【趣味と私と人生と】vol.4 本に救われ、これからも本と生きていく(花田菜々子)

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2018.08.03.Fri

心から「楽しい」「最高」と感じられる趣味があると、人生はよりおもしろく、彩り豊かなものになります。趣味という名の美しい沼に浸かっている人たちを紹介していく連載【趣味と私と人生と】。
第4回目は「本」を愛する花田菜々子さんに登場いただきます。

あのヒット本を書いた人!

2018年4月、小説『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』(河出書房新社)を出版した花田さん。7月時点で6刷が決まり、ヒットを記録しています。
子どものころから本が大好きで、居心地の悪さを感じていた学生時代は本に救われ、大人になった今も何か問題を抱えたら、そのテーマにまつわる本を片っ端から読んで、自分を客観視する習慣がある――。
そんなふうに本と共に大人になり、ヴィレッジヴァンガードをへて、現在はHMV&BOOKS HIBIYA COTTAGEの店長を務め、今も本に囲まれた生活を送る花田さんが、各人に合った本をすすめた様子を綴った実録本です。

『注文の多い料理店』で本の面白さに魅せられた

「3歳くらいのとき『ドラえもん』(藤子・F・ 不二雄、小学館)で字を覚えて、幼稚園で同い年の子たちに頼まれて、絵本の読み聞かせをしていたそうです(笑)。読書に目覚めたのは幼稚園のとき、『注文の多い料理店』(宮沢賢治)に出会ってから。

注文が多いというのは料理のメニューが多いのではなく、主人公のふたり組の男性に対する注文が多く、彼らが“食べられる対象”になっている……。ストーリーがひっくり返るような面白さに惹かれて、何十回も読みました」

小学校低~中学年では折原みとさんたちが書く、10代向けの恋愛小説に熱中し、小5くらいからは自身でも恋愛小説を書いていたといいます。そのころから中学にかけては、山田詠美さんや吉本ばななさん、江國香織さん、銀色夏生さんなど、少し大人向けの小説も手に取るようになりました。

社会が与えない価値観を本から得る

「ドラマや映画の中にいるキラキラした素敵な女性よりも、好きな作家が描く女性のほうが、自分が『そうありたい』と思う姿に近いなと感じていました。私は昔から、人はなぜ生まれて死んでいくのかとか、生きてるってどういうことなのかとか、すごく考えるタイプだったんですね。

だから、大人になったらおしゃれをして、OLになって、結婚して、子どもを産んで……という周りの多くが何の疑問もなく送ろうとしていた人生と同じように生きるのは、私にとっては難しいなと(笑)。でも本を読めば、別の生き方もあるよって言ってもらえるんじゃないかと思っていました」

当時の花田さんに、インパクトを与えた作品のひとつは、江國香織さんの『きらきらひかる』(新潮社)。アルコール依存症の妻と同性愛者の夫、その恋人との3人の暮らしを描いた話から、今まで周りの大人たちが与えてくれなかった価値観を受け取る体験だったと振り返ります。

恋愛中の人へおすすめの本3冊

自著で向き合った人ひとりひとりに本をすすめている花田さんに、Googirl読者に向けて、「恋愛」にまつわる3種類の本をすすめていただきました。皆さんの恋愛の状況に合わせて読んでみてください。

片思いをしている人におすすめの1冊

『村に火をつけ、白痴になれ――伊藤野枝伝』(栗原康、岩波書店)

「戦前を生きた社会活動家・伊藤野枝さんの伝記です。平塚らいてうさんに弟子入りし、女性の自由を獲得するために、やりたい放題というか、とてもパンクな生き方をした人。

栗原康さんの文章がリズミカルで、ラップを読んでいる感じの楽しさもあります。伝記特有の堅苦しさもなく、読んでいるだけで熱くなり、前に出る勇気をもらえます(笑)。

片思い中だと、『気になる人にメールしたいけど、どうしよう……このタイミングでメールするのは正しい選択なのかな』とか、悶々とすることもあるかもしれませんが、そういう悩みがバッと吹き飛んで、『もう、どう思われてもいい!』と、自由に行動できるようになるはず(笑)」

恋愛中の人におすすめの1冊

『生き抜くための恋愛相談』(桃山商事、イースト・プレス)

「恋愛中は悩みが生まれることもありますよね。だから恋愛相談本というのが、この世にたくさんあるわけですが、本書は回答者の“劇場”になりがちな一般的な恋愛相談本とは一線を画するもので、相談者が今どういう状態で、どうなりたいのか整理してくれるのが特徴です。

種々の問題と自分の考え、周りから言われることなど、いろいろなものをゴチャゴチャにして考えると、一体自分が何に悩んでいるのかわからなくなりますよね。悩みを解決に持っていくには、自分の考えを整理する必要があります。

結局、答えは自分の中にしかないわけで、自分がどうしたいのか、どういう気持ちで向き合うのか、『自分が決める』という態度を大切にして、人生を進めていく――そんなトレーニングができる1冊です」

別れの喪失感を抱えている人におすすめの1冊

『ノルウェイの森』(村上春樹、講談社)

「20代だと村上春樹さんの作品を読んだことがない方もいると思い、あえてこの作品を持ってきました。失恋して傷ついているとき、喪失感や人を愛する感覚と向き合う主人公の姿は、私たちの身に沁みますし、たとえ恋を失ったとしてもこれからも生きていくためのヒントを得られると思います」

編集後記

本を読むのがしんどい・なかなか読めない・最後まで読み切れない……。活字にあまり慣れていない方だと、そんなふうに感じることもあるのではないでしょうか。

「本を買ったら『全部読まなくちゃ』と思って、がんばる方もいますが、最初から最後まで読まなくてもいいんです。途中で置いてもいいんです。それは読むのをやめたわけではなくて、そのうち読むかもしれない本ですから」

中にはどうしても読み進めづらい本だってあります。花田さんのこんな言葉を聞くと、もっと気楽に本と付き合えるのではないかと感じました。

▽ 花田菜々子さん

書店・HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE店長。初の著書『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』(河出書房新社)が大好評。

▽ Twitter: 花田 菜々子(@hanadananako)
▽ 前回の記事はコチラ

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記事を書いたのはこの人

Written by

池田 園子(いけだ そのこ)

岡山県出身。中央大学法学部卒業後、楽天、リアルワールドを経てフリー編集者/ライターに。関心のあるテーマは女性の生き方や働き方、性、日本の家族制度など。結婚・離婚を一度経験。11月14日に『はたらく人の結婚しない生き方』を発売。
写真撮影ご協力:青山エリュシオンハウス 撮影者:福谷 真理子