ワンクール恋愛女の結婚道Vol.9 「夫婦は他人」という真実をどう受け止める?

恋愛がワンクール(3か月)しか続いたことがない、恋愛コンプレックスの塊だった筆者。26歳のときに出会った男性と1年半の交際を経て結婚しました。結婚・恋愛に悩む方のサプリメントになるコラムをお届けします。


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「夫婦なんて所詮他人だから」。母の口から何度も聞いた発言です。当時は「結婚して家族になったのに、なんて冷たいことを言う人だろうか」と呆れた私は若かった。でも自分が結婚した今は「その通り。夫婦は他人!」と強く主張したいです。
そう言うと誤解されるおそれがあるので、あらかじめ宣言しておきますが、私と夫の夫婦仲は冷めきっていません。むしろ仲よしで、私は彼を溺愛していますし、愛情を量で表すならば、私のほうが多い自信があります。

不仲な両親を見て「結婚に希望なんてない」

一方で、私の両親は離婚する気配はないものの、1ミリも気が合わないふたり。短気な母がのんびりな父に対して常に怒っていて、20数年前から逆モラハラ・逆DV(いずれも軽度)の気がありました。
「おとう(父)は素直じゃないから、私が言うやり方を全然参考にせん。そんな人間はもう知らんわ。どうせ他人じゃし勝手にすればええ。アンタら子どもはそういうわけにはいかんけど」と吐き捨てるように言うことも。

もし私が結婚できたとしても、こんなに不仲な夫婦になるのだろうか。実家で過ごした18歳まで、悶々としていた時期もありました。彼氏なんていなかったので、まったくもって無意味な心配です。

ただ、そんな両親を見て多感な時期を過ごした子どもは、結婚に対しておそろしく冷めた考えを持つようになります。「甘い新婚生活なんてないないない! むしろ気持ち悪いし」「しばらくしたら会話ゼロになるんだろうな」など否定的なイメージしか持てません。

「50代夫婦がデートなんてするの!?」と驚いた

実家を出て、東京で暮らし始めた大学生の頃、ある種のカルチャーショックを受けました。スーパーでアルバイトをしていたときに、50代のオバちゃんと仲よくなったのです。貧乏学生でバイトをやたらがんばっていたので、オバちゃんが心配してくれたのか、「ごはんを食べにきたら?」と度々おうちに呼んでくれるのです。

母とほぼ同世代のオバちゃん宅に、何度おじゃましたことか。オバちゃんは料理上手だったので、誘われて断る理由もなかったのです。オバちゃんとはいろいろな話をしました。部屋には旦那さんと旅行先で撮ったであろう写真がたくさん飾られていたので、「ん?」と思った私はすかさず質問しました。

「旦那さんと仲がいいんですね。よく旅行に行くんですか」
「1年に2~3回くらいかな。でも土日はよく出かけてるよ。一緒にテニスも習ってるし」

いかにも仲よしなツーショット写真に続き、週末デート・エピソードにのけ反りそうになりました。母世代の女性が夫とデートをしているなんて、これは現実なのか、と。両親の姿に置き換えて想像しようとしても不可能でした。それくらい驚いたわけです。

バイトを辞めてからは、オバちゃんと会うことはなくなりましたが、このコラムを書いている途中で、彼女のことを思い出しました。私はあのオバちゃんと似ているな、と。夫のことを聞かれると目をキラキラさせて、楽しそうに話すあのオバちゃんみたいだな、と。

「気まずい話題」も議論のテーマにする

結婚歴が一年半と浅いのであれですが、人から夫のことを聞かれると、自然と楽しく(面白く)なって口元が緩み、ニヤニヤしながら話してしまうのです(気持ち悪くて申し訳ないです)。
これはノロケではなく「自然現象」に近いもの。家で夫を愛でている自分を思い出したり、夫のキュートな表情や言動を思い浮かべたりすると、自然と笑みがこみ上げてきます。あぁ、かわいい人……と。変ですね。

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昔は結婚に幸せなイメージを持てなかった私ですが、母とは違う結婚の形を実現できていると思います。でも、私は母の遺伝子を受け継いでいて「夫婦仲が冷えきるもと」を多少は持っています。でも、それが作用しないのは、どんな形であろうと、きちんとコミュニケーションの時間をとっているから。

ある女友達からは「変態(笑)」と言われましたが、私は夫の頭皮やうなじ、首周りを匂うのがたまらなく好きです。たまたま近くにいれば、抱き締めて(捕まえて)匂いを嗅ぎますし、朝起こしにいくタイミングで「チャンス到来」とニヤつきながら、鼻をくっつけて匂いを吸い込みます。これはボディタッチ的なコミュニケーション。

もちろん言葉を介したコミュニケーションもたくさんあります。たとえば、小さな文句も深刻な不満もすぐに共有。カップル間ですらタブー視されるような性的な話題も真正面からぶつけます。「夜中遅くに帰宅した夫はこんな議論に巻き込まれて面倒だろうな」とうっすら思ったとしても遠慮しません。今日明日で解決するテーマではないだろう、とわかっていたとしても切り込みます。

「言わなくてもわかるでしょ」は乱暴すぎる

「それくらい察せるでしょ。私怒ってるのよ」と相手任せにするのは簡単です。でも、それはあまりにも雑すぎませんか? せっかく人がふたりいるのに、コミュニケーションが生まれているとはいえません。「俺の背中を見てついてこい」的な昭和の頑固オヤジでもないですから、もっと話をしましょうよ。

大前提として、私たちが意識しなければならないのは、夫婦は所詮他人だということ。それぞれがまったく異なる環境で育ち、一人前の大人になり、何十年も生きているわけです。そんな他人のふたりがくっついて「家族」という単位を作る――これが夫婦というものです。

世間のその他大勢の他人と比べると、夫婦は自分と最短距離にいる他人。それでも他人は他人です。なぜ、必要な言葉を発することなく「私の気持ち、わかるよね?」と傲慢な考えができるのでしょうか。

夫婦は所詮他人。この言葉は真実です。だからこそ、その捉え方・受け止め方次第で、濃密なコミュニケーションが発生します。私は夫が他人だからこそ、もっと話をしたいし、知りたいし、食を共有したいし、触れたいし、好きでいたい。そう考える側にいたいと思います。

2015.03.27

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記事を書いたのはこの人

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Written by 池田 園子(いけだ そのこ)

岡山県出身。中央大学法学部卒業後、楽天、リアルワールドを経てフリー編集者/ライターに。関心のあるテーマは女性の生き方や働き方、性、日本の家族制度など。結婚・離婚を一度経験。11月14日に『はたらく人の結婚しない生き方』を発売。 写真撮影ご協力:青山エリュシオンハウス 撮影者:福谷 真理子