人生に行き詰まったら読んでみて。小さな日常が愛おしくなる名作『あなたを選んでくれるもの』

2016.07.08

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あわただしい1年のスタートを経て、ちょっと落ち着きだした今の時期。
ふとしたときに、なんだか自分の人生に行き詰まりを感じてしまう……。なんとなくそんな繊細な気分になってしまうことはありませんか?
そんな人におすすめしたい本が『あなたを選んでくれるもの』(新潮社/ミランダ・ジュライ)。きっとこれを読めば、自分を含めたこの世界が愛おしくなりますよ。

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どんな本? 筆者はどんな人?

筆者のミランダ・ジュライは、カンヌ国際映画祭でカメラ・ドール賞(新人監督賞)受賞経験もある女性映画監督。彼女はカメラ・ドール賞受賞後、2作目の長編映画の脚本が書けずに、もがき苦しんでいました。
そんななかでの息抜きは、郵便受けに届くフリーペーパーの、さまざまな「売ります」広告を見ること。ネット社会の現代で、紙媒体でヘンテコなものを売りに出している人々はどんな人なのか……気になりだした彼女は広告主たちに連絡をとり、彼らの商品について、そして人生について取材をするようになります。
半分は映画からの現実逃避、しかし半分は、ナマの他者の人生に触れることが行き詰まった現状を打開することになると信じて、個性豊かな人々にインタビューをしていきます。家の庭でウシガエルのオタマジャクシを育てる男子高校生、家中で珍獣を育てる女性、元受刑者……。世界の片隅で輝く、ひとりひとりの人生。
最後のインタビュー相手の老人との出会いは、ノンフィクションとは思えないほどのドラマチックな展開が待ち受けています。

時間への向き合い方と人生観

インタビューを続けるなかで行き詰まっていた映画の脚本も前進し、大きく変わっていきます。そしてミランダ・ジュライ自身、人生や時間への向き合い方に変化が訪れます。30代の彼女は、知らず知らずのうちに「人生の残りの時間」を考え、意味のないことやまわり道をする時間は自分にはもうないのだと決めつけていました。
しかし、人生は意味のない小さな瞬間の積み重ねであり、だからこそ奇跡のように美しい。時間にあらがうように生きていた彼女は、自然に年月を経ることを受け入れるようになります。
大人の女性はどうしても老いることに否定的になりがちですが、こんなふうに特別な意味のない小さな日常を積み重ねていくこと、人生を進んでいくことを肯定できたら、きっと素敵に年を重ねることができますね。見た目だけでない、内から溢れるような美しさを備えた大人の女性はこういったところが違うのかと考えさせられます。

いかがでしょうか?
普段小説は読むけれど、ノンフィクション、ましてフォト・インタビュー集って……とお思いの方、現実はこんなにも物語に溢れているのか、と驚かされますよ。そしてきっと、自分がいま生きているノンフィクションの人生も、なんだかとっても輝かしくて素敵なものに思えてくるでしょう。
さらに付け加えると、挿入されるフォトや表紙もセンスがよくておしゃれで、本棚に置いておきたくなりますよ。おすすめの1冊です!

2016.07.08

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記事を書いたのはこの人

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Written by nakaharu

会社員兼WEBライター。好きなものは映画、本、ピラティス、中南米、猫、豪華な朝ごはん。 ・twitter @512Nakaharu