イケメンマーケティング男子Vol.6 中川元太さん

「ウェブマンガ市場を盛り上げ、マンガ家を育成・輩出する仕組みを作りたい」

20~30代のマーケティング男子を取り上げる本連載の第6回目は、コミックスマート株式会社で連載型新作マンガ配信サービス「GANMA!(ガンマ)」のマーケティングを担当する中川元太さんが登場。マンガ家と直接やりとりをしながら編集業務も担う、忙しくも充実した毎日。そんな中川さんのお仕事について聞いてきました。


西新宿にある本社オフィスの「牧場」のようなコミュニケーションスペースにて

GANMA!
「GANMA!」は、スマホ・タブレットで楽しめるオリジナルマンガ配信サービス。週3回(火・木・日)無料で配信される。戦闘モノ、ラブストーリー、ヒューマンドラマ、4コマなどジャンルも豊富。

ホームページを頼りに…マンガ家探しからスタート

まずは、中川さんのこれまでの経歴を教えてください。

大学卒業後、株式会社セプテーニに入社しました。配属されたのは札幌営業所。営業マンとしてひたすら新規営業をし、1年目で全社の新規受注数記録を塗り替えることができました。やり甲斐もあり働きやすい環境だったと思います。
一方で、新規事業の立ち上げに参加したいという気持ちをずっと持っていたところ、3年目の終わりに、社長直轄で新しくマンガコンテンツ事業を始めるにあたって、立ち上げメンバーが社内公募されたので、そこに手を挙げ、採用されて今に至ります。

応募当時、マンガコンテンツ事業のどのようなところに魅力を感じましたか。

僕が新規事業に対して求めていた3つの条件が揃っていると直感しました。
まず1つ目は、世界的に日本が優位性のある事業であること。2つ目に、ウェブのノウハウを活かせて、新興企業でも参入余地がある事業であること。3つ目は、素晴らしいメンバーと一緒に働けること。コミックスマートの代表は、セプテーニグループの主力事業であるインターネット広告事業を立ち上げ、国内トップクラスの規模に成長させた現セプテーニグループの代表です。その方を中心に、優秀なメンバーが集まる事業になると確信したからこそ話を聞いた瞬間に飛びつきました。

コミックスマートの一員になったばかりの頃、どんな業務を担当していましたか。

当時(2013年5月頃)は社長を除くと社員は3人しかいなかったので、人が少ないぶん何でもやらなくてはなりませんでした。逆に言うと何でもできる環境です。まずは、専属契約をしてくれるマンガ家を探し始めたところ、マンガ家と出会う機会もなく、知り合いにもいないことに気づきました…(苦笑)。マンガはずっと大好きで読んでいましたが、伝手すらなかったんです。そこで、著名なマンガ家を中心にホームページを探して、ひとりずつ連絡を入れていきました。

かなり泥臭い営業(?)活動をしていたんですね。

地道な活動でした。この他にも、出版社に連絡をしたり、マンガの専門学校を回ったり、時には有名なマンガ家が来ると言われる飲み屋に通ってみたりと、著名なマンガ家から新人マンガ家まで、いろいろなマンガ家に出会い、話を聞いてもらうために動き回っていたんです。

マンガ家を憧れの職業にしたい

そうして獲得したマンガ家をコミックスマートではどうマネジメントしているんですか。

マンガ業界でトップを走る人は本当に少なく、マンガの収益だけでは食べていけない人が大半です。コミックスマートでは新人マンガ家を対象に、ヒト・モノ・カネの全面で支援をし、プロのマンガ家として輩出することを目的とした育成支援プログラム「Route M」を実施しております。

