~小説と音楽が繋がった! さみしさにそっと寄り添う、優しい恋愛小説集~ <『神様』(加藤ミリヤ/幻冬舎)2014年>
少し前の話になりますが、シンガーソングライター加藤ミリヤさんの3作目となる小説作品『神様』が、今年2014年の1月29日に発売されたことを、ご存知でしょうか?
ピンク色の表紙に「恋の矢が刺さって死んでしまった天使」が描かれ、5つの恋の矢が読者にそっと放たれる……少しだけ切なくて、可愛いお話です。
表題作「神様」は、2014年1月22日発売の完全生産限定盤・両A面シングル「Love/Affection/神様」に収録された楽曲「神様」の原作にもなっています。
また、ミュージックビデオ製作において加藤ミリヤさん本人が、初監督を務めたことも話題となりました。「本は苦手……。だけど音楽は好き!」という方にも、『神様』はぜひ読んで頂きたいです。埋まらない寂しさを持つ、どこかフワフワとした女の子たちが、大切で譲れない「何か」を得るまでのストーリーが描かれており、読後は少しの切なさと共に、明るい希望が胸に広がるお話です。
ピンク色の髪の女の子が恋をする
毎日が退屈で、ただなんとなく流されて生きることが嫌になって、「誰か私の人生を思い切り変えて!」と思うことってありませんか?
本書の表題作である「神様」というお話も、毎日が退屈でどうしようもない、「暇だよう」が口癖の、服を売る仕事をしている「ケイコ」という女の子が主人公です。
彼女はピンク色の髪をしていて、自己愛を顕示するかのような派手な格好をしているのに、自分のことが好きではありません。そんなある日ケイコは「世界は何のためにあるんだろう」と切り出す、長髪の男性と出会います。彼との出会いで、彼女の人生は一変。まるで「神様」に出会ったかのようにケイコ自身が変わり始めるのです。
他にも、好きな人に「細いな、もっと食え」と言ってもらいたいために、過酷なダイエットに挑むモデルや、周りの恋は叶えてあげるのに、自分は好きな人に思いを伝えられない天使たちがそれぞれの短編に登場します。
愛する人の存在で、退屈な日常が色を付けて意味をもつようになり、痛みも弱さも分かり合いたいと願う。その過程が、とても細やかに書かれているストーリーです。加藤ミリヤさんのこれまでの小説『生まれたままの私を』『UGLY』(共に幻冬舎)も、孤独を抱えながらも、「誰かに認められたい、愛されたい」と願う人々にそっと寄り添う、優しいお話でした。
良かったら、小説「神様」を読んだ後に、楽曲の方の「神様」も聞いてみて下さいね。
リズム感のある言葉と、寂しさに寄り添う優しいメロディーが、あなたをきっと、温かい気持ちにしてくれるはずです。