しなやかな私をつくる本 vol.11~『仕事ができて、小金もある。でも、恋愛だけは土俵にすら上がれてないんだ、私は。』~

女性が生き方や考え方をアップデートし、つよくしなやかな自分を目指すのに役立つ本を月に1冊紹介します。


恋愛がうまくいかないと感じる理由

仕事は忙しいけど楽しい。責任のある業務を任されてやりがいがある。給料にも満足している。お金に余裕があるからプライベートも充実している。でも、恋愛だけは、なぜか思い通りにいかない。いったいどうして……?
こんなふうにモヤモヤする女性は一定数いると思います。というのも、恋愛は相手がいて初めて成立することだし、過去の経験が積み重なって、自分なりの「ものさし」で相手をジャッジすることでもあるからです。
各種条件やシチュエーション、そのほか細かい物事がうまくかみ合って、最終的に“成就”という形をとる。もちろん、始まったことすらわかりづらい恋愛(大人は告白をしないケースが多いため)もありますが。恋愛ってやっぱり大変……。

女性であることを楽しんでほしい

恋愛、なんだか低調気味だなぁ……と感じている女性におすすめしたいのが、『仕事ができて、小金もある。でも、恋愛だけは土俵にすら上がれてないんだ、私は。』(ワニブックス、桐谷 ヨウ・著)です。
「はじめに」で桐谷さんは「他人のせいにして、自分を変えようとしないダメ男たち、ダメ女たちを払拭したい」と厳しい言葉を、「恋愛は最高に楽しくて、人生を充実させてくれるもの」と心温まる言葉を残しています。
意識して辛口寄りで書かれた本書。背景には、桐谷さん自身が他人とのつながり、他人とは何かについてのさまざまなことを、人生の中で出会った女性たちから学んできたことが関係しているようです。
だからこそ、ちまたにあふれるモテテクをとり入れ、男性に選ばれる女性を演出しようと、無理に自分の本質をゆがめたり、素の自分を隠したり、「こうでなければ」といった固定概念に縛られたりしている女性たちに、幸せになってほしい、堂々と“女性であること”を楽しんでほしい、という願いが込められています。
ピリ辛ながら愛のある文章が綴られた本書から、アラサー女性が持っておくと生きやすくなる考えかたを選りすぐってご紹介します。

恋愛の本質は「無償の愛」を与えること

「男性が盛り上げてくれるのはあたりまえ」「男性がリードしてくれるのは当然」「男性がおごってくれるのはあたりまえ」など、恋愛は男性主導で女性をお姫さま扱いしてくれるもの――そう思ったことはないでしょうか。あるいは、今も心のどこかで思っていませんか。
桐谷さんはこう指摘します。女性を喜ばせようとする男性の振る舞いは「思いやり」と「気遣い」に裏づけられた技術である、と。誰かに「与えること」を自然と実行している女性であれば、がんばってくれる男性を見て、素直に「ありがとう」と思えるはず。
さらに、恋愛の本質を定義するなら「テイクを無視して、ギブギブギブ、アンド、ビッグギブだ」だと桐谷さん。ポイントは自分が与えるときに、見返りを求めないこと。そして、相手から与えられたときに、ワガママで返さないこと。
つまり「私がこれだけ愛しているのだから、愛されないのはおかしい」「これだけつくしているのに、何もしてくれない」と考えるのは間違いだということ。自分自身を更新し続ければ、無償の愛を与え合える相手と出会える日は、きっとやってくるはずです。

恋愛による自分の変化を意識的に観察してみる

自分の好みをほぼ満たした相手と付き合っていることが、いい恋愛であるとは限りません。たしかに外側から見ると、いい恋愛(うまくいった恋愛)のように見えるかもしれません。でも、それって“誰目線でのいい恋愛”なのでしょうか。他人目線が入っていませんか。
桐谷さんは、誰かと向き合うことってなんだろう、と本質的な問いを投げかけます。それは当然、誰かの価値観や考えかた、感情を受け止めること、でしょう。でも、大前提は「その人と一緒にいることで生まれてくる『自分の感情・思考・行動』に向き合うということに他ならない」だというのです。
恋愛をしていると、つい相手にばかり目がいってしまい、果たして「自分はどうであるか」は後回しになりがち、というより考えてもいないかもしれません。そのときの自分の内部でどんな変化が起きているか、意識して観察してみると新たな発見がありそうです。

いい恋愛=自分がいい状態でいられる恋愛

さらに読んでいくと「すべての恋愛は、“その人にとって良かった”にすぎない」と桐谷さんはハッとさせられる文章を、さらりと綴っています。その上で「その人を通して出逢う自分自身が、今までなかったくらい心地よい毎日を過ごさせてくれていたということじゃないだろうか」と補足します。
いまでも記憶しているいい恋愛(当時)を思い起こしてみると、共感する人も多いのでは。その相手と一緒にいたときの自分が「自分がそうありたいと思う自分」だった、と気づくはず。そのときの感覚を忘れず持っておけば、自分が幸せになれる(ひいては相手も幸せにできる)相手と出会える日も近いでしょう。
主体的に人生を切りひらき、幸せを手に入れるヒントが詰まった充実の一冊です。

2016.06.23

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記事を書いたのはこの人

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Written by 池田 園子(いけだ そのこ)

岡山県出身。中央大学法学部卒業後、楽天、リアルワールドを経てフリー編集者/ライターに。関心のあるテーマは女性の生き方や働き方、性、日本の家族制度など。結婚・離婚を一度経験。11月14日に『はたらく人の結婚しない生き方』を発売。 写真撮影ご協力:青山エリュシオンハウス 撮影者:福谷 真理子