男女にまつわる悲劇的な愛の事情。『ユー ガッタ ラブソング 鳥飼茜短編集』レビュー
アラサー女子におススメの漫画家の一人に、鳥飼茜さんがいらっしゃいます。『おんなのいえ』『地獄のガールフレンド』『先生の白い嘘』など、たくさん葛藤しながら生きる女子の姿を、見事に描く漫画家さんです。
そんな鳥飼茜さんが、今年の9月に『ユー ガッタ ラブソング 鳥飼茜短編集』(講談社)という初の短編集を発売されました。満たされない子持ちの主婦や女子校生、不倫相手と再会するわけありの美人女性や人妻が登場する、4つの愛にまつわるストーリーが収録されています。どの話も胸をえぐられるような感情がかかれているのですが、美談でない、ある意味真実の「愛の物語」に、読者はきっと目が離せなくなるはずです!
それでは少しだけ、内容をご紹介いたします。
レンタル彼氏に不倫に家出娘……衝撃的な4つの愛の物語!
本書は男女にまつわる4つの衝撃的な愛の物語が収録されています。『いきとうと』という話では、博多弁の平凡な主婦が、生きている実感が得られず、ママ友に紹介されてレンタル彼氏と会うことになるストーリーがかかれています。また『白鳥公園』という話は、不倫のすえ身ごもった女性が、男に久しぶりに再会し、血しぶきが飛ぶ復讐を行う物語です。
ほかにも、彼女がいる同級生と駆けおちしようとする女子校生の話や、人妻と再会する男性の話なども描かれています。どの話も、不穏な空気が少しずつ濃くなっていく展開となっており、まるで悲劇へと駆け出していくようなラストは、絵も内容も衝撃的で、一度見ると忘れることができません。
満たされない思いとどう向きあうのか? 大人女子にとくにおススメ!
読んでいて楽しい気持ちになる話ではないし、骸骨まで出てくる漫画なので、暗い気持ちになることもあるのですが、筆者はどうしようもなくこの作品に惹かれてしまいました。それは人生や恋愛が、明るいことばかりではないからかもしれません。好きになってはいけない人をどうしようもなく愛してしまったり、誰かから見るとおめでたくてハッピーなできごとが、ほかの人の視点を通してみると、とんでもなく不幸なできごとだったり……。そんなことって、ありますよね。
どうにもならないできごとや感情と、いつもいつも冷静に向かいあうのは難しいことです。本書はそんな、ある意味とても正直な「愛の物語」を真正面から描いているように感じました。愛しくて切なくて……胸をえぐられるような、少し大人の漫画です。切ない経験をした大人女子におススメ。よかったら読んでみてくださいね。