「死を招く絵画」現る! ~胸キュン必須の絵画ミステリ~ <『異人館画廊 盗まれた絵と謎を読む少女』(谷瑞恵/集英社)より>

2014.07.17

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「絵を見ただけで心が弱ってしまって、最悪の場合、死んでしまうことがある……」
今回ご紹介したい本は、そんな「呪いの絵画」が登場する美術ミステリです。美術ミステリなんて言うと、何だか難しそうで取っ付きにくいイメージがありますが、こちらの本はコバルト文庫でもあり、魅力的なキャラクターたちがたくさん登場します。胸キュン必須の恋模様も描かれており、また会話中心で進められていくので、とても読みやすいです。
それでは、美術の知識も身に付き、素敵な恋にもドキドキできる一石二鳥の物語を、少しだけご紹介致します!


『異人館画廊 盗まれた絵と謎を読む少女』(谷瑞恵/集英社)

皆さん「図像(イコン)」ってご存知ですか? 図像とは、主題・象徴など何らかの意味を表現している画像のことで、独自の意味を背景や小物として絵画に書き込む手法のことを言います。一見何のことはない小道具や背景にある物の絵が、神話の神々や聖人や、“愛”や“時間”などといった形のない意味さえ象徴していることもあるそうです。
時にはそこに、恐ろしい意味が込められている場合もあります。もちろん絵の意味が恐ろしくても、それによって人に危害を加えることはできないはずなのですが、今回のミステリはそうとも言い切れない「呪いの絵画」が登場しました。

絵画は美しい、だけど時に恐怖でもある!?

この物語の主人公は英国で図像学(イコノグラフィー)を学んだ18歳の千景(ちかげ)。18歳で大学を卒業した天才なのですが、祖父の死を機に、祖母が経営する日本の画廊に帰ってきます。帰国早々「死を招く絵画」とも言われる、ある盗難絵画の鑑定を依頼されるのですが、人付き合いの苦手な千景は一風変わった仲間たちとの仕事にとまどうばかり。また、仲介者が昔から気の合わない幼馴染の「透磨(とうま)」だと知り、ますます混乱します。
ツンデレな千景と、ドSな透磨のやりとりにニヤニヤしつつ、盗まれた「死を招く絵画」に隠された暗号にドキドキしていたら、一気に読み終えてしまいました。
中世から近世まで、人々は文字を読む代わりに絵を見て意味を読み取っていたそうです。人々の深層心理に影を落とす、悪魔的な象徴が描かれることもあったようですが、その今回その恐怖に屈することなく、果敢に挑んだ少女たちに、美術の魅力と謎を解く楽しさを、今回教えてもらったような気がします。
美術×ミステリー×恋愛という想像以上の面白さと、読み応え感が味わえる一冊です! 是非、読んでみて下さいね。

2014.07.17

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記事を書いたのはこの人

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Written by さゆ

87年生まれのフリーライター。 本とワンコとカフェが大好きです。 いつでもアワアワしています。 ツイッター:@sayulog  写真撮影ご協力:青山エリュシオンハウス 撮影者:福谷 真理子