わたしらしい起業のかたち Vol.8 木村えりなさん~8年の専業主婦期間を経て、パーソナルコーディネーターへ~

編集者/ライターの池田園子が、週末起業家や個人事業主、経営者など、さまざまなスタイルで起業している女性にインタビューする連載です。

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いつも着ていた服が、突然しっくりこなくなる。そんな経験をしたことがある方もいるのでは? 年齢やライフスタイルなど、自分の身に起こる変化によって、急に似合わなくなる服、似合うようになる服、コーディネートなどはあります。

では、なにを選ぶといいのか、自分ではいまいちわからない……。そんなファッション迷子になってしまった方の心強い味方が、パーソナルコーディネーター®。一人ひとりのファッションにまつわる悩みや困りごとを、コーディネートを提案することで解決する仕事です。

今回、2016年春からパーソナルコーディネーター®として活動し始めた、木村えりなさんにお話を伺いました。木村さんはCHANELで勤務した後、8年に及ぶ専業主婦生活を経て、再びキャリアを積み始めた方。木村さんの起業ストーリーを見てみましょう。


第一子出産を機にキャリアを一時中断

Q. パーソナルコーディネーター®になる前は、どんなライフスタイル、ワークスタイルですごしていましたか?

A. CHANELのファッションブティックで、ファッションアドバイザーとして働いていました。CHANEL入社時は名古屋のブティックに勤務していましたが、結婚を機に東京のブティックに転勤させてもらいました。それから長女を出産し、CHANELを退職。専業主婦生活を8年やっていました。海外出張の多い夫を支える期間でもあったんです。

パーソナルコーディネーター®は、お客さま一人ひとりに最適な提案をできる仕事

Q. CHANELでのお勤めから8年のときを経て、2016年春からパーソナルコーディネーター®に。この職種を選んだきっかけはなんでしたか?

A. 東京のCHANELブティックに勤務していた頃、勤め先のデパートで「パーソナルショッパー」という仕事があることを知りました。CHANELのファッションアドバイザーとして働いているともちろん、CHANELの商品でトータルコーディネートすることがルールです。

一方で、パーソナルショッパーは、デパート内の全ブランドから「一人のお客さまのためにトータルコーディネートできる」仕事。より多様なご提案ができるのか……と、興味がわいたのを覚えています。

CHANELを退職したくらいから、パーソナルコーディネーター®のような、お客さま一人ひとりにぴったりなスタイリングをご提案する仕事をしたいなぁと、漠然と思い始めていました。本格的に活動を始める前は、ファッション関係の仕事に就く夫から「興味があるならやってみたら!」と、背中を押してもらいましたね。

ファッションで自分を刷新できる……お手伝いできたときは最高に幸せ

Q. パーソナルコーディネーター®として活動していて、どんな瞬間に喜びややりがいを感じますか?

A. 「毎朝のスタイリングが楽しくなった」「固定概念にとらわれないで、いろいろなファッションを楽しみたい」「自分のことが好きになってきた」など、お客さまからとびきり嬉しいお言葉を直接いただけるとき、でしょうか。

私自身、「ファッションに自信がない」と思いながら服選びをしていた方が、「ファッションを通じて自分らしさを演出したい、と思うようになってほしい」「ファッションで自分を好きになってもらいたい」と願いながら活動しているので。

またショッピングに同行するさいは、必ずご試着いただくのですが、お洋服をまとったときのお客さまの弾けるような笑顔が大好きで、その場にいると私まで幸せな気持ちになるんです。

新しい自分に出会いたいと思ったとき、ファッションで自分を変えられることもあります。そのお手伝いができたとき、パーソナルコーディネーター®としてのやりがいを感じますね。リピーターのお客さまたちの、会う度に輝きが増している様子を見るのも幸せです。この仕事をやっていて本当によかった、と感じる瞬間ですね。

ていねいなヒヤリングで、お客さまにとって最適な提案をしたい

Q. 活動するなかで大変なこともあると思います。それらをどう乗り越えてきましたか?

A. 3~4名のお客さまを「グループショピング」という形で、ショッピングにご案内する仕事もしています。お一人ずつ、体型はもちろん、なりたいイメージも違います。短時間でお洋服選びをするので、普段以上に手際のよさが問われる現場だなと感じていますね。

