わたしらしい起業のかたち Vol.9 ネイリストryoさん~3人の育児をしながら自分のペースで仕事をすること~

編集者/ライターの池田園子が、週末起業家や個人事業主、経営者など、さまざまなスタイルで起業している女性にインタビューする連載です。

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妊娠に出産、育児――男性と比べて人生の選択肢を多く持つ女性。とくに子どもを持つと働き方を再考する女性は増えます。このまま会社に勤め続けるか、自分のペースで働く環境を選ぶか。後者の場合、独立を選択する女性が大半でしょう。

自宅でネイリストとして活動しながら、セルフネイルの情報を発信するネイルブログ「ネイルアートBOOK」を主宰するryoさんもそのひとり。ryoさんの起業ストーリーを見てみましょう。


第二子出産を機にキャリアを一時中断

Q. ネイリストになる前は、どんなライフスタイル、ワークスタイルで過ごしていましたか?

A. 大学入学までイタリア・ミラノのインターナショナルスクールに通っていました。絵を描いたり物を作ったりするのが幼い頃から大好きで、美大に進もうと考えたこともあります。しかし、親のすすめもあって、帰国して立教大学に入学。卒業後はアパレル関係の仕事に就き、販売を経験した後、MD(商品企画)やVMD(商品演出)に携わりました。
好きなファッション分野で、美的センスを問われるVMDに関われたのは、私のなかでとても大きな経験で、楽しく仕事をさせてもらっていました。

ただ、激務のなか、双子を妊娠していることが発覚して、デスクの引き出しが開かないくらいのお腹になったところで産休に入ることに。
出産後は双子育児に追われ、なかなか仕事復帰に踏み切れず、育児休暇をいただいていたのですが、第三子を妊娠したことで退職を決意しました。
しばらくは育児に専念していましたが、子どもたちのためにも家でできる仕事をしたいと、子どもの幼稚園入園を機に、ネイルスクールに通い始めました。

資格取得後は自宅で知人を中心に施術しながら、同時にサロンに勤務して経験を積みました。

「自分流」「自分らしさ」を大事にしながら働ける環境が心地よい

Q. アパレル業界からネイリストの道へ進み、やがて独立。この職業を選び、フリーになったきっかけはなんでしたか?

A. 自宅でのネイルは、ネイルスクール時代にハンドモデルをしてくれていたママ友だちが継続してきてくれて、友だちの友だちへ……という形で口コミで評判が広がり、お客さまが増えていきました。
とくに宣伝もしていないのですが、気づいたときには自宅サロンになっていた、という感じです。だから、自分が独立したり、起業したりした感覚はないんです。

自宅ネイルサロンやネイルにまつわる執筆活動のいいところは、なんといっても「自宅で仕事ができる」こと。子どもを持つ母親にとっては、すごく意味のあることだと思います。
また、最大の魅力は「自分流でいい」ことでしょうか。成功も失敗も自分次第ですし、デザインもとことん私流。それを心から楽しんでいます。

お客さまの好みに合うデザインを形にする作業にやりがいを感じる

Q. ネイリストとして活動していて、どんな瞬間に喜びややりがいを感じますか?

A. ジェルネイルの施術は2時間前後かかるため、その間にお客さまといろいろなお話をさせていただくのが楽しみのひとつです。
自分よりも先輩にあたるお客さまからは、子育て術を伝授していただいたり、生活の知恵や料理のコツを教えていただいたり。同世代のママさんとは子どもの話で盛り上がり、育児の情報交換をすることもあります。

自分よりも若いお客さまからは、新鮮な情報をいただいたり、ときには悩みを聞いたりと、お客さまとお話しするなかで、自分にとってプラスになるもの、得るものがすごくたくさんあるんです!
おしゃべりはアイデアやヒントの宝庫で、お話のなかからお客さまの好みや生活形態を分析し、好みに合ったデザインを形にしていく作業に、面白みややりがいを感じています。施術後のお客さまの表情で、そのネイルデザインの価値が決まると、わたしは思っています。お客さまから100%の笑顔がいただけたときは、心の中でガッツポーズをとっていますね。

