読書の秋におすすめのちょっとふしぎな恋愛小説4選
このあいだまで半袖で過ごしていたなんて信じられないくらい、すっかり冷え込んで秋らしくなってきました。紅葉も始まり、寒さが増し、布団から出るのが億劫になる時期でもありますよね。食欲の秋・スポーツの秋……いろいろありますが、やはりなんといっても読書の秋です。女子のみなさんがいちばん好きであろうジャンルはもちろん恋愛であると思いますが、「恋愛小説なんてみんな似たり寄ったりじゃん」なんて思っていませんか? そこで今回は王道のラブストーリーではなく、「一風変わった」恋愛小説をご紹介させて頂きます。
ちょっとふしぎな恋愛小説4選
1. 『無花果とムーン』(桜庭一樹・角川文庫)
主人公・月夜は紫の瞳(パープル・アイ)を持つ、18歳の「もらわれっ子」で、ある日大好きなお兄ちゃん・奈落に目の前で突然死なれてしまいます。どうしたらいいかわからず毎日かなしみに暮れる中、街で毎年開かれる「無花果UFOフェスティバル」に、なんとお兄ちゃんと全く同じ顔の少年・密がやってきて……。
月夜の大切で大好きな人を失ったかなしみと妄想が、重過ぎず軽快な文体で描かれていて、読書初心者の方でも読みやすいですよ。
2. 『第四の手』(ジョン・アーヴィング・新潮文庫)
稀代の女ったらしでモテモテのTVジャーナリスト・パトリックは、インドでサーカスの取材中に、なんとライオンに左手を喰いちぎられてしまいます。5年後、手の提供者が見つかり、事故死した男の手を移植されることになるのですが、ある日その「手」の持ち主だった男の妻・ドリスがパトリックを訪ねてきて、なんと性行為を迫ります。やがて男の子を出産したドリスにパトリックは次第に惹かれていきますが、ドリスが愛しているのはどうやらパトリックの左手――つまり死んだ夫の「手」だけのよう。
一見荒唐無稽なあらすじですが、好色家だったパトリックが真実の愛に目覚めるという非常にロマンティックなお話です。ベタな恋愛小説は読み飽きた、という方にぜひおすすめの小説です。
3. 『スプートニクの恋人』(村上春樹・講談社文庫)
日本を代表する小説家・村上春樹の恋愛小説といえば『ノルウェイの森(講談社文庫)』が有名ですが、今回は『スプートニクの恋人』を紹介させて頂きます。小学校の教師である主人公・24歳の「ぼく」は、大学時代からずっとすみれという22歳の女の子に片想いをしています。しかし、ある日すみれは、17歳も年上の既婚者の女性・ミュウに生まれて初めての恋に落ちてしまいます。そんな中、仕事でギリシャの小さな島に渡ったすみれが行方不明になったという連絡を「ぼく」はミュウから受け……。
読んでいるうちにいつしか竜巻のような激しい恋に巻き込まれ、ページをめくる手が止まらなくなること必至です。
4. 『薬指の標本』(小川洋子・新潮文庫)
事故で薬指の先を失ってしまった主人公「わたし」は、人々が思い出の品々を持ち込み標本として保管される場所である「標本室」で働き始めます。ある日「わたし」は標本技術士・弟子丸氏に素敵な靴をプレゼントされ、「毎日その靴をはいてほしい。とにかくずっとだ。いいね」と頼まれます。次第に弟子丸氏に惹かれていく「わたし」は「自由になんてなりたくないんです。この靴をはいたまま、標本室で、彼に封じ込められていたいんです」と望み……。
透明感のある美しい文体で紡がれる恋愛に、おもわずうっとりとのめり込んでしまいます。
肌寒い季節だからこそ、たまにはお家でゆっくり読書をして、ちょっとふしぎな恋愛の世界にどっぷり浸かってみてはいかがでしょうか。