次にいなくなるのは誰? 大人が読んでも怖い怪談えほん『はこ』レビュー
夏も終わりをむかえつつありますが、皆さまいかがおすごしですか? 夏といえば、本好きにとっては「怖い話」の季節ですが、今年はなにかホラー作品はご覧になりましたか?
今回は、大人も子どもも楽しめるとても怖い「怪談えほん」をご紹介したいと思います。夏の終わり、さらに涼しい気分になっていただけたら嬉しいです。
あかない「はこ」の恐怖とは?
今回ご紹介したい絵本は、岩崎書店の「怪談えほんシリーズ」の第2期作品のひとつ、『はこ』(小野不由美 作/nakaban 絵/東 雅夫 編/岩崎書店)です。「はこ」なんて、とても身近にあるものなので、今まで怖いと思ったことがなかったのですが、この作品は「はこ」が持つ、新たな恐怖を教えてくれます。
この絵本は、ふるとコソコソ音がする、あかない「はこ」を持った女の子が登場する所からはじまります。「はこ」はある日突然開くのですが、開いたと思ったら、なかにあったはずのものはなぜかすっかり姿を消しています……。女の子のまわりの身近にある大切な物は、はこに閉じこめられ、つぎつぎに姿を消していくのです。不気味な薄暗い絵で、ハムスターがいなくなったあとの「はこ」の様子を描いたシーンでは、思わず息をのんでしまいました!
次にいなくなるのは誰? じわり、じわりと迫りくる恐怖!
はこが開かないあいだは、はこのなかからは「コソコソ」「ベチャベチャ」と音がします。しかし、開いたときにはもう空っぽです。そしてまた、次のはこが開かなくなる……という恐怖は終わりを見せることがなく、背筋がゾクゾクしてきます。
しかもはこは、だんだんサイズが大きくなっていくのです。大事なものが閉じこめられて、つぎつぎと姿を消していく……。次にいなくなるのはもしかして……!? 嫌な予感を持ったまま、筆者は夢中で読みました。女の子が自分の母親のことを心配して、暗い道をひた走るシーンに続くクライマックス。想像以上の不気味さに、ページを持ったまま手がとまってしまいました。
夏の終わり、ちょっと一息ついたとき、ぜひ手にとっていただきたい絵本です。想像力が刺激され、子どものころ怖い話をしたときに感じた、じわりじわりと迫ってくるような恐怖を思い出すことができるはずです。
ちなみに「怪談えほん」のシリーズは、大人が読んでもトラウマになるほど、本格的な恐怖を味わえる作品がたくさん出版されています。第2期の作品では、恩田陸さんと樋口佳絵さんによる『かがみのなか』もおススメです! よかったら、読んでみてくださいね。