読むと駆け出したくなるかも!? 心のザワザワが止まらない同窓会小説『太陽の坐る場所』がおススメ!
皆さんは「同窓会」には毎年欠かさず参加されますか? 筆者は断固、参加したくない派です……。見栄っ張りなので絶対に、かつての同級生と自分を比べて劣等感を持ってしまうし、学生時代、特に思春期に感じた、どす黒い「痛み」や「悪意」は、心の奥底に鍵をかけてしまっておきたいとも思います。
『太陽の坐る場所』(文春文庫)
今回ご紹介したい小説は、10月4日に映画公開も開始された、辻村深月さんの『太陽の坐る場所』(文春文庫)という「同窓会」のことが描かれた作品です。高校卒業から10年たった、28歳の元同級生たちが登場します。彼らの同窓会での話題は、人気女優となった「キョウコ」のこと。クラス会に欠席を続ける彼女を呼び出そうと、それぞれの思惑を胸に画策する男女の、心の裏側が描かれています。
思春期特有の邪気のない「悪意」もストレートに描かれており、心のザワザワが止まらないのに、最後まで読むと、涙が止まらなくなってしまう鮮やかなお話でもありました。
それでは少しだけ、中身をご紹介しますね。
見栄や嫉妬、痛み、劣等感……。でもその先にあるものは?
高校卒業から10年。「F県立藤見高校」の旧3年2組のクラス会は、卒業以来ほぼ年に1回、3月に開かれています。数年前まではもう一回、夏にも開催されていたようで、「皆、仲がよいな~」と思いながら読むと、そうでもないことが徐々に発覚していきます。
元同級生たちの話題は、もっぱら人気女優となった「キョウコ」のこと。なぜか同窓会を避け続ける彼女を呼び出そうと、真剣に策を練り、話し合い、画策を続けるのですが、そのメンバーたちが、一人また一人と連絡を絶っていくのです……。
高校時代は演劇部に所属し、現在は働きながら、誰にも明かさず劇団で活動を続けている美人の「聡美」。大手アパレルメーカー働いており、ミーハーな性格で、会社でキョウコと同級生だと自慢している「由希」。クラス会の幹事を何年も続けている「島津」。
皆が何かを隠し持っており、あの頃の出来事を10年たった今も、意外なほどに引きずっていることが明らかになっていきます。
ですが、彼らが高校時代や、そして今も抱き続けている見栄や嫉妬、欲望、そして悪意やセンチメンタルな感情を、笑える人はたぶんいないと思いました。
そして予想を裏切るような、鮮やかな希望が見えるラストには、「そんな黒い感情からとき離たれたい!」と願う、多くの人を救うものでもあると感じます。
本文に仕掛けられた、驚きのトリックにもご注目下さい!
この秋ぜひ読んでほしい、心が照らされるお話です。