読めば和菓子が食べたくなること間違いなし! デパ地下ミステリー小説「和菓子のアン」
和菓子というとちょっと地味で、洋菓子に隠れた存在……なんて思っていませんか? 「和菓子なんてどれも同じような味だし……」というあなた! 『和菓子のアン』(光文社文庫・坂木 司著)を読んだあとは、きっと和菓子屋さんの前に立っているはず。
ふとしたきっかけで和菓子屋で働くことに
高校を卒業してから進学もせずにプラプラと過ごしていた梅本杏子(うめもときょうこ/18歳・通称アンちゃん)は、これではダメだ! と目に飛び込んできたデパ地下の和菓子屋の求人を見て、さっそく応募し働くことに。
その和菓子屋さんはデパ地下のすみっこにあるお店。ケーキ屋さんやお惣菜屋さんの活気に消され気味で影の薄い存在だし、仕事もきっと楽だろうと思っていたアンちゃんですが、働いてみるとそこは戦場! 和菓子に関してはプロの店長さんと神のような接客ができる社員さんとの出会いで、和菓子屋さんに対するそれまでのイメージが払拭されていきます。
奥が深い和菓子の世界をのぞける
和菓子と言うとあんこのイメージが強く、甘ったるくて苦手という人も多いですよね。しかし、本当はいろいろな味のバリエーションがあり見た目も華やかなものが多く、特に生菓子は季節によりデザインが違い、春夏秋冬だけでなく七夕や桃の節句などイベントごとに深いメッセージが込められたものが登場します。
もちろん味にも違いがあり、ゆずの香りを混ぜ込んだり、梅ジャムを練り込んだものがあったりと、飽きることなく楽しめます。また、どこにでも売っていそうな大福も保存状態が悪ければ味が一気に落ちる、お土産に最適な和菓子があるなど、一般的にあまり知られていないことが盛りだくさん書かれているので、この本を読めば和菓子に関して知識が増えるかもしれません。
じつはデパ地下のミステリー本!
「和菓子についてだけ書かれているのか」と言えば、そうではありません。じつはこの本はデパ地下のミステリー本なのです。多くの人が行き交うデパ地下だから起こる人間模様や事情があり、普通の店舗では経験できないこともたくさんあります。
「いつものお客さんがいつもと違う商品を買っていったのはナゼ?」「あそこの洋菓子屋さんの廃棄されたケーキはどうなっているの?」など、ちょっとした謎が次々と解明されていき、読んでいるだけで興味津々! いつも行くデパ地下のイメージが変わるかもしれませんよ。
これから働く人、新しくなにかをはじめる人にこそ読んでほしい
なんとなく働きはじめた和菓子屋さんですが、アンちゃんにとってははじめてみなければわからなかったことばかりを経験します。和菓子の奥の深さや接客、デパ地下のルールなどは、和菓子屋で働かなければ知らなかったことです。
この本は全編を通して、アンちゃんのようにお店で働くだけでなく、他のお仕事や趣味も「やってみればわかる魅力があるのではないか?」と気づかせてくれる内容になっています。和菓子好きも洋菓子好きも、ぜひ「和菓子のアン」を読んで、仕事や私生活にも活かしてみてはいかがでしょうか?