協力:青山エリュシオンハウス 撮影者:福谷 真理子