オリジナルな女が選ばれる ――『バチェラー・ジャパン』から考えたこと【恋愛にルールはいらない #9】

『バチェラー・ジャパン 』にすっかりハマった私。ある週末から「バチェラー廃人」と化し、1日に数時間ぶっ続けで番組を観続けました。なぜそこまでひきつけられたのかというと、気づきや考えさせられることが、あまりにもたくさんありすぎたから。
そこで連載「恋愛にルールはいらない」#9では、『バチェラー・ジャパン』を観て考えたことをつづります。


そもそも『バチェラー・ジャパン』って?

『バチェラー・ジャパン』は2002年にアメリカで放送開始し、今では世界30か国で製作されるほどの人気を誇る、恋愛リアリティ番組『The Bachelor(ザ・バチェラー)』の日本版(Amazonオリジナル番組)です。そのシーズン1が2月17日〜4月28日まで全12エピソードが放送され、一部ネット上で話題になっていました。

ひとりの男性を25人の女性が争奪する『バチェラー・ジャパン』

番組の内容を簡単に説明すると、多くの女性が理想とするであろう「素敵すぎる独身男性(バチェラーは独身男性という意味)」が、多数の女性のなかから最高のパートナーを選び、最後はひとりの女性に結婚を前提とした交際を申し込む、というもの。
『バチェラー・ジャパン』では地位も名誉もお金も麗しい外見も……なにもかも“持っている”独身男性・久保裕丈さん(35歳)が、厳しい審査に通過した25人の女性たちと、ラグジュアリーな空間、環境でいろいろなデートを繰り返しながら、運命の相手となるひとりの女性を選んでいく、というリアルで残酷な恋愛サバイバルが繰り広げられます。
「なにそれ、今すぐ観たい!」と思った方は多いのでは? Amazonプライム会員であれば、無料で全話観られるので、ぜひ全12話を最初から通して観てほしいです。

25人のなかでどうやって存在感をしめすか

しかし、女性25人ですよ……。考えてもみてください。自分がバチェラーだったなら、25人もの女性の顔と名前をどうやって覚えるか。女性の立場からすると、どうすれば顔と名前を覚えてもらえるか、存在を認識してもらえるか、戦略的に考える必要があります。
エピソード1でバチェラーと初対面を果たす際、25人の女性たちはバチェラーに対し、いろいろなアピールをします。照れながらあいさつする人・ボディタッチする人・握手する人・ハグする人……25人いれば25のやり方があるというわけです。
女性が10人以下にしぼり込まれたエピソード6では、女性たちがバチェラーに「サプライズ」を用意して、バチェラーを喜ばせようと企画します。そこでもケーキを作る人・椅子を作る人・絵を描く人・写真を撮る人・アクセサリーを作る人・足湯を用意する人・バチェラーと一緒にピアノを弾く人……それぞれの創意工夫がみてとれます。

ひとつを選ぶ=ほかの選択肢を捨てる、ということ

さて、現実世界の話に戻ります。男性:女性=1:25と限られた人数で展開される『バチェラー・ジャパン』よりも、私たちが住むリアルな世界の方が、いい男をめぐる競争率は高いといえます。それゆえ25人の女性たち以上に、自分PR戦略をたくみにやっていかなければなりません。
「選ぶ」「選ばれる」という表現をあまり使いたくはないのですが、わかりやすくするためにあえて用います。自分が誰かひとりを選ぶとしても、誰かひとりから選ばれるとしても、ひとつの選択肢を選ぶ=その他の選択肢を選ばない=その他の選択肢を捨てる、ということ。
選択肢Aを選んだとき、選択肢Aには他の選択肢にはない“差分”があり、そこにひかれたから、という理由があるはずです。具体的にどんな違いがあるのか、言語化するのが難しいケースもあるかもしれませんが、直感や感覚でなんらかの差を感じとっているはず。

他人のコピーではない、「オリジナル」が最終的に勝つ

つまり選ぶ、選ばれることを意識したときは、他人と同じことをしない方がいい、ということです。人とかぶる行動をしても、そこに差分は生まれません。
たとえば「あの本に『軽めなボディタッチを肩にするといい』と書いてあったから」「あのコラムに『女性から好意をアピールすると男性が逃げていく』と書いてあったから」などと、先人の伝えをうのみにしてまったく同様のことをしても、「コピー」でしかないわけです。
誰かの記憶に残りたいなら、誰かに「この人は!」とハッとしてもらいたいなら、「オリジナル」ななにかをしたほうが勝ちをとりにいけます。とはいえ、とにかく奇抜なことをしよう、と言っているわけではありません。
ただ、そのときの状況や相手との関係性などをベースに、次はどんなアクションをとればいいのか、うまくいきそうか、自分の頭でシミュレーションして、行動にうつそうよと言いたいのです。使い古された技を繰り出しても、新鮮味も面白味もないと思います。

「あざと賢い」女性たち

『バチェラー・ジャパン』でも「残る(選ばれる)女性」は、自分の頭でとことん考えつくし、自分の見せ方やアピール、行動を決めている人たちでした。私の造語ですが、「あざと賢い(あざとい+賢い)」というほめ言葉を贈りたい。そんな賢者たちです。
彼女たちからは、とにかくバチェラーに振り向いてもらいたい、自分のモノにしたい、という私欲だけでなく、他者(バチェラー)を喜ばせたいという欲もみえました。我欲でギラギラしているだけでは、終盤まで選考に残るのは無理でしょう。
自分で考えて、考えて、考えて、ていねいに準備した上で、そのときどきで最良だと予想できるアクションをとる。当たり前かもしれませんが、これが成功に一番近いやり方です。

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2017.05.05

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Written by 池田 園子(いけだ そのこ)

岡山県出身。中央大学法学部卒業後、楽天、リアルワールドを経てフリー編集者/ライターに。関心のあるテーマは女性の生き方や働き方、性、日本の家族制度など。結婚・離婚を一度経験。11月14日に『はたらく人の結婚しない生き方』を発売。 写真撮影ご協力:青山エリュシオンハウス 撮影者:福谷 真理子