あなたは本当に私のお姉ちゃんなの? ある「姉妹」にまつわる究極のミステリー! ~『豆の上で眠る』(湊かなえ/新潮社)より~

2014.06.28

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Googirl読者の皆様は、「イヤミス」と呼ばれる、「読んだ後に嫌な気分になるミステリー」を世に広めた、作家の湊かなえさんをご存知ですか? 2010年に松たか子さん主演で映画化された『告白』や、最近では井上真央さんと綾野剛さんが共演した『白ゆき姫殺人事件』などの作品は、ご存知の方も多いかもしれません。
湊かなえさんの作品は、読後確かに嫌な気分になるのですが、ミステリーの緻密な構成と、人の欲望や憎悪・弱さなどを容赦なく徹底して描く心理描写や、一人称での語り口に、読み始めたらすっかり虜になってしまいます。
読み終わったときは「嫌な気分になった……もう読むまい!」と心に誓うのに、新作が出ると必ず手が伸びしてしまうという、不思議な魅力を持つ作家さんです。


『豆の上で眠る』(湊かなえ/新潮社)

そんな湊かなえさんの新作『豆の上で眠る』(しかも待望の長編!)が今年の3月に発売されました。13年前に起こった姉の失踪事件にまつわる、読者の価値観を激しく揺さぶる、ある姉妹にまつわる究極のミステリーです。
13年前、当時小学一年生だった「結衣子」とその姉である三年生の「万佑子(まゆこ)」は神社で遊んでいたところ、姉である万佑子だけが、帰り道に何者かにさらわれ、失踪してしまいます。事件はテレビでも取り上げられ、誘拐事件として連日捜査も行われるのですが、まるで神隠しにあったように、手掛かりはつかめないまま時間だけが過ぎていきます。
しかし2年後、姉の万佑子はある日突然、衰弱した姿で発見され、再び家に戻ってくるのです。
ですが、妹である結衣子は帰ってきた「姉」に違和感を持ちます。「あなたは本物の万佑子ちゃん?」結衣子はそんな懐疑心を捨てることができず、姉に次々と二人しか知らないであろう質問を投げかけます。DNA鑑定をしても問題はなく、優しいお姉ちゃんなのに、でも、どこか違う……。果たして姉の正体は誰なのでしょうか?
大学生になった今の結衣子と、姉の失踪時の幼い結衣子の語りが交互に出てくるのですが、今回も人の心の闇の部分や、不快だと感じる所をチクチク突いてくるような、嫌な気分を味わうことができました。

しかし、私たちがいつも求めている「真実」や「本物」って何なのだろう? と考えさせられる内容でもありました。「真実の愛」や、偽物ではなく「本物」のブランド物が欲しいと願う気持ちさえも、根底からグラグラと揺さぶってくるミステリーです。姉の「万佑子」ちゃんの正体、是非本書を読んで確かめてみて下さいね。

2014.06.28

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記事を書いたのはこの人

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Written by さゆ

87年生まれのフリーライター。 本とワンコとカフェが大好きです。 いつでもアワアワしています。 ツイッター:@sayulog  写真撮影ご協力:青山エリュシオンハウス 撮影者:福谷 真理子