ワタシノシゴト。第1回 相川裕佳さん

「いつも、自分がわくわくするほうを選んで、何かに情熱を持って取り組む毎日こそ楽しい」

会社員、起業家、フリーランス……さまざまな働き方を選んでいる女子たちに、仕事を通じてライフスタイルを掘り下げる新企画がスタート。「こんな働き方もあるんだ」と参考にできる等身大の女子たちが登場します。初回は株式会社Fabulous 代表取締役 相川裕佳さんにお話を伺いました。


ブライダルの映像編集が楽しくて、就職活動をやめた

すこし昔の話になりますが、どんな学生時代を過ごしていましたか。

相川:高校卒業後は専門学校でブライダルの勉強をしていました。もともと友人や家族などにサプライズを仕掛けることが大好きで、この業界に進もうと決めたんです。学校に通いながら、ブライダルの映像編集のアルバイトもしていて、茨城にある会社まで片道1時間半かけて通っていたのを覚えています。撮影は都内であるんですけど、オフィスがびっくりするくらい遠かったですね(笑)。

映像のお仕事にも興味があったんですか。

相川:専門卒業後は普通に就職しようと考えていたので、実はすごく興味があったというわけでもないんです。就職活動中に友人の結婚式が立て続けにあって、彼女たちを喜ばせたいと思い、式で流すためのメッセージビデオを数本撮影・編集したことがきっかけでした。それが楽しくなったので、卒業したらフリーランスで映像制作をやっていきたいと思い、選考が進んでいた面接をすべて辞退して就職活動をやめちゃいました。

思いきった決断ですね。実際にフリーランスとしてやっていくために、どんな準備をしましたか。

相川:フリーランスになるにはどうしたらいいか考えて、いろいろな映像制作会社に「お仕事をいただきたいんですけど」と電話しました。実務経験がないだけでなく、プロが使うソフトも使えない状態だったのに、いま思えば何言ってるのという感じなんですが(笑)。でも、とある映像制作会社の社長が面接してくださったんです。「カメラ担げるの? 女の子は大変だよ」と言われましたが、「できます! やります!」と答えたところ、温かく迎えてくれて。「最初はバイトでソフトの使い方を勉強して、できるようになったら独り立ちすればいいよ」と言ってくださったんです。在学中はそこでバイトをして、卒業後フリーランスになりました。

フリーランスになってからは、どんな働き方をしていましたか。

相川:いろんな結婚式に出ては映像の編集をしていました。バイトをしていた会社からお仕事をいただくこともあり、かなり忙しい日々を過ごしていたと思います。でも、2年ほど経ったある日、耳の病気にかかってしまったんです。

映像を扱う身にはキツいですね…。

相川:映像編集の仕事を続けるのは厳しいなと判断して、転職活動を始めることにしました。一度くらいは会社という組織に所属してみたかったので。いくつかITベンチャー企業を受けていたところ、ある会社の二次面接で社長に「ホントに(あなたが希望している)総務所属でいいの?」って聞かれたんです。

総務ではなくて別の部署のほうが合っていると思われたんでしょうか。

相川:おそらく。すると、別の部署の部長が登場して「新規メディアを立ち上げているから一緒にやらないか」と誘ってくれたんです。当時、サプライズの会社を立ち上げた学生起業家さんがいたのですが、その人の存在が自分に大きな影響を与えていて、わたしもサプライズに関するメディアを立ち上げたいなとひそかに思っていたんです。この新規メディアの立ち上げで、メディアの企画運営を一通り経験できるかもと思い、その場で「やります!」と即答しました。ちょうど興味のある分野だったこともあって、それを仕事にできるなんて最高な環境だなぁと素直に嬉しかったんです。

居心地のよい会社にい続けても成長できない――だから退職した

それはよいスタートでしたね。

相川:でも、しばらくしてメディアの営業を担当することになりました。メディアを運営するためには営業も必要だよね、という会社の判断でした。さらに、その会社はSEOの事業も展開していたのですが「メディアの営業ではなくSEOの営業を担当してほしい」と言われたんです…。SEOは入社を決めたときに提示された業務内容とはまったく違う内容でしたし、何より営業をしたくないという気持ちもありました。やりたくないなというマイナスな気持ちで取り組んでも、絶対によい結果は生まないというのが私の信条なんです。そこで上司に「辞めます」と宣言しました。

上司の方もまさかの展開に驚いたのでは(笑)。

相川:「週末にゆっくり考えて」と諌められましたが、翌日全体会議があって、営業チームを作ることが告げられたんです。なぜかそのなかに辞める宣言をした私も含まれていて(笑)。えっ……と思いましたね。傍から見ると一番頼りなさそうなチームの一員になっていました(笑)。でも、チームメンバーのやる気がとにかくスゴかったんです。彼女たちの影響を受けて「楽しそう」と前向きな気持ちになり、上司にはその場で「やっぱり辞めません」と伝えました。一旦はメンバーと一緒に頑張ろうと決めて仕事を進めていたら、チームが営業成績で1位を取ったんです。

