パリと中国を舞台にした愛の物語。「パリ、ただよう花」

はじまりの舞台はパリ。といっても、そこにはエッフェル塔もシャンゼリゼ大通りもありません。あるのは、雑踏と別れ話と重苦しい空気だけ。別れを告げるフランス人の恋人に、ヒロインの花(ホア)がしつこく食い下がるところから物語はスタートします。

異国の地での安らぎを失ったホアの不安を象徴するように、彼女の視界を表す映像はずっと揺れ続けます。小舟に乗っているような不安定な視点が、何を見ればいいのか、どこに行けばいいのかわからない、彼女の心を象徴しているかのようです。

なげやりで無感覚だった彼女の視点は、解体工のマチューとの出会いをきっかけに少し落ち着きを取り戻します。ただ、日常的な会話と衝動だけでつながる関係は常に危うく、激しく求め合ったかと思えば、突き放す、その繰り返し。ホアは、身勝手なマチューに翻弄されているように見えます。それでも、彼女が単純に「かわいそう」に見えないのは、彼女自身が二人の関係を「生きている実感」として求め、自ら選びとっているからなのかもしれません。
彼女には、水に浮かんでいるように見えて、実はしっかり根をはっている蓮の花のような強さがあります。振り回されるのは、それに気づかず、花を自分の元へ引き寄せようと水面を揺らす男性たちなのです。

漂っていたはずの彼女は、やがて、北京に戻り、安定した仕事と恋人を手に入れます。その上で、最後にもう一度パリに戻るホア。マチューの実家をたずねる時の佇まいには、すでにわかっている何かを確認する冷静さが感じられます。

過激な映像表現や描写よりも、恋愛におぼれる自分さえ冷めた目で見つめる女性の強さとしたたかさの方が印象的でした。ホアを通して自分の恋愛観を見つめ直せる、そんな映画です。

「パリ、ただよう花」
2013年12月21日(土)より、渋谷アップリンク、新宿K’s cinemaで公開。
第68回ヴェツィア国際映画祭のヴェニス・デイズ、
第36回トロント国際映画祭ヴァンガード部門出品作品

2013.11.25

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記事を書いたのはこの人

Written by 吉戸 三貴(よしど みき)

コミュニケーションスタイリスト。パリ留学、美ら海水族館広報、PRプランナーなどを経て、表参道で起業。ブランドPRや女性の悩み相談など、様々なコミュニケーションの課題解決をサポートしている。得意分野は、コミュニケーション(恋愛・仕事)、働く女性、ライフスタイル、仕事術など。 著書 『心に残る人になる たった1つの工夫「ありがとう」の手書き習慣』

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