「Route M」の仕組みについて具体的に教えてください。

「Route M」ではマンガ家のステージを5段階に分けて、そのステージに応じたサポートを行っています。まず、専属契約をしたマンガ家には支援金10万円/月が支給されます。一般的には、連載を開始して初めて原稿料が発生しますが、「Route M」では連載開始前から支援金を支払い、マンガ制作に集中できる環境を提供しているんです。連載が始まると支援金(15万円~/月)+「GANMA!」でのランキング報酬+その他(単行本収益の還元など)の支給に変わります。連載状況や人気などに応じてステージが昇格していくと、支援金が増額されるほか、支援内容も、アシスタントによる制作補助が受けられたり単行本が発行されたりするなど、手厚いサポートが受けられるようになります。
そのほか、全ステージのマンガ家に対して、弊社内にある画材付きのマンガ制作スタジオの無償提供や編集担当者によるサポート、原作・作画指導、デジタル機材対応などの勉強会の開催など、あらゆる面でマンガ家を支援しています。
※本支援体制は2014年5月現在のもの

駆け出しのマンガ家だと、家でマンガを描く傍ら、生計を立てるためにアルバイトに行く…なんて話も聞きます。それと比べるとかなり恵まれた環境で、マンガ制作だけに集中できますね。

そうですね。ウェブマンガだと投稿するだけというサービスも多いんですが、「Route M」ではマンガ家一人一人に担当編集者が付いて打ち合わせをしながら進めていきます。遠方に住むマンガ家も多いので、その場合はSkypeやLINEを活用しています。僕もマーケティング業務だけでなく、編集業務も担当しています。

編集をする上で心がけていることは何ですか。

よく言われますが、最初の読者として「第三者の目」で問題意識を持ちながら読むことでしょうか。なぜこのシーンが必要なのか、なぜこのキャラなのかなど、いろんなことを突き詰めて考えています。「このマンガつまらないね」と言うのは簡単です。でも何故つまらなくて、どうすればもっと面白いマンガになるのかを考えるのが編集者の役目。難しく感じることもありますが、やり甲斐は大きいです。1週間で700話ほど読むのも苦ではありません。1話が20ページ程度なので、毎週14,000ページほど読んでいる計算です(笑)。

休日もマンガを読んで勉強する日々

好きな作品を描いてもらいたい

想像を超える量でした…! 編集を担当するようになってから、メディアと接する上で変化はありましたか。

映画を観に行くとメモを取るようになりました。暗闇の中でなんとか書く文字なので、後から読めなくて困ることもありますが…(笑)。先日もある長編アニメ作品を観に行ったとき、頭の中でいろいろとツッコミながら観てました。観客として普通に楽しむというより、編集者的な見方をしてしまうことが増えてしまいましたね。

これまで行ったマーケティング分野での施策について教えてください。

アイドルの頂点を目指す少女達とオタク同士の戦いを描いた『ミリオンドール』という作品に、読者モデルの「くうにゃん」をモデルにしたアイドルキャラクターを登場させました。このことを、くうにゃん本人にブログで書いてもらったので、彼女のファンも作品を読みに来てくれていました。

マンガ家の方に向けて「GANMA!」で描くメリットを教えてください。

「GANMA!」はウェブなので、あえてジャンルを絞らないスタンスを取っています。マンガ家自身の創作意欲が沸くことが第一だと思っているので、マンガ家さんには出来る限り描きたいものを表現して頂くことにしています。もちろん人気が出そうなものということは前提で(笑)。 でもそれって紙の雑誌ではなかなか出来ないことなので、マンガ家さんにはメリットと感じて頂いているようです。

今後の目標を教えてください。

まずはまだまだ小さなウェブマンガ市場を盛り上げたいと思っています。そして近い将来「GANMA!」から世界中の誰もが知るマンガを配信していき、ゆくゆくはコミックスマートが芸能界の吉本興業やジャニーズ事務所と同様に、マンガ家を輩出し続けられる仕組みを創りたいと思っています。

中川 元太(なかがわ げんた)
87年生まれのマーケティング男子。コミックスマート株式会社でマーケティングからマンガの編集まで幅広い業務を担当。趣味は初対面と未体験。

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2014.05.22

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記事を書いたのはこの人

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Written by 池田 園子(いけだ そのこ)

岡山県出身。中央大学法学部卒業後、楽天、リアルワールドを経てフリー編集者/ライターに。関心のあるテーマは女性の生き方や働き方、性、日本の家族制度など。結婚・離婚を一度経験。11月14日に『はたらく人の結婚しない生き方』を発売。 写真撮影ご協力:青山エリュシオンハウス 撮影者:福谷 真理子