なりたいイメージをストレートに投げてくださる方もいれば、なりたいイメージ探しをしている最中の方もいます。前者の方だと、こちらからもご提案しやすく、積極的におすすめするのですが、後者の方には私も遠慮してしまったことがあります。

反省点を生かし、決して遠慮することなく、しっかりヒヤリングをおこなって、お客さまの「なりたい」を明確にし、よりよいご提案をできるよう心がけています。

自宅でじっくり仕事に集中できるのは21~24時。短時間だけど濃くすごす

Q. 二児の母でもいらっしゃる木村さん。日々どのようなスケジュールで活動していますか?

A. 朝は子どものお弁当作りから始まります。夫が出張で不在のときは上の子を駅まで見届けたあと、下の子を幼稚園まで自転車で送り届けています。その後、仕事が入っている日は、そのまま電車で待ち合わせ場所へ向かいます。

家で事務作業をする日は、幼稚園のお迎え時間までパソコンと向き合います。延長保育を使わないと14時前にお迎えなので、その後は子どもたちの習いごとの送迎や宿題などに付き合います。

腰を下ろしてゆっくり自分の仕事に取り込めるのは21時から。21時以降はメールチェックやブログの下書き、ファッションコラムの下書き、ファッションの勉強など、24時頃まで集中してすごしていますね。

子どもたちと一緒に過ごす時間を大事にしたいから、仕事の効率化を図る

Q. お子さんがいると、生活の中心がお子さんになりますよね。それでも家庭と仕事の両立をうまくおこなっている、木村さん独自の工夫ポイントがあれば教えてください

A. 子どもはまだ8歳と5歳なので、彼らと過ごす時間を大切にしたいと考えています。そのため、子どもたちが帰宅するときには、必ず家にいるようにしています。どうしても家をあける日は義母にきてもらい、サポートしてもらっています。「夫のお母さんに上手に甘える」ことは、家庭と仕事を両立させる秘訣のひとつかもしれません。

コラムやブログ記事に関しては、書きたいことや伝えたいこと、どう伝えたいかなど、家事の合間や、子どもとすごしているさいに思いつくと、すぐにノートに書き込むのが習慣化しています。このノートのおかげで「アレなんだっけ?」とモヤモヤすることがなくなり、効率よく執筆できるようになりました。

ファッションの奥深さ、楽しみを知って、人生を輝かせる人が増えてほしい

Q. 今後の目標を教えてください

A. CHANELのブティックにお客さまをご案内してみたいです。たとえば、CHANELのシューズをご提案して、セレクトショップでそのシューズにぴったりなお洋服を見つけ、お客さまのなりたい雰囲気を実現できるトータルコーディネートをおこないたいです。

CHANELの世界観、ガブリエル・シャネルのファッションへの想いがとても好きなので、ひとりでも多くの方へ、その魅力をお伝えしていきたいです。併せて、プチプラファッションを組み合わせて作るスタイルなど、ファッションのいろいろな楽しみ方を紹介していきたいですね。

▽ 木村えりなさん

1978年生まれ。愛知県出身、東京在住。2児の母。
元CHANELファッションアドバイザー/パーソナルコーディネーター®。
「DRESS」にてファッションコラム「プチプラを賢くmixした大人女性向けコーデ術」を連載中。ストリートアカデミーのファッション講師として開講する「上品モテコーデ」講座は常に満席。起業家女性のスタイリングやおしゃれをもっと自由に楽しみたい女性の専属スタイリストとして活動中。CHANELで培った「大人エレガントカジュアル」なスタイリングと、主婦目線を活かした「お得に楽しめるアイテム」の選び方で注目を集める。

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2017.01.07

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Written by 池田 園子(いけだ そのこ)

岡山県出身。中央大学法学部卒業後、楽天、リアルワールドを経てフリー編集者/ライターに。関心のあるテーマは女性の生き方や働き方、性、日本の家族制度など。結婚・離婚を一度経験。11月14日に『はたらく人の結婚しない生き方』を発売。 写真撮影ご協力:青山エリュシオンハウス 撮影者:福谷 真理子