それはスゴい。チームの熱量が大きかったんでしょうね。

相川:アツいチームでしたからね。でも、その後本当に会社を辞めることにしました。楽しかったですし、やり甲斐もありましたし、成長できているなとも感じていたんですけど。でも、ここに居続けていいのかな、本当はメディアを運営したかったはずなのになという、心の奥底に秘めていた思いが日増しに強くなっていって。だから辞めたくないなと思いながらも、思いきって辞めたんです。

それからはどんな仕事をしていましたか。

相川:1年ほど派遣で、アパレルブランドの広報アシスタント、ソーシャルゲームのアシスタントなどをしていました。それなりにやり甲斐はありましたが、あくまでもメディア運営を自分の仕事にするための準備期間だと思って続けていました。でも、なかなか行動を起こせないことに悶々としていて。このままだとヤバいな、という危機感はありました。

「やりたいこと」は行動に起こせば掴み取れる

たしか、会社を設立する前はフリーランスでしたよね。

相川:派遣を辞めてから、今度はフリーランスでPRの仕事を請け負うようになったんです。Webサービス系のPR業務を中心に請けていました。アルバイトで募集している案件でも、「アルバイトではなく業務委託をしてくれたら~ができます。御社にとってもメリットだと思います」みたいに面接でプレゼンして(笑)、自分が希望する業務形態にしてもらったこともあります。クライアントと自分双方にとって、メリットのある働き方ができないかなと思っていたんです。

そのおよそ1年後に起業されましたよね。何がきっかけでしたか。

相川:以前勤めていた会社の上司といまも親しくさせていただいていますが、この先やりたいことについて共有したんです。すると背中を押してくれて。いままで、やりたいことがあれば行動を起こして掴み取れてきたわけで、残るはメディア運営だけ、といった状況でした。「やらなきゃ」と気持ちが高まるのを感じて、思いきって飛び出すことにしたんです。

現在はどんなお仕事をしていますか。

相川:女性向け商品・サービスのプロモーション事業を中心に行っています。2013年12月には弊社のコーポレートサイト内に、「自分らしさのアップデート」をコンセプトにした「Fabulous女子」 というメディアを立ち上げました。さまざまな経験や思いを経て、以前思い描いていたものからは若干形が変わっているものの、ようやく夢の第一歩が実現できた、という感じです。

「自分らしさのアップデート」ってステキなコンセプトですね。

相川:自分らしさって「こう!」と決めつけるものではなくて、毎日の選択の積み重ねによって創られていくものだと思っています。Fabulous女子のコンテンツで、その毎日の選択を、すこしでも明るく前向きなものにできたらと思うんです。わたしの人生のモットーとして、幸せな人生を送るためには、情熱と信頼が重要だと思っています。いつも自分がワクワクするほうを選んで、何かに情熱を持って取り組む毎日こそ楽しいもの。そして、人を信頼して、それ以上に自分を信じることが大切なのかなぁと。だから、Fabulous女子の読者の方にも、毎日自分が「楽しい!」「やってみたい!」「こうなりたい!」「頑張りたい!」とポジティブな気持ちになれる選択をして、幸せになってほしいんです。読むと「こういう考え方もあるんだ!」とヒントをもらえたり、ワクワクしてなにかアクションを起こしたくなる、女性を毎日を明るくするコンテンツを配信していきたいと思っています。

最後に今後の目標について教えてください

相川:幼い頃から周囲の人を喜ばせたり、驚かせたりすることが大好きでした。これはどの時期の自分にも共通していて、もちろんいまもそうですし、これからも変わらないと思います。今後はPR会社として、より多くの方々を巻き込んで、みんなを喜ばせたり、心が温まったりするような仕掛けを作り続けていきたいですね。

相川裕佳さんのおすすめ本

『ゼロ』/堀江貴文
どんな仕事にだってやり甲斐は見つけられるーーと伝えてくれる1冊です。何かしたくても何をすればいいのかわからない、と言った人にもおすすめです。

相川裕佳
株式会社Fabulous 代表取締役。1986年、東京生まれ。ブライダル、ITベンチャー、派遣社員、フリーランスを経て、2012年12月に起業。女性向け商品・サービスのプロモーション事業、女性のライフスタイルを彩るメディア事業を行う。

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記事を書いたのはこの人

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Written by 池田 園子(いけだ そのこ)

岡山県出身。中央大学法学部卒業後、楽天、リアルワールドを経てフリー編集者/ライターに。関心のあるテーマは女性の生き方や働き方、性、日本の家族制度など。結婚・離婚を一度経験。11月14日に『はたらく人の結婚しない生き方』を発売。 写真撮影ご協力:青山エリュシオンハウス 撮影者:福谷 真理子