お金で買うのは精神の安定!? 「恋愛教材」を売っている会社でアルバイトをして学んだこと

2015.03.29

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現在細々と書く仕事をしたりしなかったりしている筆者ですが、学生時代にも執筆関係のアルバイトをしていました。某求人サイトに掲載されていた「WEBライター募集」という名目に惹かれて働くことになったのは、上野の一角にある小さなベンチャー企業。ネットで「恋愛教材」を販売している会社でした。
当時担当したのは『夫の心を取り戻すための催眠DVD』という教材……の、成功者の喜びの声の執筆。「神奈川県に在住の30代主婦M.Oさん」や「埼玉県在住の20代独身女性K.Nさん」になりきって「この教材のおかげで、夫から再び愛されるようになりました!」といううさんくさい文章の作成でした。よく雑誌の後ろのほうのページにあるいかがわしい宣伝と同じです。
今回はそこでの経験をもとに気づいたことをご紹介します。


生まれつきモテる人のモテテクを聞いても参考にならない

さまざまな恋愛教材がありましたが、メインはモテない男性に向けたものでした。

・彼氏持ちの女を落とすための略奪成功テクニック
・10日間でリアル彼女をつくる
・モテ会話マスタープログラム

といったマジャーどころから、ひどいものだと

・女性を完全服従
・プロの貢がせ方

なんてものまでありました。恋愛教材の制作過程は、社長であるイケメンのモテ男が自らの経験をもとに得たテクニックを箇条書きして、社員がそれに肉付けしていくという仕組み。元来のモテ男(というかチャラ男)である彼が提案したものなので、無理やり迫るとか、優しくしてから距離を置くとか、恋愛経験があまりない男性には全然参考になるものではありません。
生まれたばかりの赤ちゃんに、いきなりマラソン大会に出場しろと催促しているようなものでしたが、それでも藁をもつかむ思いでモテようと購入に至る人がたくさんいました。

お金で買うのは「精神の安定」

恋愛教材の価格は1冊1~2万円。DVD1枚だと3万円するものもありました。教材はきちんとした本になっているものではなく、プリントアウトした紙をファイルでまとめた簡素なもの。DVDのパッケージもカラーコピーした紙を1枚1枚両面テープで貼りつけていくというオリジナル感満載のものでした。いったいどれだけぼったくってたんだろう……?
ところで教材には「購入した人は電話で恋愛相談を無料でできる(期間限定)」という特典がついていたので、会社にはよく電話がかかってきていました。電話の応対をするのは40代の坊主頭の独身男性で、自称「恋愛経験ゼロ」でした。そんな男性が電話では、恋愛経験のプロとして相談者を励まします。
「大丈夫っすよー! それ確実にイケますって! え? ダメでも次がありますよー」
お客さんに対する対応ではないフランクなノリなのにクレームはほとんどなく、むしろ感謝されることも多かったようです。相手にアドバイスをするというよりは、同情や応援がメイン。恋愛教材を何冊も購入していく人は、現状を変えたいという強い思い以上に「自分は大丈夫だと安心したい」という気持ちが大きかったのかもしれません。

自分を変えずに安心を買おうとすると搾取される

というわけでその会社を2か月足らずで辞めたわけですが、数年後に知人に誘われて出席した無料食べ放題イベントで会社の人と再会しました。なんとそのパーティーの主催はその会社の社長だったのです。さらに後で知ったのは、そのイベントは食べ放題ではなく「婚活パーティー」であったということ。確かに立食形式の食べ放題なのにやたらと人に話しかけられて変だなぁと思ったのですが、どうやら私はサクラ要因とされていたようです。
そして聞いたところによると男性はこのパーティーに2万円もお金を払っているというではないですか。
おそらく私以外にも「無料の食べ放題イベント」と聞いて出席していた女の子はたくさんいるでしょう。そしてそうとは知らず、手短に出会いを求めて高額を支払って出席した男性もいっぱいいるはず。

自分を変えずに安心するために教材や出会いにお金をつぎこんでも騙されて搾取されるだけです。人に幸せに導いてもらおうとして依存するよりも、自分で踏み出す一歩が大事なんだなぁ……と思った出来事でした。

2015.03.29

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記事を書いたのはこの人

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Written by 小林リズム

91年生まれのライター/コラムニスト。 IT系メディアの広告や編集者を経てフリーライターに転身。 育児系インフルエンサーとして「ゆるい育児」に関する話題を発信中。 コラムでは婚活・ママ・子育てのジャンルをメインに執筆。 ブログ:http://kobayashike.com/ インスタグラム:https://www.instagram.com/kobayashirizumu/ note:https://note.mu/uchidareiko