マニキュアだけでネイルアートは楽しめる――伝えたくて始めたブログ

Q. ブログ「ネイルアートBOOK」を運営するようになったきっかけや、更新時に意識していることを教えてください

A. マニキュアだけでももっとネイルアートを楽しめるのに、「マニキュア=ワンカラー(1色)」と思っている人が多く、もったいないなと以前から感じていました。
とくに最近の100均ネイルは、品質がとてもよくなっています。100均ネイルでもジェル並みにネイルアートができることを、多くの人に知ってもらいたいと思い、ブログを始めたんです。

ジェルネイルは少し敷居が高いと思っている方もいらっしゃると思いますが、100均ネイルやマニキュアなら「すぐにとれるし、価格も安いし、失敗してもいいや」と気軽にチャレンジできますよね。そこからネイルの魅力を知ってもらえたらなと思っています。ネイル初心者の方でもすぐ試せるよう、難しい技法は使わず、どのページから見てもやり方がわかるように、画像や動画をたくさん用いて、とにかく「わかりやすい」ブログにするよう心がけています。

家族が寝静まってからが、集中して取り組める仕事時間

Q. 三児の母でもいらっしゃるryoさん。日々どのようなスケジュールで活動していますか?

A. ネイリストとしては週3~4日施術しています。残りの平日は、家事の合間にブログの更新をしたり、新しいネイルデザインやネイル技法を模索したりしていますね。
自宅中心の仕事は、家事育児との境目がありません。そのため以前は仕事に没頭してしまうと、つい子どもたちに「ちょっと待っててね」「あとでね」と言ってしまいがちでした。
ですが、自宅での仕事に慣れるにつれて、仕事と家事育児とをきっちり切り替えられるようになりました。現在は「今やっていることに集中する」ことを心がけています。

とはいえ、仕事の時間を確保するのはやはり大変です。我が家は基本的に毎日夕方からは子ども時間。
というのも、子どもたちが三者三様の習いごとをしていて、下校後はそれぞれの送迎をしつつ、合間に家事をしなければいけないから。家族が寝静まってからが、集中して仕事ができる時間の始まり。ですが、ネイルを始めると時間を忘れてしまって、気づくとソファで寝ていた……なんて状況がしょっちゅうあり、それが悩みの種です(笑)。

気持ちに余裕を持って家族と笑顔で接したいから、家事も効率化を図る

Q. お子さんがいると、生活の中心がお子さんになりますよね。それでも家庭と仕事の両立をうまくおこなっている、ryoさん独自の工夫ポイントがあれば教えてください

A. わたしは「手抜き」は大事なことだと思っています。たとえば仕事で遅くなったときに、無理して食卓にすべて手作りの料理を並べるのではなく、できあいのお惣菜に頼ってみるなど、ほんのちょっとしたことで、気持ちにゆとりが生まれます。
母親に余裕がないと、家全体の雰囲気が悪くなり、子どもからも笑顔が消えてしまうので、適度に力を抜いて、心にゆとりを持って暮らすよう意識しています。

効率化を考えるのも好きなので、時短にぴったりな家電も上手に活用しています。時短家電を使うことに後ろめたさを感じる方もいるようですが、わたしは時短家電で家事時間を減らせると「やった!」と思うタイプ。家事もときにはゲーム感覚で取り組むと楽しくなりますよ。

自宅サロンを充実させ、マニキュアでのネイルアートをメジャー化したい

Q. 今後の目標を教えてください

A. ネイリストとして技術力を高め、自宅サロンをより充実したものにしていきたいです。同時に、ブログを通じてポリッシュアート(マニキュアでのアート)を、よりメジャーなものにしたいです。
最終的には、ブログを「ポリッシュアートではこのブログ!」と言われるくらいに成長させたいなと思っています。

▽ ryoさん

1978年生まれ。ネイリスト。イタリアのインターナショナルスクール/立教大学卒業後、アパレル業界に勤務。出産後はネイリストとしてサロンに勤務するかたわら、自宅サロンをスタートさせる。ブログを通じて、マニキュアだけでできる「ネイルアートテクニック」も発信中。

▽ ブログ:100均でネイルアートBOOK
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2017.01.25

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記事を書いたのはこの人

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Written by 池田 園子(いけだ そのこ)

岡山県出身。中央大学法学部卒業後、楽天、リアルワールドを経てフリー編集者/ライターに。関心のあるテーマは女性の生き方や働き方、性、日本の家族制度など。結婚・離婚を一度経験。11月14日に『はたらく人の結婚しない生き方』を発売。 写真撮影ご協力:青山エリュシオンハウス 撮影者:福谷 真理子