ワンクール恋愛女の結婚道Vol.15 不動産購入時に向き合った結婚の現実

恋愛がワンクール(3か月)しか続いたことがない、恋愛コンプレックスの塊だった筆者。26歳のときに出会った男性と1年半の交際を経て結婚しました。結婚・恋愛に悩む方のサプリメントになるコラムをお届けします。


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冒頭から、結婚に関して身も蓋もない発言をしたいと思います。「結婚とはまぎれもない現実です」といいきらせてください。つい先日、私はこの事実にようやく気づき、しばし呆然としたのでした。

「そんなの元からわかっていたことじゃない?」とおっしゃる方もいるでしょう。たしかに既婚者の諸先輩方をはじめとして、その手の意見は幾度となく耳にしてきました。本当に何度も、あらゆるところで。とはいえ、あまり本気で受けとめてはいませんでした。

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というのも、私たちは夫婦二人共働きかつ子どもがいないぶん、かなり自由な暮らしを謳歌していることもあって、いわゆる現実感なるものとは、無縁に生きてきたせいかもしれません。

一応籍は入れているものの「夫婦だから~だ」「結婚したから~しなければならない」といった、ガチガチのルールみたいなものは設けていないのです。お互いを尊重しあいながら、二人の時間も大切にして、お気楽に生きてきました。

投資用ワンルームマンション購入のドタバタで……

そんななか、重厚感のある(?)現実が突然、私をおそいました。Twitterで「結婚って現実しかないなぁ」とつぶやかずにはいられないほど、慣れないテーマにたいし、ある種のしんどさをおぼえてしまったのです。

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さかのぼることおよそ3週間前、私たち夫婦は投資用の不動産を内見していました。当初は自分たちが住むための不動産を探していましたが、予算や築年数・広さなど、希望の条件にマッチする物件がなく、このタイミングではないなと諦めざるを得ませんでした。

そのかわりにワンルームマンションを買って、不動産を所有・運用する経験を身につけようと夫婦間で話がまとまり、実際に物件探しをと次の行動にうつったのです。

条件に見合う物件を5~6部屋内見し、1部屋にしぼってからは、金額をどれくらいさげてもらうか夫婦で話しあったり、夫が顧問税理士に相談をしたり……といっきに慌ただしくなりました。

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夫が代表者として窓口になってやりとりをしてくれたため、私は自分の定期預金解約手続きにいったのと、自分の顧問税理士に夫婦間でのお金の貸し借りやその証明をどう残しておけばいいか――と相談した程度です。

交渉した金額で購入できることがきまり、物件オーナーとの契約日を2日後に控えた週末、私と夫は神楽坂方面へ向かう電車に乗っていました。家を出発してからその間、ずっとしていたのはお金の話でした。

金額が大きいとビジネスっぽいやりとりになる

1人何百万円ずつ出すか。はじめは私が多く出してあとで夫が月◯十万円ずつ私に返済する。返済分は振込にするか現金払いにするか。夫婦間でも金銭貸借契約書が必要になると税理士に聞いた……など、超ビジネスライクなお金の話をえんえんとしていたのです。

契約日にはまとまった額の大金を入金しなくてはいけないわけで、それまでに詰めておかなくてはならないことは当然たくさんあります。でも、ここまで具体的で長期的、さらに規模の違う金額感の話をしたことはなかったし、考えたこともなかった。

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普段の私たちからは想像できないほど、とにかく真剣に話しました。ずっと真顔で。だからでしょうか、少し心がぐったりしてしまったのです。

でも、これしきのことで疲れてしまうのは、私が軟弱でひよっこだということ。家を買うとき、子どもを受験させるとき……非日常な“桁”のお金が動くシーンでは、当然夫婦間で密にお金の話をするはずですから。

私たちは今回の不動産投資ほど、大きな買いものをした経験はありません。この先、自分たち用の不動産を買うときが、おそらく人生初のビッグな買いものになるはず。そのときもきっと、じゃっかん疲弊しながら大きなお金の話をするのでしょう。

お金が絡む話を先送りにしてはいけない

お金というものは、気持ちを急速に現実へと引き戻すもの。否が応でも現実を突きつけてくるもの。お金は好きですが、大金がからむ話を自分ごととして捉えなければならないとき、めんどうでもあるし、やっかいなテーマだなと感じることがあります。

だからといって、そこから目をそむけるわけにはいきません。逃げていてもはじまりませんし、次へ進めません。あとまわしにすべき問題ではないのです。いつかは必ず向き合わなくてはならないものですから。

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今回、二人でたくさんの物件を見にいき、納得いくまで話し合い、計画的に動いて無事に購入までこぎついた経験は、なにものにもかえがたいものになりました。とても現実的だったけれど、こうやって人は一歩ずつ、大人の階段をのぼっていくのだな――と。

結婚生活が継続するにつれ、こうした現実という名の“ブロック”は、次第に高く積みあがっていくのでしょう。それに比例するように夫婦間の信頼は厚くなり、チームとしての意識も強くなっていく――そんな未来を目指していきたいです。

2015.08.27

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記事を書いたのはこの人

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Written by 池田 園子(いけだ そのこ)

岡山県出身。中央大学法学部卒業後、楽天、リアルワールドを経てフリー編集者/ライターに。関心のあるテーマは女性の生き方や働き方、性、日本の家族制度など。結婚・離婚を一度経験。11月14日に『はたらく人の結婚しない生き方』を発売。 写真撮影ご協力:青山エリュシオンハウス 撮影者:福谷 真理子