何年も時間が経ってから、ようやく見えるものがあるのかも? 「時」をテーマにしたアンソロジー『時の罠』を読んで、時間の持つ不思議なパワーを感じよう

皆さんは、ずいぶん後になってから大事なことに気がついたことってありませんか? 筆者は高校生のとき、勉強ばかりさせる学校のシステムが嫌いでした。毎日朝から小テストがあり、土日には模試があり、夏には勉強合宿があり……。何なんだこの学校は! と、半ば本気で腹を立てていたことを覚えています。
しかし大人になった今、ようやく気がついたのです。追試になっても「はい落第」とはせず、合格するまで何度でも勉強を教えてくれた先生たちは、ずいぶん良心的であったことに……。あのころ学んだ方程式や関数は確かに今、何の役にも立っていないけれど、難問に挑む姿勢や頑張りは高校時代に教わったことでした。
『時の罠』(辻村深月、万城目学、湊かなえ、米澤穂信、/文春文庫)
いつだって答えを知るのは後になってから。当時は気づけなかったことに、10年以上たってから、後悔しています。今回ご紹介したい『時の罠』(文春文庫)という本は、4人の人気作家による「時」をテーマにしたアンソロジーで、「時間」が築いたきらびやかな迷宮の世界を描いています。それでは少しだけ、中身をご紹介いたします。
「タイムカプセルの八年」
この本は、「時間」が築く、ときにキラキラとした深さと魅力をゆっくりと感じることができる物語が4つ描かれています。特に面白かったのは、辻村深月さんによる「タイムカプセルの八年」という物語です。担任の先生が大好きで、教師を目指そうとしていた子どもが、小学校を卒業するときに埋めたタイムカプセル。このお話は、そのタイムカプセルをず~っと見守ってきた「お父さん」の話が描かれています。自分の子どもの成長に、まったく興味を示さなかったこの父親……。しかし、そんな父親は子どもが小学校を卒業後、とある「黒~い」学校の秘密を知ってしまうのです!
「子どもの夢を奪いたくない、黒い秘密なんて子どもたちは知らなくていい!」と思った父親は、ときにモンスターペアレントに間違えられる危機を迎えつつも、子どものためにこっそりと奮闘します。その姿がとても印象的でした。時間が変えるものは確かにあるけれど、それを見守り続ける人もいる……。筆者はこのお話を読んで、そのことに気がつき、思わず涙してしまいました。
ほかの3つのお話も、時間が時空を越えるお話で、時に切なかったり、励まされたりするかと思います。出会いの春をこえ、人との繋がりが濃く絡みはじめるこの夏――。「時間」の持つ不思議な力が、あなたをソッと励ましてくれるかもしれません。よかったらぜひ、読んでみてくださいね。
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