ときめく対象は人・モノ・コト、何でもいい【恋愛にルールはいらない #12】

男の人とふたりきりでごはんを食べたのは、直近だと6月半ばのこと。カレンダーを見返すと、その前は5月下旬。この原稿を書いているのが7月下旬。自分の日常生活から、生身の男の人という要素がすっかり抜け落ちて久しい……。

少し前の言葉でいうと、この状態は明らかに「干物女」なのでしょう。哀れみや同情が込められた、けっこう悲しげな言葉。でも、自分が干物化している気はしません。これは強がりでも意地でもなんでもなく……。

1年前の自分だったら、「何この状況……枯れてる気がする」「たまにはデートしたい」「男の人とごはんに行きたい」「しっとり系な予定を作りたい」という一種の欲が先走り、出会いを求めに行っていたし、攻めの姿勢をとっていました。

ところが最近は、アグレッシブさはすっかり影を潜め、FacebookやLINEの友達リストから誰かを誘うこともなく、気の合う女の人と食事に行くか、ひとりでふらりと出かけるか、といった静かな日々を過ごしています。


「何もない時期」を穏やかに過ごす

編集者/ライターという、新規の出会いが多い仕事ではあるものの、気になる人が浮上して初めて、なんらかのアクションを起こし、いざ食事デートをと発展していくのが定番。せっかちなので、誘われるのを待つ暇があれば、さっさと自ら誘うのです。

ただ、冬~春にかけて気になる人物が2名現れ、それぞれ1~2度デートをしたものの、「脈はない」と判断。「来るもの吟味し、去るもの追わず」の精神で生きているので、2名への思いを早々に断ち切りました。

その後、リアルで出会う新規の人々に対し、心拍数が上がることなく、平常心のまま穏やかに過ごしています。そういう「何もない時期」があっても、少しもおかしなことじゃないのです。

何もない時期を、無理やり「何かある時期」に変えていた、人為的に調整していたのが昔の自分でした。でも今はこう考えます。

無理にデート相手を掘り起こしても、いいことなし

「既存の男の人リストを引っ張り出して、『嫌いでもないけど好きでもない相手』を誘って、デートのお願いをするのはいかがなものか? その時間、お互いにとって無意味じゃない? そこに充てる時間とお金は、別のことに使ったほうが有益じゃない?」

ある意味で偏ったこの考えにより、結果、多くの時間をひとりで過ごすことになるのですが……。

ひとりで外食する。ひとりでひとり分の自炊をする。ひとりでトレーニングをする。ひとりでプロレスを観にいく。ひとりで旅をする。ひとりで買い物に行く。ひとりで漫画喫茶に行く。ひとり自宅でDVDを観て、本を読む。というように、もともと高かったひとり耐性が、上昇し続けているのを確信します。

他人からすると、干物女化現象が起きていて、恋愛の重要度を高く設定している人からすると、「大丈夫? 砂漠化してない?」「寂しい暮らしだね」と心配される可能性大ですね。

日常でときめく瞬間があれば、人は枯れない

でも当の本人からすると、砂漠化なんてもってのほかで、むしろオアシスがあります。潤いであふれています。だって、夢中になるものがあって、感情を揺さぶられて、ときめく瞬間が日常の端々に発生しているから。

そう、普段からときめく出来事があれば人は枯れません。ときめいている時は、心と頭をフルに使います。体中にエネルギーがみなぎる感覚があります。ときめきを繰り返していれば、潤いが枯渇することもない。付け加えると、リアルなデートも恋愛もしていないけれど、肌コンディションは抜群に良いです。

基本、何にときめいてもいいんです。相手が何であったっていい。リアルな人間ではなく、ドラマや漫画、アニメの登場人物でもいいし、動物でもいいし極端な話、モノでもいい。

時に目が離せなくなるほど心を奪われ、心拍数が上がったり(ドキドキしたり)、「ああ、このまま見守っていたい」と穏やかにうっとりしたり――その対象は何だっていいのです。

恋愛は「嗜好品」のひとつ

私の場合は、それが趣味のプロレスであり、好きなプロレスラーであり、自分が名前を付けて育てている植物だったり、街中で出会うトイプードルだったりします。対象はいろいろです。

そうやって日常の中で、何かしらときめいていると、現実世界でがむしゃらに出会いを探したり、リストを掘り起こしてデート相手を取捨選択したりすることもなくなります。

生身の男の人が身の回りにいないことを卑下したり、慌てたりもしなくなる。「恋愛の筋肉(はたして、そんな筋肉があるかは不明だけど)量が落ちている……」と悲観することもなし。

結果、生きていて楽になります。恋愛をしていない自分をあえて追い詰め、生きづらくしなくったっていい。恋愛はしてもしなくてもいいし、心を刺激してくる人がいたら近づけばいいし、いなければ仕方がない。ただ、それだけのことなのです。「恋愛は嗜好品」。そう考えると楽になるかもしれません。

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2017.08.03

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記事を書いたのはこの人

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Written by 池田 園子(いけだ そのこ)

岡山県出身。中央大学法学部卒業後、楽天、リアルワールドを経てフリー編集者/ライターに。関心のあるテーマは女性の生き方や働き方、性、日本の家族制度など。結婚・離婚を一度経験。11月14日に『はたらく人の結婚しない生き方』を発売。 写真撮影ご協力:青山エリュシオンハウス 撮影者:福谷 真理子