女子ライター、キャリアを考える。Vol.3「執筆テーマの広げ方」

こんにちは、編集者/ライターの池田園子です。ライターとして食べていくためのリアルについて語る本連載、第3回目では「執筆するテーマやジャンルの広げ方」についてお話しします。


ネタがなくなりそう!?

5年先、10年先もこのテーマを書き続けるのはしんどい――1年ほど恋愛記事を書いていて、ふと限界を感じたことがあります。一度は結婚するだろうし、ステディな相手ができると恋愛への興味は失われる。それだけではなく、書ける恋愛ネタじたいがじきに枯渇しそう。うーん……。恋愛記事を自分の中心テーマにすえるのには無理があると気づきました。
もちろん恋愛記事には人に取材するものもありますが、内省して書くものもあります。目を自分の内側に向けなければいけないタイプの記事です。見るものは自分の内面しかない。そうなるとネタが自然と限られてくるのは当然です。

目を自分の外に向ける

逆に、目を自分の外側に向けるタイプの記事を選べば、無限とは言わないまでも書けるテーマの幅は広くなる――私はそう気づきました。とはいえ、恋愛記事を完全にやめてしまうと収入が途絶えてしまうため、恋愛記事を書きながら、少しずつテーマを広げていく作戦に。
たとえば、連載第2回目で紹介した「面白系」の記事は、新たに書くようになったテーマのひとつ。面白い施設や人、サービスなどを取材する仕事で、もともと取材経験はあったので無理なくとり組める仕事でした。

未経験のこと×経験済のこと=すこしがんばればできる!

新しいテーマに挑戦するときは、基本的に「今まで蓄積してきたことがいきるかどうか」という視点で考えるのがおすすめです。私の場合、Googirlで書いてきた取材記事「イケメンWeb男子カタログ」の経験を生かし、面白系媒体で取材記事を書くようになりました。
面白系ネタは未経験。でも、取材の経験はある。「面白系ネタ×取材」という「未経験のこと×経験済」のことを組み合わせるだけですから、少し背伸びすればきちんとアウトプットできるはずです。

経験したことがつながる仕事をしよう

それからさらにテーマを広げていきました。たとえば、企業サイトによくある「代表の声」を書く仕事をしたことがあります。社長に1時間ほどインタビューしたものを整理し、社長の言葉として書くものです。これは「企業サイトに掲載されるかためコンテンツ×取材」。企業サイトに掲載される代表の声を書くのは未経験でしたが、取材経験をいかせました。
スポーツ系媒体で執筆したこともあります。自分が何らかのスポーツに挑戦し、体験記事として書くものです。これは「スポーツ体験×取材」。レクチャーしてくれるインストラクターに話をききますが、自分の体験を客観的、ときには主観的に見る必要もあり、ある意味で「自分を取材する」スタイル。今までの経験がつながっています。

「関連テーマ」に挑戦しよう

現在は、IT経営者インタビュー記事やIT/デジタルマーケティングジャンルでの取材記事を多めに書いています。なぜITやマーケティングをテーマにしているかというと、IT企業に勤めていたことがある自分と親和性のあるネタだから。
自分と縁のあるテーマ、今書いているテーマに「隣接」するようなテーマを見つけて、徐々に広げていくのが理想的です。たとえば、おもに恋愛記事を書いているなら、そこから派生して「婚活」「結婚」「離婚」「男女問題」「妊娠・出産」「子育て」と、関連テーマを洗い出します。あるテーマに関連するテーマは「道がつながっている・続いている」ともいえます。だからこそ手を出しやすいともいえます。

5年先、仕事はありますか

名乗れば今日からでもなれるのが「ライター」という職業。資格はいらないし、勉強せずに書けるテーマもあるからです。家で仕事できるのも大きな特徴。そのぶんライター志望者は増えていて、新たな書き手、面白い書き手は次から次へと登場しています。あまたいるライターの中で5年先、10年先も生き残り、指名される人であり続けられるか? 長く現役で書いていきたいなら、自分を更新していく必要があります。
時代は変化しているのに、5年前、10年前と変わらないものを書いていると、自分がとり残されてしまうはず。いつしか需要がなくなっていた……となるのはツラすぎる話。

得意テーマをいくつか持ってリスク分散を

もちろん、ひとつのテーマだけを書き続けて大成する人もいます。当然のごとく相当な才能のある方ですが、誰もが皆才能にあふれているわけではありません。
私は自分に書く才能はないと考えています。そのため得意なテーマを複数個作っておくよう、早めに行動してきました。あるテーマについてネタがなくなったり、書けなくなったりしたときに、リスクヘッジにもなります。ひとつのテーマだけにしがみつくのは、変化が多い現代で怖いことかもしれません。

まとめ

・ 自分の外の世界に目を向けるテーマで執筆する
・ 今までしてきた仕事を生かし、テーマを広げていく(ポイントは「未経験×経験済」の掛け合わせ)
・ 書けるテーマを複数持っておけばリスクヘッジになる

テーマを増やすと書く媒体が増えたり、原稿の単価が上がったりと、多くのメリットがあります。でも、テーマを増やすだけでは、この業界に残れないとも感じています。次回は「ライターとして指名されるために心がけること」についてお伝えします。

2016.02.02

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記事を書いたのはこの人

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Written by 池田 園子(いけだ そのこ)

岡山県出身。中央大学法学部卒業後、楽天、リアルワールドを経てフリー編集者/ライターに。関心のあるテーマは女性の生き方や働き方、性、日本の家族制度など。結婚・離婚を一度経験。11月14日に『はたらく人の結婚しない生き方』を発売。 写真撮影ご協力:青山エリュシオンハウス 撮影者:福谷 真理子