「大人のぬりえ」がスゴイ! その意外なセラピー効果とは?
筆者の住むオーストラリアでは書店に「大人のぬりえ」が大きくディスプレイされ、人気ですが、このブームはすでに日本にも伝わっているようです。子どものときよくやっていたぬりえ、でもなぜ大人の今になってハマる人が続出するのでしょう? じつは意外なセラピー効果があるというのです。
すでにプリントされた枠にひたすら色を塗りこんでいく、きわめて単調なこの作業には、どんな効果が潜んでいるのか……解明しましょう。
感情表現としての「ぬりえ」
ライフコーチのキャロル・オマールさんによれば、ぬりえは言葉ではうまく言いあらわせない気持ちや感情に“かたち”を与える行為になりうると言います。一定のリズムで手を動かすことで、コアな感情と結びつくことができ、自分でも意識していなかったレベルでの感情や気持ちをあらわすことができると言います。
子どものぬりえと違いおとなのぬりえはマス目も細かく集中力を要しますが、それが自分の精神と向き合う意味でも効果的に作用しているのでしょう。
ストレスや不安を緩和する効果もある
海外の研究では、ぬりえに集中することで不安感やストレスレベルを軽減する効果があることも示されています。アートセラピストのルーシー・マックローさんによれば、ぬりえでは、
・ どのようにぬっていくかという分析的な観点
・ どの色を選ぶかというクリエイティブな観点
という二つのことが必要となり、右脳と左脳の両方をうまく働かさなければなりません。これが精神活動をつかさどるへんとう体にもリラックス作用をもたらすため、ストレスを緩和することにもつながるのです。ぬりえをすることで、心にちょっとした休憩がもたらされ、精神的にも落ちつくのに役立ちます。
“マインドフルネス”で、もっと自分の心と向き合うことができる
忙しいうえに、膨大な情報に囲まれている私たちの生活。そんなふうだとなかなか自分の気持ちに注意を払うことができません。そこで海外では“マインドフルネス”(自分の精神状態と向き合い、気遣うこと)というコンセプトが注目されています。
ぬりえ=瞑想?
たとえば瞑想(メディテーション)などは、このマインドフルネスを高めるための代表的なトレーニングとされていますが、ぬりえにも同じような効果があると言います。慌ただしい日常生活から離れ机に向かってぬりえにとり組んでいくと、心のざわつきが気にならなくなり、リラックスできるのが実感できるでしょう。背筋を伸ばして正しい姿勢でイスに座り、深呼吸しながら目の前の作業にとり組んでいきます。そうなるとあなたは、過去や将来のことにクヨクヨ悩んだり、不安がったりすることなく、ただ今この瞬間だけに意識が集中するようになってくるでしょう。
これは瞑想しているのに非常に近い状態と言えるのです。ぬりえをしながら、心に沸き起こってくるさまざまな感情を冷静に見つめたり、自分の思考パターンを観察したり、一歩さがった視線で客観視できるのが、こうしたアクティビティのいいところです。
ぬりえという一見単純な作業ですが、じつはかなり奥深い効果があるようです。この時期はとくに寒くて、外に出るのもおっくうになりがち。
それならいっそ、おうちで“自分ヒーリング時間”としてぬりえにとり組んでみてはいかがでしょう? 自分のアーティスティックな才能を発見したり、心が晴れやかになったり、意外な効能がありそうですよ!