本音はSNSでしかつぶやけない? 何者かになりたいひとたちへ~『何者』(朝井リョウ/新潮社)より~

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さゆ

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2014.06.15.Sun

自分自身が格好悪くて、凡庸な感受性しか持っていなくて、人より優れた側面なんて何もない人間であることを認められるようになったのは、筆者はごく最近のことだと思います。
もしかしたら、プライドの高さが邪魔をして、まだ格好悪さの全部を認めることはできていないのかもしれませんが……。
ですが、フリーライターの仕事でもそうなのですが、夢をつかむためには、思い切り虚勢を張って「できます! やります!」という姿勢を貫いて、自身が持つ数少ないカードを相手に見せ、ほんの少しずつ目標ににじりよっていくしか、方法はない。
「すごく格好悪い、そんなの知ってる。でも戦うしかないでしょ!」
そう言い聞かせて、今日もパソコンをカタカタやっている筆者です。

便利なのか、翻弄されているのか……。

今回ご紹介したい本は朝井リョウさんの直木賞受賞作でもある『何者』です。
就職活動を舞台にしたお話で「6人の男女が協力しながら厳しい就活を乗り越えよう!」というストーリーです。ただし、これは表面上での出来事。
拓人、光太郎、瑞月、理香、隆良、登場人物はみんなそれぞれTwitterをやっており、そのツイートが時々出てくるのですが、それがとってもえぐいです。
表面上は皆、角が立たないように若者ノリでワイワイやっているのに、Twitterでは裏アカウントまで取得し、本音と建前を使い分けている様子に寒気がしました。
海外留学、インターン、ボランティアに手作りの名刺……。手持ちの切り札を駆使して就活を乗り切ろうとする学生を、表で褒めてTwitterでバカにする。
就活に真正面から挑む人、興味のないフリをしつつも、陰で必死で頑張る人、内定が出た人の企業を検索し、ブラックな噂があると喜ぶ人……。
同じ黒髪で、同じリクルートスーツを着て、「内定」という同じ目標に向かって頑張っているはずなのに、一人一人の心の中はまるで違っていて、現代ツールを駆使する今どきの若者でありながら、そこはかとなく人間臭さが漂う小説でした。

ラストは、頭をガツンと殴られたような気分になる、衝撃の展開が待っています。
“匿名”という名で守られているSNSというツール。自身が決して傷つかない高みから、偉そうなことをいくらツイートしてみたところで、きっと「何者」にもなれません。
格好悪い自分を受け入れて、自ら革命を起こそうと立ち上がったとき、きっと何かが変わるのかな、と思いました。
それにしても、本音をSNSでしかつぶやけないなんて、便利だけれども、哀しい世の中だなあと感じます。

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記事を書いたのはこの人

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さゆ

87年生まれのフリーライター。
本とワンコとカフェが大好きです。
いつでもアワアワしています。
ツイッター:@sayulog  写真撮影ご協力:青山エリュシオンハウス 撮影者:福谷 真理子