7_20まで公開中の作品『LIGHT UP NIPPON 日本を照らした奇跡の花火』で3.11を再考する

東日本大震災からもうすぐ1年半。時間の経つのは早いものですね。当時日本中が元気を失くし、うつうつとした日々がゆっくりと流れていました。あのとき誰もが過去・現在・未来に思いを馳せ、今何をするか、今後どうしていけばいいのか、ただただ考えあぐねていたのではないでしょうか。「分からない」というのが本音だったかも知れません。


そんな中でも「なんとかしたい」という想いで活動していた人はいました。そんな人の一人が、昨年8月に東北地方での花火大会を実現させた、会社員の高田佳岳さん。「日本で一番大変な東北で笑顔が生まれれば、日本中に連鎖する。日本を明るくしたいという想いを込めて、LIGHT UP NIPPON と名付け、ただ走り出しました」と語っています。

高田さんやその周りの人たちが行った、東北太平洋沿岸10ヶ所で花火を打ち上げるプロジェクト“LIGHT UP NIPPON“がドキュメンタリー映画となり、7月7日(土)から公開を開始しました。作品タイトルは『LIGHT UP NIPPON 日本を照らした奇跡の花火』で、プロジェクト発足から実現までの軌跡、現地で強く生きる人々の姿にカメラが密着。

撮影は高田さんが被災地入りした初日から、花火大会当日までの900時間に渡って行われました。膨大な映像素材から作られた本作では、坂本龍一さんとコトリンゴが音楽を担当し、黒木瞳さんがナレーターを務めるなど、多くの人々が追悼と復興の意を込めて関わっていることが分かります。作品の収益は昨年に引き続き、今年も8月11日に開催される花火大会の運営費に充てられるのだとか。

私も鑑賞してきました。立ち上がって動き出さないと何も始まらないーー高田さんの奮闘っぷりを見ていると、改めてそう感じるきっかけとなりました。何度断られても、衝突しても、アツい気持ちがあれば目標は叶うということも、この作品を通して見えてきたことでもあります。震災に関して「起こったことにはそれなりに意味があるんだ」と受け止めている現地の人たちのナマの言葉も、胸にすこんと落ちてきました。

ドキュメンタリー作品の良さは、リアル感・ライブ感をずっしりと体感できることでしょう。あまりに生々しいと思い、衝撃を受けることがあったとしても、これは観ておくべきもの。目に焼き付けておくべきことでもあります。出来事を風化させないために、忘れないために、心に残しておくために、きちんと見ておきたい現実です。

時が経つにつれ、どんなことでも薄くなっていくのはあたりまえのこと。だからこそ、いつまでも残しておくために振り返りたい。私はそう思います。そっと過去を見つめ直す時間も必要です。3.11を再考する機会を作ってみてはいかがでしょうか。

LIGHT UP NIPPON 日本を照らした奇跡の花火
7月7日(土)~7月20日(金)、新宿バルト他全国ロードショー
製作年:2012年
製作国:日本
配給:ティ・ジョイ
監督:柿本ケンサク
プロデューサー:湯川篤毅
撮影:AKKI
ナレーション:黒木瞳
テーマ曲:坂本龍一
※4種類の募金付きオンライン上映も行い、1200円の上映料金で24時間何度でも視聴が可能です。PC、スマートフォン、タブレット端末での視聴ができます。

ライター:池田園子

2012.07.12

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記事を書いたのはこの人

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Written by 池田 園子(いけだ そのこ)

岡山県出身。中央大学法学部卒業後、楽天、リアルワールドを経てフリー編集者/ライターに。関心のあるテーマは女性の生き方や働き方、性、日本の家族制度など。結婚・離婚を一度経験。11月14日に『はたらく人の結婚しない生き方』を発売。 写真撮影ご協力:青山エリュシオンハウス 撮影者:福谷 真理子