読書熱が高まる!「本の書き出し」で気になる本と出会えるサービス
書店で本を買うときに一番のキモとなる書き出し。まったく心を刺激しない書き出しを読んでも、買う気にはならないのが本音。一方、書き出しにビビビとくると、読み進めずにはいられないーー。本の書き出しとはそういった魔力を持っている。そんな書き出しを集めたWebサイト「本の書き出し」があるのを知っていますか。
本の書き出しは、あらゆる本の「書き出し」を集めた、シンプルで美しいデザインのサイト。「そそる」書き出しがあると、すかさずクリックしてしまう。すると、どんな本の書き出しなのかが一目で分かる。そのあとすぐにAmazonのレビューを参照したり、購入したり、Twitterでツイートすることができる。書店に行かずとも、書き出しをパッと見て、読みたい本を選ぶことができるのだ。
左から2番目が中川さん
「昔から本の表紙買いをするのが好きなんです」と話すのは、本サービスのプログラミングを担当した中川峰志さん。立命館大学の現役学生だ。
リアルな書店でしか体験できない「表紙買い」は、Amazonではできないことだ。中川さんは書店でしか生まれないワクワク感を、いつかWeb上で再現したいと思っていた。そんな折に偶然上京する機会があった。
東京の街を歩いていてたまたま目にしたのが、昨年7月26日から9月16日に渡って、紀伊國屋書店新宿本店で行われた「『ほんのまくら』フェア~書き出しで選ぶ100冊~」だった。作家が悩みに悩んで決めた本の書き出しを印字して、本のカバーとしてかけて販売。「本の中身を見ずに書き出しだけを見て、本を選ぶのも楽しいですよ」と斬新でユニークな提案をしていたのだ。
そのフェアを見た中川さんは、この試みはWeb上でもできるのではないか、強く感じたという。そこで生まれたのが本の書き出しだった。最初の50個程度は中川さんとデザイナーのぴょんゆみょんさんが、人力でひとつひとつ入力して準備した。その後は利用者の投稿に任せていたところ、現在は500件を超える本の書き出しが登録されている。
しかし、開発の裏側には苦労もあった。Web上で馴染みのない「縦書き」問題だ。
「サイトのシステム自体は単純なのですが、Web上で縦書きを見せるのが難しかったです。すべてのブラウザが縦書きに対応しているわけではなく、どうしても表示が崩れてしまうブラウザも出てきます。そこの調整が大変でした」(中川さん)
小学生の頃からインターネットには触れていたものの、実際にWebサイトを作り始めたのは1年ほど前だと中川さん。大学の夏休みはとにかく長い。することがないなと退屈していたときに、以前から興味があったプログラミングの勉強を始めた。最初はひとりでしていたため、なかなか進まなかったが、2月から友達に誘われて株式会社Campusという、学生が運営している会社組織に入る。
まだプログラミングについてあまり分からない中、5人くらいでWeb製作をするようになった。渡された参考書や仲間の指導をもとに、実践的に製作を進めていくうちに、プログラミングは自然と身についていった。3分動画でプログラミングを学べると評判のサイト「ドットインストール」、プログラマーの技術情報共有サービス「Qiita」、エンジニアのためのQ&Aサイト「Stack Overflow」、書籍『パーフェクトPHP』なども役に立ったそう。
中川さんは「プログラミングは自分で何かを作るためのツール」と話す。最初は暇つぶしで始めたものの、みんなで何かを作り出すのは楽しいと、心から感じるようになった。
1月半ばにCampusを「卒業」した。全員で技術を学びながら、お互いに切磋琢磨する組織だったが、そこで学んだことを活かし、個人でもサイトやサービスを製作していくつもりだ。今後作りたいものはいろいろあるが、2月半ばに旅に関するサイトの公開を予定している。そのほか、電子書籍をもっと簡単に買えるサービスや小説を書いているアマチュアの人が活躍できるサービスも、今後作っていけたらいいなと話す。
本の書き出しについては、「電子書籍を探す」機能をもっと強化することや書店とのコラボ、書籍版以外に別途漫画版を作るなど考えているという。今後、どんな新しい取り組みを見せてくれるのか楽しみです。
▽ 「本の書き出し」
▽ 中川峰志さん
立命館大学の学生。「本の書き出し」では企画・プログラミングを担当。