婚約破棄された女性を支えた「ドリフターズ・リスト」とは……? 自分としっかり向き合える『太陽のパスタ、豆のスープ』を読んでみて!

2015.07.08

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自分が一番やりたいこと、大切にしたい物、叶えたい夢や、自身をいつも身近で支えてくれている家族や友人の存在――。みなさんは、恋に恋しているときに、自分が本当に望んでいることやどんなことがあっても身近で支え続けてくれる人のことをつい忘れてしまっていることはありませんか?
今回ご紹介したい本は、結婚式直前に突然婚約を解消されてしまった「明日羽(あすわ)」という女性が登場する『太陽のパスタ、豆のスープ』(宮下奈都/集英社文庫)という小説です。失意のどん底にいる彼女に、叔母のロッカさんが提案したのは「ドリフターズ(やりたいこと)・リスト」の作成でした。明日羽は、リストに書いたことを一つ一つ実践していき、徐々に前を向いていきます。さて、彼女はどん底からどのように立ち直ったのでしょうか?


『太陽のパスタ、豆のスープ』(宮下奈都/集英社文庫)

このお話の主人公、婚約を解消された「明日羽(あすわ)」という女性は、叔母のロッカさんの提案により「ドリフターズ(やりたいこと)・リスト」を渋々作成します。はじめはそのリストに、「食べたいものを好きなだけ食べる」「髪を切る」「ひっこし」などを書いていた彼女。ですが徐々に「毎日鍋を使う」「やりたいことをやる」「お神輿」「玉の輿」「豆」など、一見なんのことかわからないこともリストに書き加え、自分の心を見つめ直していきます。
リストを作成したことにより、明日羽は考えます。「自分はこれまで、婚約者に頼ることが多くて、仕事を本気でしていなかったのではないか。簡単に実行できるやりたいことでさえ、やってこなかったのではないか。本当に後悔なく過ごしてきたのか。周りで支えてくれている家族や友人が、何を考え、何を求めているか、実は全然わかっていなかったのではないか……」

「私が選ぶもので私はつくられる」

一進一退で、心の傷はなかなか消えない明日羽ですが、徐々に家族や友人たちのさりげない優しさに支えられながら、自分と少しずつ向き合い、前を向く過程が描かれています。どんな経験も全部自分のものだし、そこからまたどんな選択をするのか決めるのも自分。「ドリフターズ・リスト」をきっかけに、なりたい自分を思い描き、今までの人生を肯定し、新たな人生に望むものを一つ一つ選びとっていく――。そんな明日羽の姿に、胸を打たれました。
恋ももちろん大切だけれど、「彼じゃなくて、わたしは本当はどうしたいの?」という感情と向き合わせてくれる本でした。よかったら、読んでみてくださいね。

2015.07.08

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記事を書いたのはこの人

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Written by さゆ

87年生まれのフリーライター。 本とワンコとカフェが大好きです。 いつでもアワアワしています。 ツイッター:@sayulog  写真撮影ご協力:青山エリュシオンハウス 撮影者:福谷 真理子