しなやかな私をつくる本 vol.4~『働く女(ひと)の仕事のルール』~

女性が生き方や考え方をアップデートし、つよくしなやかな自分を目指すのに役立つ本を月に1冊紹介します。


生き方の選択肢が多い女性

順調にキャリアを積み重ねていてもこのまま働き続けた結果、私はどこへ行くのだろう――ときどき、ふとそうやって思い悩む女性は少なくないはず。結婚する? しない? 子どもを産む? 産まない? 子育ては? など、女性は男性よりも数多くの選択肢と向き合わなければなりません。さらに、多様な生き方ができるようになった時代。結婚・出産後に働き続ける女性も、昔と比べて格段に増えています。
よく「ロールモデル不在」といわれます。キャリアの描き方や進んでいく道のりは細分化されていて、じつに人それぞれ。だからこそ「5年後は◯◯さんみたいになっているのかな」「10年後は◯◯さんのポジションかな」と想像するのも難しいもの。

複数の女性をロールモデルに

会社員ではないフリーランスの私も同じです。キャリアの長い女性ライター、編集者をひとりひとり想像しても、将来の自分像と重ねられずにいます。「◯◯さんとはやりたいことの方向性が違う」「◯◯さんみたいに会社で働く、という選択肢はない」「◯◯さんの~なキャリアの作り方は参考になるかも」など。
ひとりひとりの「パーツ」をかき集めると、私が理想とする5年後、10年後のキャリアができあがる、といったところでしょうか。以前に取材した女性経営者が「ロールモデルは決して一人とは決まっていません。何人もの好きなパーツ、憧れのパーツを合わせて、ロールモデルにすればよいんです」と話していたのを思い出します。

三十路を前に不安が押し寄せる

私は来年30歳になります。29歳と30歳ではあまり差があるようには思えませんが、20代と30代で考えると、大きな違いが生まれるような気がしてなりません。
今のままの働き方でよいのだろうか、いちおう新しい仕事も始めたけれどこれをモノにしていけるのだろうか、業界で生き残っていけるだろうか……そういった不安を感じることが増えました。
そんな中、手にとったのが有川真由美さんの『人にも時代にも振りまわされない――働く女(ひと)の仕事のルール~貧困と孤独の不安が消える働き方~』です。まえがきで有川さんは「不安を解決する道は、自分の足で歩けるようにすること」だと話します。それはつまり最低限、自分で自分を食べさせることができて、幸せに暮らせる程度のお金を稼ぐことを指します。

不安はよい仕事をするエネルギーに変わる

それでも、なかなか完全には払拭されないのが不安。でも「不安があるからこそ、ひとつひとつ、いい仕事をしていきたいと思うし、学び続けたいとも思うのです」と有川さんはつづっています。では、どうすればよい仕事ができるのでしょうか。第2章「働き方をシフトする」で、有川さんは「自分のなかに“資産”を蓄積できる仕事を選ぶ」ことを提唱しています。
自分=商品です。求められる価値が高くなるほど、働き方を有利な方向に変えていけます。時間とエネルギーをかける、他の人とは違う「ブランド力」をつける、需要と供給のバランスを考えるなどの方法で、自分の価値を上げることができるのです。ここでいう価値は必ずしも、お金(収入)とは直結していません。
「報酬はお金だけではなく、自分に残る価値のほうがずっと大きい。信用される価値が積み重なると、さらに新しい仕事を生み出し、さらに大きな価値を積み重ねていけるのですから」と有川さんが言うように、過度にお金にとらわれず、未来のよい仕事につながる仕事を選び、全力でとり組むべきなのでしょう。

自分軸をベースに関連ジャンルを増やしていく

とはいえ、よい仕事を続けていると自負していても、ずっと同じことをしていると不安になることも。専門分野を持ってスペシャリストになるのは正解ですが、「自分軸を移しながら進化していく」ことを有川さんはすすめています。
専門性を極めるのと同時に、それに関連するプラスαの専門性やサブになる専門分野を、少しずつでもよいので、増やしていくのが理想です。そうすることで仕事の幅も広がり、現在できていることにプラスαした仕事をお願いされる可能性も出てくるでしょう。そうやって、自分を少しずつアップデートさせていく。
4章では「貧困にならない生き方 もっと稼げる自分になるには」、5章では「お金の使い方 女が豊かに暮らしていくということ」、6章では「社会とつながる ひとりぼっちの恐怖に負けるな」など、仕事と密接に関わる女性の生き方についても豊富に書かれています。

自由な生き方を手に入れた、強く自立した女性の大先輩が「大丈夫だよ!」と背中を押してくれる一冊です。

2015.12.29

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記事を書いたのはこの人

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Written by 池田 園子(いけだ そのこ)

岡山県出身。中央大学法学部卒業後、楽天、リアルワールドを経てフリー編集者/ライターに。関心のあるテーマは女性の生き方や働き方、性、日本の家族制度など。結婚・離婚を一度経験。11月14日に『はたらく人の結婚しない生き方』を発売。 写真撮影ご協力:青山エリュシオンハウス 撮影者:福谷 真理子